不祥事対応での第三者委員会報告書と秘匿特権

皆さんは猫レンジのお話、ご存知でしょうか。米国でおばあさんが濡れた飼い猫を乾かそうと、電子レンジに入れてチンしてしまった。当然猫は死んでしまうんですが、おばあさんはレンジの取扱説明書にそのことが書かれていなかったとして、メーカーを訴え、勝訴したという都市伝説です。今では、それくらい米国が訴訟社会であるというたとえ話ですが、昔は本当にあった話のように伝えられてました。

2/11 日本経済新聞の記事「公表リスク悩む企業 不祥事対応での第三者委員会報告書」は、まさに訴訟社会である欧米と日本の違いを感じさせる記事です。

秘匿特権というのは、弁護士と依頼人のやり取りについては、裁判の証拠から外すことができるという権利で、日本にはない権利だそうです。米国における訴訟を準備せざるを得なくなっていた神戸製鋼は、秘匿特権を放棄したと見られかねないため、第三者委員会報告書の公表をあえてしなかったということのようです。

秘匿特権を放棄したとみなされた場合、当局調査や集団訴訟に対して、証拠をすべて開示せざるを得なくなるということですね。

日本の特殊性

一方で日本では、弁護士等で構成された中立の立場の第三者委員会が徹底的に調査し、結果を隠すことなく正直に公表する企業の姿勢を評価するお国柄。訴訟等で不利になる材料を提供することになるかもしれませんが、世論や社会を敵に回すよりは良いという判断があると思われます。

米国ではしばしば法外な(日本人から見て)賠償請求が認められるのを見聞きします。当局から受ける罰金なんかもそうですよね。日本では考えられない高い罰金を科せられ、その金額から、この会社は信用を無くしてもう駄目なんじゃないか、と思われる会社が結構その後も普通に存続します。

日本における賠償金(少額)と社会における信用の遺失(ダメージ大)=米国における賠償金(膨大)と社会における信用の遺失(小)、という関係が成り立ってるのかもしれませんね。日本では訴訟で負けてお金を払ったら決着とはなりませんが、米国では多額の金を払うので、それで決着してしまう文化があるのかもしれません。

第三者委員会の公正性と客観性

米国における訴訟との関係で、第三者委員会の調査結果を公表するかどうかという論点があることは理解しましたが、これも極端に突き詰めてしまうと、昔のオリンパスみたいに隠蔽に走ってしまうんじゃないかと心配になります。訴訟を控えてどこまで客観的な情報に蓋をするのか、そういう意味では同根ですよね。

米国等での訴訟を意識したとは到底思えない厚生労働省。第三者委員会の面談に幹部社員を同席させていたとか、という信じられないことが起きています。「第三者委員会の調査結果報告書を弁護士名で公表するかどうか」という話と、「第三者委員会の公正性と客観性を守ること」は別の話ですからね。

クロネコヤマト行政処分 過失と故意の違いについて

1/23 国土交通省はヤマトホームコンビニエンス株式会社に対して、行政処分および事業改善命令を行いました。この件については当ブログでも2回の連載で取り上げました。調査委員会が調査結果をまとめたのが8月の末でしたから、処分までに4か月を要しています。この間、国交省は何をしてたんでしょ。

引越サービスに関して不適切な請求

国交省の報道発表資料を見ると、この事件については「引越サービスに関して不適切な請求があったことに対して・・・」と、不適切という表現がされています。不適切検査や役所の不適切調査、ここ最近の日本は不適切だらけなわけです。

kuniがコンプラの仕事をしていた証券界は、営業員に対する行為規制が最も厳しい業界の一つで、やってはならない行為が法令や規則に山ほど定められています。また、何か事件が発生して顧客に迷惑をかけた際に、顧客の損失を埋め合わせるための手続きも複雑になっています。

大昔、証券会社の損失補てんが社会問題になった時代がありました。顧客にリスクを取って投資してもらう世界で、損失を補てんしていたんじゃ自己責任が問えませんし、誰もリスクなんか取りません。この時の経験により損失補てんが法律で禁止されました。そのため、何か事故が起きた場合も、その行為が損失補てんではなく、「証券会社に責任があるから顧客への適切な対応なんだ」ということをしっかり証明する必要があるんです。

そこで証券界では損失補てんが可能な、営業員や証券会社の行為を金商法の中で明確に定めています。不適切行為、法令違反、システム障害の3行為です。これら3類型のどれかに該当しているとき、初めて合法的に顧客の損失を埋め合わせることが可能になっています。

証券界における不適切行為(未確認売買、誤認勧誘、事務処理ミス)

証券界にもこのように不適切行為という行為が定められています。これには「未確認売買」、「誤認勧誘」、「事務処理ミス」の3種類があり、それぞれ「顧客の注文内容をしっかり確認しないまま取引を成立させた」、「顧客に事実を誤って認識させるような勧誘を行い、取引を成立させた」、「過失により事務処理を誤った」というもので、いずれも故意ではないが結果的に顧客に損失を与えた取引を指しています。

一方で、営業員または証券会社が意図して行った取引は不適切〇〇などとは言いません。法令に定められた「禁止行為」または「法令違反」です。これ以上の詳細については省略しますが、このように「不適切」という言葉と「法令違反」は明確に区別され、営業員等への処罰も全く違ってくるわけです。

過失と故意の違い 不適切の濫用

前置きが長くなりましたが、過失と故意について、もう少し意識した取り扱いが必要ではないでしょうか。「伝票を作成するときに間違えてしまって顧客から引越代金を多くもらってしまったこと」と、「このお客さんは気付かないだろうから多めに請求しようと意図して過大に貰ってしまうこと」を一緒にしてしまい、不適切な請求と呼ぶのは止めませんかということです。最近非常に気になるんですね。

不適切会計なんてのも最近よく聞くようになりました。シャープや東芝辺りからだったんじゃないかと思います。以前はしっかり粉飾決算と言い切ってました。新聞やテレビにとっては上得意の広告主だから、ソフトに見せたいのかもしれませんが、、、これもいただけません。「不適切」の濫用、止めましょう。

厚労省毎月勤労統計 役所の不適切調査

厚生労働省の毎月勤労統計に端を発した、統計に関する不適切調査は、総務省のとりまとめによると、56の基幹統計のうち23の基幹統計に誤りが見つかったという結果になりました。ただ、これはあくまで各省庁が自主点検したものを総務省が取りまとめただけです。厚労省のように後から訂正してくる省庁がまだ出てくるかもしれません。

企業の不適切検査 役所の不適切調査

上場企業の不適切な検査が次から次へと表面化したと思ったら、今度は役所です。統計作成時の「不適切調査」と報じられています。ゴロを合わせただけではなく、不適切な行為が行われてきた背景や原因についても、かなり似ているような気がします。もう少し詳細が分かってきたら、この辺りも調べてみたいと思います。

総務省が公表した基幹統計の点検結果を読んでみると、冒頭書いたように23の基幹統計に誤りがあったとしていますが、「毎月勤労統計のように、承認された計画や対外的な説明内容に照らして、実際の調査方法、復元推計の実施状況に問題のある事案はなかった。」とされています。行為としては悪質なものはなかったということのようです。

あくまで役所の統計

今回の厚労省の統計に関する不適切調査が自爆テロなのかどうかは、引き続き注意してみていきたいと思いますが、一連の不適切調査に関して、一橋大学の北村教授が良いお話をされていました。日経の「統計不信 識者に聞く」という記事です。

特別監察委員会の再調査に求めることは?という記者の質問に答えて、「不適切調査の本質は何だったのか可能な限り客観的な情報や証拠に基づいて公正に評価し、1回目以上に情報開示すべきだ。与野党で批判が高まっているが、過度に政治問題化すべきではない。国民経済の実態を正確に捉えるため、統計調査は本質として政治から中立であるべきだ。建設的な議論を進めてほしい」

通常国会が召集され、野党はこの国会で「統計に関する不適切調査問題」を最大の争点にしてくると思われます。2007年の「消えた年金」問題で第一次安倍政権を追及した時と同様の展開がありそうですね。

しかし、北村教授の言葉にもあるように、政治と役所の統計調査をチャンポンにしないよう注意が必要です。「消えた年金」のような、巧みな言葉が躍り始めるでしょうが、この問題は役所の怠慢であり、政治とは切り離すべきという基本を押さえておきたいところです。そのうえで厚生労働省の内部で責任の所在を明確にし、しっかり改善してもらいましょう。

厚生労働省 毎月勤労統計調査に関する 特別監察委員会

1/16 毎月勤労統計調査に関して、調査の中立性や客観性を明確にするため、計6人の外部委員で構成する第三者委員会としての特別監察委員会を設置し、調査を開始したはずでした。その後1/22にわずか7日間で調査報告書が公表されています。

課長補佐以下には厚労省職員だけで聞き取り調査

公表された報告書では、職員が不正を放置してきたことについて認定した一方で、組織的な隠ぺいは認められませんでした。わずか7日間で調査が完了してしまうところで既にどうよ、それって感じなんですが、そこに聞き取り調査を特別監察委員会ではなく、厚労省の職員だけでやっていたというお話。

さらに局長・課長級の職員への聞き取り調査には、監察委員があたったものの、やはり厚労省幹部が同席していたとのこと。なんだか笑うしかないですね。スルガ銀行やTATERUといった事業会社の第三者委員会も見てきましたが、この特別監察委員会、酷すぎです。

安倍政権打倒に向けた自爆テロ?

あまりにも突っ込みどころだらけのこの報告書、野党から突っ込んでもらうための報告書であり、大炎上することを目的とした報告書のように見えてなりません。あれほど頭の良い官僚たちの犯すミスとは思えません。と感じるのも実は、ある書籍を読んだ直後だからかもしれません。

上念 司著「官僚と新聞・テレビが伝えないじつは完全復活している日本経済」という本なんですが、著者は現代のテロリストにとって「フェイクニュースと自作自演の偽データがテロの武器である」と言っています。第一次安倍政権が倒れた原因の一つになった年金問題は、自治労の自爆テロだったとみているようです。森友学園や加計学園問題についても同様です。

そして、次に起きるのは2.26事件レベルの大規模なテロではないかと言っており、それにより安倍政権が倒れるのではないかと指摘しいます。たしかに今の日本で、銃や刀で暗殺するような革命はないでしょう。フェイクニュースと偽データで行政を混乱させる。そこを野党とマスコミが煽って、国民を扇動していくのかもしれません。

「官僚と新聞・テレビが伝えないじつは完全復活している日本経済」では、地上波のテレビと新聞の報道はデタラメばかり。としたうえで、ニュースの裏に隠された「日本経済」、「安倍政権」、「消費税増税」。「世界経済」について、筆者の見立てが書かれています。

政府と日銀のBSを連結してとらえれば、日本の財政再建に問題なしとする「統合政府論」についても肯定的に触れられていて、なかなか面白かったです。kuniはテレビと新聞のデタラメについて読みたくて買いました。お勧めです。統合政府論についてはまた別の機会に。

三菱自動車 パナソニック 技能実習認定取り消し

また、三菱自動車がやらかしました。っていうか、やらかしたことに対するペナルティが公表されたということです。1/26 日本経済新聞の記事です。技能実習生に本来させるべき(計画した)業務をやらせていなかったということで、今後5年間の技能実習生の受け入れを禁止するというもの。

何度やっても懲りない奴ら

三菱自動車のこの不正は去年夏頃にすでに報道されていましたね。日産自動車も同様に報道されています。燃費不正問題、検査不正問題、そして会長による不正行為。こういう企業がまだ生き残っているのが不思議です。

日産自動車はペナルティなしということでしょうか。去年6月の報道では、45人が計画と異なる作業をしていたとなっていました。厚生労働省のHPで確認してみましたが、認定取り消しの判断基準については良く分かりません。

同HPの報道発表資料「技能実習計画の認定取消の通知と改善命令を行いました」という資料なんですが、添付資料を見てぞっとしました。例えば三菱自動車の場合は別紙1が認定取消の内容となっているんですが、27名の技能実習生を例えば「認 1704005410」という認定番号で示しています。この記号が27人分ずらりと。

現代の奴隷制度と言われるのが分かるような気がします。実習生の個人を識別するために必要なのかもしれませんが、世間に公表する資料にそれ必要ですか?企業に通知する書面上で、実名で表示すれば良さそうなもんです。行政側にも外国人労働者を一個人として扱う姿勢が必要だと思います。

問われる企業のガバナンス

企業の頂点にいる者はどっさり稼ぐ。簿外でもいろいろ儲けちゃう。女性従業員、派遣社員、外国人労働者。時代とともにその矛先を変えながらですが、常に底辺に位置する従業員を搾取することで、一流と言われた企業が成り立ってきたわけです。「いい加減学びなさいよ」と言ってやりたいですね。

朝日新聞のニュースでは三菱自動車の首脳が「軽く考えてはいけない、非常に残念」と述べたとありますが、経営層の甘さ、軽さがにじみ出てます。外国人労働者を巡るトラブルこれから爆発的に増えそうです。ガバナンスのキモになっていくでしょう。

東京証券取引所の市場区分見直し

東証1部銘柄が多すぎとして、1部から2部へ降格となる企業が出てくるのでは、と市場再編に対する非難があるようですが、ガバナンスを切り口にどんどん降格させていったらどうでしょう。1部上場企業の経営層へのインパクトはデカいですよ。一部に生き残るために企業のガバナンスは向上するでしょうし、何より「一部上場企業は安心」と投資家に訴えることができます。もちろん、もともと2部の銘柄と区別できるようにね。kuniのお勧めです。