クロネコヤマト行政処分 過失と故意の違いについて

1/23 国土交通省はヤマトホームコンビニエンス株式会社に対して、行政処分および事業改善命令を行いました。この件については当ブログでも2回の連載で取り上げました。調査委員会が調査結果をまとめたのが8月の末でしたから、処分までに4か月を要しています。この間、国交省は何をしてたんでしょ。

引越サービスに関して不適切な請求

国交省の報道発表資料を見ると、この事件については「引越サービスに関して不適切な請求があったことに対して・・・」と、不適切という表現がされています。不適切検査や役所の不適切調査、ここ最近の日本は不適切だらけなわけです。

kuniがコンプラの仕事をしていた証券界は、営業員に対する行為規制が最も厳しい業界の一つで、やってはならない行為が法令や規則に山ほど定められています。また、何か事件が発生して顧客に迷惑をかけた際に、顧客の損失を埋め合わせるための手続きも複雑になっています。

大昔、証券会社の損失補てんが社会問題になった時代がありました。顧客にリスクを取って投資してもらう世界で、損失を補てんしていたんじゃ自己責任が問えませんし、誰もリスクなんか取りません。この時の経験により損失補てんが法律で禁止されました。そのため、何か事故が起きた場合も、その行為が損失補てんではなく、「証券会社に責任があるから顧客への適切な対応なんだ」ということをしっかり証明する必要があるんです。

そこで証券界では損失補てんが可能な、営業員や証券会社の行為を金商法の中で明確に定めています。不適切行為、法令違反、システム障害の3行為です。これら3類型のどれかに該当しているとき、初めて合法的に顧客の損失を埋め合わせることが可能になっています。

証券界における不適切行為(未確認売買、誤認勧誘、事務処理ミス)

証券界にもこのように不適切行為という行為が定められています。これには「未確認売買」、「誤認勧誘」、「事務処理ミス」の3種類があり、それぞれ「顧客の注文内容をしっかり確認しないまま取引を成立させた」、「顧客に事実を誤って認識させるような勧誘を行い、取引を成立させた」、「過失により事務処理を誤った」というもので、いずれも故意ではないが結果的に顧客に損失を与えた取引を指しています。

一方で、営業員または証券会社が意図して行った取引は不適切〇〇などとは言いません。法令に定められた「禁止行為」または「法令違反」です。これ以上の詳細については省略しますが、このように「不適切」という言葉と「法令違反」は明確に区別され、営業員等への処罰も全く違ってくるわけです。

過失と故意の違い 不適切の濫用

前置きが長くなりましたが、過失と故意について、もう少し意識した取り扱いが必要ではないでしょうか。「伝票を作成するときに間違えてしまって顧客から引越代金を多くもらってしまったこと」と、「このお客さんは気付かないだろうから多めに請求しようと意図して過大に貰ってしまうこと」を一緒にしてしまい、不適切な請求と呼ぶのは止めませんかということです。最近非常に気になるんですね。

不適切会計なんてのも最近よく聞くようになりました。シャープや東芝辺りからだったんじゃないかと思います。以前はしっかり粉飾決算と言い切ってました。新聞やテレビにとっては上得意の広告主だから、ソフトに見せたいのかもしれませんが、、、これもいただけません。「不適切」の濫用、止めましょう。

廃プラスチック分解 水素を活かす 昭和電工

1/20 日本経済新聞に「水素を生かす(下) 廃プラ分解、ホテルの電力に」というコラムがありました。昭和電工の川崎事業所では、年間6万トンもの使用済みプラスチックを高温で分解して水素を製造しているそうです。同市の臨海部に建設されたホテルへパイプラインで供給する実験も2018年から始まったとのこと。

2年間ほどで株価は6倍に

昭和電工と言えば、昨年まで大きく株価を上げた銘柄として、証券の世界では話題になった企業です。2016年央の安値1000円辺りから、昨年10月の高値6,470円まで上昇し、現在は3,500円程度。上げも凄かったけど、下げ方もまた強烈です。

電気炉向けに黒鉛電極の販売が好調でしたし、黒鉛電極自体の値上げが浸透したことから大幅な増益基調となってました。19年12月期も大幅増益予想となっています。既に締めた直近12月期は来月辺りに発表されるんでしょうか。第4四半期が米中貿易戦争の影響をどれくらい受けるのかが気になる銘柄です。

廃プラスチックに新たな生命を吹き込め

今回、日経に取り上げられた廃プラスティックから水素を作るという話題。昭和電工のHPで調べてみました。すると特設の新卒採用サイトのプロジェクトストーリーというコーナーで、このKPRプロジェクト(廃プラスチックに新たな生命を吹き込め)が成功するまでのお話が掲載されています。

もともと学生向けの情報提供ですので非常に分かりやすいです。また、他にも2つのプロジェクトが紹介されていて、昭和電工の魅力を上手く表現しています。時間があったら是非読んでみてください。kuniお勧めです。

決算短信を読んでみました

ついでに2018年度第3四半期の決算短信も読んでみました。第3四半期までは米中貿易戦争が本格化する前ですので、引き続き好調な決算となっています。非財務情報から、この会社の魅力、いくつかか書いておきます。

「ESG投資のための3指数に2年連続採用」。世界的なインデックスプロバイダーであるFTSE Russell社(注)のESG投資指数「FTSE Blossom Japan Index」および同MSCI社の「MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数」「MSCI日本株女性活躍指数」の構成銘柄に、2年連続で採用されたようです。

また、社会的責任投資ファンド「モーニングスター社会的責任投資株価指数」(モーニングスター社運営)に5年連続で、また「SNAMサステナビリティ・インデックス」(損保ジャパン日本興亜アセットマネジメント株式会社運用)にも7年連続で選定されています。

さらに、株式会社シナモンと、AIを活用した技術文書活用システムを共同で開発することを決定したようで、この共同開発は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「AIシステム共同開発支援事業」の助成事業に採択されています。

他にも、「パワー半導体SiCエピウェハー高品質グレードの3次増強を決定」、なんてのもありました。次世代の新技術てんこ盛りみたいです。かなり、伝統ある会社ですが、なかなか魅力的な事業に挑戦してますよね。今後も少し追い掛けてみたいと思います。

野村證券元社員 顧客の現金詐取事件(その2)

最初の事件、2017年5月の豊橋支店での詐欺および窃盗に関して公表された「当社元社員の逮捕について」を読むと、<再発防止に向けた取り組み>が添付されています。同業他社の皆さんも参考になると思われますので、全文引用します。

<再発防止に向けた取り組み>
1.ATM出金に関するモニタリングの強化
2.野村カードの不正利用防止措置の強化
  ① 口座開設時の原則不発行化
  ② 長期未使用カードによる出金に関する制限措置の導入
3.管理職による社員行動の確認態勢の強化
4.長期在籍社員に関する管理・牽制の強化
  ① 連続休暇取得時等におけるお客様確認の実施
  ② コンプライアンス研修への緊急招集による牽制態勢の強化
5.お客様への注意喚起や取引状況の確認機会の確保
  ① 注意喚起文書のホームページ掲載やお客様への送付
  ② 電子書面を長期未確認のお客様に対する報告書等の郵送
6.法令遵守意識の醸成を図るための研修のより一層の強化
(引用以上)

再発防止策 少々解説

1のモニタリングは、それまで使用してなかったのに、急にカードがATMで使用されたとか、それまでの実績との比較でかなり大きな金額が引き出されたといった、異常値に着目してモニタリングを行うことを指していると思われます。

2-①は、高齢者のようにカードを利用する意思がそもそもない顧客には、後に営業員が悪用しかねないカードを発行しないという考え方。2-②は、何年間か使用されなかったカードは、一定の手続きを取らないと再度使用出来ないようにしてしまうということのようです。

4の長期在籍社員というのは、転勤することなく一定期間以上同一顧客の担当者を継続している営業員のことで、一定期間は5年と定義する例が多いように思います。4-①は連続休暇を取得させ、休暇中に顧客確認をすること。4-②は任意の休暇期間ではなく、強制的に会社が時期を決めて職場離脱させ、その間に顧客確認しようとするものですね。

5-②は取引報告書など顧客が郵送ではなくWebで確認するという契約をしている場合で、にもかかわらずWebで確認したログがない顧客に、野村の判断で取引報告書等を郵送してみるというもの。これはやや苦情も覚悟した対応だと思われます。

3件の詐取事件

ということで、ここまで見てきて3件の事件の全体像が見えてきました。最初の豊橋支店の事件が、顧客からの問い合わせで発覚しているのに対し、後から公表された北九州支店と横浜支店の事件は、それぞれ2017年7月と9月に、野村証券自身によるモニタリングによって事態を把握しています。最初の事件を受けて<再発防止に向けた取り組み>を公表した直後に、その取り組みにより発見したということですね。

当局に届け出て、世間に対しても公表した改善策がしっかり機能した好事例ということも出来そうです。内部管理態勢の強化とその実効性の向上は実を結びつつあるということでしょうが、ほぼ同じ時期に3人の社員がこうした事件を起こしてしまった。その事実は非常に重いです。真因については解明できたんでしょうか。ここからがガバナンスのキモです。

野村證券元社員 顧客の現金詐取事件

1/16 日本経済新聞記事 「顧客の口座から現金約620万円を引き出したとして、神奈川県警保土ヶ谷署は15日、野村證券横浜支店の元社員、嶋直美容疑者(46)を窃盗と詐欺の疑いで逮捕した。」

野村證券によると、嶋容疑者は2012年9月~2017年9月までの間に、顧客6人の口座から計約5,300万円を引き出し着服したとなっていて、2018年2月に懲戒解雇されています。

最近、野村證券がおかしい

最近、業界トップの「野村証券がおかしい」という話をよく聞くようになりました。先日の決算発表でも、似たようなことを言われていたような気がします。多少不調な部門があったがそれを国内リテール部門がカバーできなくなっているといった感じでしたか。要するに最強だったリテール営業の収益力が落ちているとか、優秀な営業員がどんどん流出しているみたいな話ですね。

ただ、これは営業スタイルを変えていこうとしているわけだから、当然そうなるんじゃないかと思います。「投資信託は3年以上保有していないと売却禁止」。という投信の長期保有を本気で徹底したり、預かり資産をラップに大量にシフトさせたりという、顧客本位の業務運営に本気で取り組んでいる影響でしょう。当然回転は効かず、預かり資産収益率は低下します。まぁ、kuniとしてはそんな程度に思ってました。

3年連続で顧客資金詐取事件が発生

しかし、顧客のお金に手を付けるという、この手の事件はいけません。本当に何かおかしくなってきているのかもしれません。2017年から今回の件まで、3年間で3人が詐欺および窃盗の容疑で逮捕されています。

2017年5月 豊橋支店 7顧客 2億7000万円 野村カードを詐取・ATMから
2018年10月 北九州支店 7顧客 4,700万円 買付代金を入金せず着服
2019年1月 横浜支店 6顧客 5,300万円 野村カードを詐取・ATMから

北九州支店の事件は顧客から預かったお金を口座に入金することなく、着服しているためでしょうか、「詐欺および窃盗」ではなく、「業務上横領」の容疑となっています。

証券会社ではこうした顧客のお金に手を付ける事件が何年かに一度、くらいの頻度で発生しています。その頻度でさえ酷い話であり、会社の信用は地に落ちるわけですが、毎年発生しているというのは、野村證券にどれほど多くの営業員がいたとしても、言い訳できません。会社の中でガバナンス上の問題のような、、、何かが始まっているのかもしれません。

ちなみに、「当社元社員の逮捕について」という野村のプレスリリースで見る限り、豊橋支店の事件と今回の横浜支店の事件、手口は全く一緒です。行為が行われた期間も、3件とも5,6年間とほぼ一致しています。

三井住友銀行 ファイアーウォール規制違反?(その3)

銀行系証券の切り札

大手独立系証券の野村、大和。これを追いかける日興、三菱、みずほ。追い掛ける3社はいずれも銀行系です。彼らが大手2社を超えていくために必須のアイテムが銀行連携だったはず。その切り札になる連携の最重要法規制であるファイアーウォール規制を、なぜこんなふうにド素人なやり口で犯してしまったのか。ここがとにかく分かりません。

みずほ、三菱に追い上げられる中、旧大手3社の一角だった日興としては、何が何でも野村への挑戦権は渡したくなかったのでしょう。銀行から降りてきた新社長が暴走した。そういうことなんでしょうかね。過去にあった日興証券のインサイダー事件も銀行から降りれきた執行役員によるものでしたからね。まぁ、とにかく銀行から来た証券マンはタチが悪いです。

銀行から証券に転じてきた人たちは、基本的に証券業をなめてるんですね。日本の金融を支えてきたという自負は良いんだけど、銀行と証券は全く別のモノ。アマチュアでしかないのに、証券を仕切れるぐらいに思っているみたいです。だから皆こういう失敗をしてしまいます。

顧客の損益という要素

前回の記事で、三井住友銀行が過去に犯した優越的地位の濫用と今回の違いを2つ指摘しました。じつはもう一つありそうなんです。三井住友銀行が犯した行為としての違いではなく、その行為が行われた環境の違いです。

今回の行為は2016年以降です。この辺りから、米国の堅調な相場に牽引され、日本の株式市場は大きく水準を切り上げてきました。今回三井住友がSMBC日興に顧客を不正に紹介し、買わせた商品がどういう商品だったのかはまだ分かりません。選択の記事を読む限り、一般的な株式の取引のようです。もしそうであれば、顧客はそれほど損してないはずです。というかむしろ回転売買とかしてなければ儲かってそうなマーケット環境でした。

彼らのこの頃の儲け頭の商品であった仕組債でも、エクイティ系の仕組債であれば損はしてないと思われます。前回社会問題になった際は、顧客が大きく損失を出しました。今回は顧客の損益という意味では、金融庁の判断に与えるインパクトはそれほど大きくなさそうなんですね。

もちろん、損してないからいいという問題ではないんですが、大損した顧客が多いと政治家やマスメディアが金融庁に圧力をかけてきます。その力は相応に影響力ありまして、金融庁も無視できないみたいです。

さぁて、金融庁はどう動きますかね。仲があまり良くなさそうな公正取引委員会との間での各種調整もあるでしょう。この後の展開、どうなっていくのか。金融庁の最終判断を待ちましょう。