ユニゾ破綻 債権の取立不能又は取立遅延のおそれ しかし北国FHDは急騰

4/26、不動産やホテル事業を手掛けるユニゾホールディングスは東京地裁に民事再生法の適用を申請し、同日付で保全・監督命令を受けたと発表しました。これを受けて多くの地銀等が、「債権の取立不能又は取立遅延のおそれについて」といった内容の開示を行いました。

ユニゾホールディングス

ユニゾホールディングスは元々みずほグループの会社でしたが、エイチ・アイ・エス(HIS)から敵対的TOBをしかけられ、その後複数の買い手候補が現れた買収合戦に発展しました。最終的には、米ファンドと組み、上場企業初となる従業員による買収(エンプロイー・バイアウト=EBO)で2020年に上場廃止となった会社です。

民事再生法の適用を申請

詳しいいきさつはここでは書けませんが、結局破綻。4/27~28の適時開示では、9つの金融機関が、「債権の取立不能又は取立遅延のおそれについて」を公表していました。融資先が破綻して焦げ付いてしまいましたという話ですね。

株価は大きく売られることなく

翌日の4/28にはこれらの金融機関株式が大きく売られるかと思いきや、意外にそういうことにはなりませんでした。ほとんどの株価がプラスで推移。部外者の我々にとっては寝耳に水の事件でしたが、金融の業界ではある程度覚悟されていた事案だったのかもしれませんね。

そんな中、北国FHDは逆に急騰(終値で約6.3%の上昇)となりました。ユニゾの破綻を受けたからでしょう、決算発表の延期まで公表していましたが、合わせ技で発行済み株式総数の10.04%)、取得総額90億円を上限とする自社株買いも発表したんですね。

世界的に金融不安が言われる中、下手をすると売りが売りを呼ぶ展開にだってなりかねない状況で、自社株買いを公表し、株価をてこ入れするあたり、同社経営陣の株式市場に対する意識は相当高そうです。

IHI 玉川温泉の温泉水から金の回収に成功?

ちょっと前の話になるんですが、日本経済新聞は4/7、「温泉から『金』? 新たな国産供給元に高まる期待」という記事を掲載しました。温泉水から金(ゴールド)の回収に成功したという記事です。これ、ちょっと驚きの記事でした。

IHI

IHIは、航空エンジンで国内トップシェアを有し、橋梁など海外大型プロジェクトで実績を持つ総合重機大手の一角。火力発電用ボイラなどエネルギー関連、トンネル工事用シールド掘進機などのインフラ関連、航空・宇宙・防衛関連など幅広い分野に事業を展開する企業です。昔の石川島重工業ですね。

玉川温泉

玉川温泉は秋田県仙北市にある温泉で、「一カ所からの湧水量」と「強酸性の温泉水」で日本一を誇る温泉だそうです。源泉温度はなんと98度で、硫黄臭と微量のラジウム放射線が含まれている非常に特徴がある泉質なんだそう。

温泉から金

海洋研究開発機構(JAMSTEC)とIHIの研究グループが、この玉川温泉で温泉水から金の回収に成功したといいます。強酸性でマグマに近い温泉なら高濃度の金が溶け出しているのではないかという仮説をもとに実験を実施したということです。

回収のカギを握るのは、IHIが開発中の「ラン藻(シアノバクテリア)」と呼ばれる藻の一種で、金属を吸着する性質を生かし、藻のシートに金を吸着させて濃縮する仕組みを確立したとのこと。

で、結果はというと、藻の吸着を利用した温泉からの金供給コストは、世界の主要金鉱山の平均コストよりも安いんだそう。温泉からの金回収が軌道に乗るには、藻を大量に培養する仕組みをどう確立するかなどの課題はあるようですが、温泉大国の日本にとって、メチャ夢のある話ですよね。

株式会社ジェイホールディングス 連結子会社取締役があるはずのない株式を売却

株式会社ジェイホールディングスは4/24、「錯誤による募集新株予約権(有償ストックオプション)の行使過誤に関するお知らせ」を公表しました。錯誤による過誤とはまた、小難しいタイトルですね。誤解によりやっちまいました、、、って意味ですね。

株式会社ジェイホールディングス

ジェイホールディングスは、スポーツ、不動産、Web、太陽光、環境ソリューションの5事業を営む企業です。2021年12月期は売上高の6分の1強を横浜マリノス向けが占めたんだそう。1993年に設立されて以降、ここまでで社名が5回も変わってます。あんまり上手くいってる会社じゃなさそうです。

事案の概要

同社は役職員や連結子会社の役員向けにストックオプションを発行しており、その行使条件は、「同社普通株式の取引終値が一度でも 500円以上となった場合にのみ、本ストックオプションを行使できる」というもの。「取引終値」ね。

同社株式は4/7に一時501円まで買われましたが、残念ながら終値は478円。つまりストックオプションは行使できないわけですが、子会社役員はこれを誤認して行使(株券にする)を申請し、同社の裏方もこれを受けてしまったということです。

結果的に4/14、この株式を市場取引にて1株当たり 340円で売却してしまったとのこと。しかし、まぁ、なんでこんな初歩的なというか、笑い話みたいなミスが発生するんでしょうね。事業活動に資源を最大限に投入し、稼ぐことは否定しないけど、その前に最低限のルールを守る態勢がね、必要なんですよ。

株式会社サーキュレーション 代表取締役が違法薬物所持で退任

株式会社サーキュレーションは4/20、「代表取締役退任の開示に関する経過報告及び新経営体制に関するお知らせ」を公表しました。4/18には「代表取締役の異動に関するお知らせ」を公表していたんですが、その際の説明されていた理由は「一身上の都合により」ということでした。

株式会社サーキュレーション

株式会社サーキュレーションは、企業に対し様々な経験や知見を有する外部の専門人材を紹介し、経営課題の解決を支援するサービスを展開する企業。雇用契約を前提とする人材紹介などと異なり、外部の専門人材を準委任契約によりプロジェクト単位で活用できるそうです。設立からまだ10年未満という、東証グロース上場企業です。

違法薬物所持

代表取締役社長から4/18、「違法薬物所持の疑いにより捜査を受けたとの申出及び辞任の意思表示」があったということです。違法薬物というのは、大麻・覚せい剤・脱法ハーブ・危険ドラッグなどを指している言葉らしいのですが、今回の開示ではその詳細までは分かりません。

今のところ、「捜査を受けた」ということだけしか開示されていませんが、全く身に覚えのない捜査であれば辞任の意思表示、とはならんでしょうしね。しかしまぁ、とんでもない事件です。

同社としても開示の中で、「本件は前代表による業務外の私的空間における純然たる私的な行動」と言ってますが、世間の目はそう割り切ってはくれないでしょう。前代表は現在も同社の筆頭株主(33%を保有)ですので、当面はこれがどうなるか、が注目されることになりそうです。

公正取引委員会 IPO公開価格を巡りみずほ証券に対して注意

公正取引委員会は4/13、みずほ証券株式会社に対して、独占禁止法(優越的地位の濫用)の規定の違反につながるおそれがある行為として注意を行いました。新規株式公開(IPO)で、「公開価格」を設定する際、主幹事証券の優位な立場から一方的に低く値決めした行為がみられたということです。

「注意」の概要

みずほ証券は上場するみずほフィナンシャルグループの証券子会社です。問題視されたのは、2020年6月~21年5月に、IPOで主幹事を担当した21社のうちの2社。企業が他の証券会社から聞いた意見等を参考にせず、企業側の主張を下回る想定発行価格を提示するなどしたとのこと。

この2社は上場後の「初値」が公開価格の倍以上となり、公取委は「より多くの資金を調達できた可能性があった」と問題視しました。独禁法違反が疑われた場合、公取委は、違反の再発防止を求める「排除措置命令」、行為の取りやめを求める「警告」、違反はないが未然防止のため口頭で行う「注意」、の対応を取ります。今回はこの中の「注意」にとどまったということですね。

公開価格設定プロセス等に関する実態把握

実は昨年1月に公取委は、「新規株式公開(IPO)における公開価格設定プロセス等に関する実態把握について」という報告書を公表しており、今回のみずほの件はこの時点で把握されていたものと思われます。この昨年の報告書で、「今後は追及するぞ」としていて、今回はそれより2年遡った事案に対するもの。当然、「注意」ぐらいしかできません。

しかし、なぜこのタイミングで「注意」なんかわざわざ出したんでしょうね。昨年1月以降にあくどいことを続けている証券会社が、このあと挙げられるってことかもしれません。