野村證券元社員 顧客の現金詐取事件(その2)

金融、証券

最初の事件、2017年5月の豊橋支店での詐欺および窃盗に関して公表された「当社元社員の逮捕について」を読むと、<再発防止に向けた取り組み>が添付されています。同業他社の皆さんも参考になると思われますので、全文引用します。

<再発防止に向けた取り組み>
1.ATM出金に関するモニタリングの強化
2.野村カードの不正利用防止措置の強化
  ① 口座開設時の原則不発行化
  ② 長期未使用カードによる出金に関する制限措置の導入
3.管理職による社員行動の確認態勢の強化
4.長期在籍社員に関する管理・牽制の強化
  ① 連続休暇取得時等におけるお客様確認の実施
  ② コンプライアンス研修への緊急招集による牽制態勢の強化
5.お客様への注意喚起や取引状況の確認機会の確保
  ① 注意喚起文書のホームページ掲載やお客様への送付
  ② 電子書面を長期未確認のお客様に対する報告書等の郵送
6.法令遵守意識の醸成を図るための研修のより一層の強化
(引用以上)

再発防止策 少々解説

1のモニタリングは、それまで使用してなかったのに、急にカードがATMで使用されたとか、それまでの実績との比較でかなり大きな金額が引き出されたといった、異常値に着目してモニタリングを行うことを指していると思われます。

2-①は、高齢者のようにカードを利用する意思がそもそもない顧客には、後に営業員が悪用しかねないカードを発行しないという考え方。2-②は、何年間か使用されなかったカードは、一定の手続きを取らないと再度使用出来ないようにしてしまうということのようです。

4の長期在籍社員というのは、転勤することなく一定期間以上同一顧客の担当者を継続している営業員のことで、一定期間は5年と定義する例が多いように思います。4-①は連続休暇を取得させ、休暇中に顧客確認をすること。4-②は任意の休暇期間ではなく、強制的に会社が時期を決めて職場離脱させ、その間に顧客確認しようとするものですね。

5-②は取引報告書など顧客が郵送ではなくWebで確認するという契約をしている場合で、にもかかわらずWebで確認したログがない顧客に、野村の判断で取引報告書等を郵送してみるというもの。これはやや苦情も覚悟した対応だと思われます。

3件の詐取事件

ということで、ここまで見てきて3件の事件の全体像が見えてきました。最初の豊橋支店の事件が、顧客からの問い合わせで発覚しているのに対し、後から公表された北九州支店と横浜支店の事件は、それぞれ2017年7月と9月に、野村証券自身によるモニタリングによって事態を把握しています。最初の事件を受けて<再発防止に向けた取り組み>を公表した直後に、その取り組みにより発見したということですね。

当局に届け出て、世間に対しても公表した改善策がしっかり機能した好事例ということも出来そうです。内部管理態勢の強化とその実効性の向上は実を結びつつあるということでしょうが、ほぼ同じ時期に3人の社員がこうした事件を起こしてしまった。その事実は非常に重いです。真因については解明できたんでしょうか。ここからがガバナンスのキモです。

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