三菱UFJ信託 社員が顧客金銭着服 社長ら報酬返納

日本経済新聞は6/11、「三菱UFJ信託、社長ら報酬返納 元社員が顧客金銭着服」と報じました。昨年12月に社員2人が顧客の金銭を着服していた問題が発覚した件について、会長、社長、当時の常務執行役員の役員報酬を自主返納するというお話です。

昨年12月に発覚

いやぁ、知りませんでしたねぇ、この事件。再発防止策に役員報酬の返納という今回のお話もホームページで公表しただけで、TDnetでは開示されていません。おそらく昨年12月の発覚時もそうだったんでしょうね。日経は報道してたのかなぁ。見事に見落としていました。

日経の過去記事を検索してみると、確かに出てきました。社員2人がそれぞれ別の顧客から預かった現金を、総額約5,800万円着服したという内容。1人は50代女性で吉祥寺支店(東京)や中野支店(同)に勤務した2007~20年に顧客9人の口座から計5,370万円を着服。

もう一人は30代男性で18~20年に中野支店で、顧客2人の口座から計442万円を着服していたとのこと。行為の最後の辺りの期間は二人とも中野支店ですねぇ。50代女性の手口を模倣した行為でしょうか。

被害額が拡大

その後調査を進めていった結果、今回公表された被害額は、50代女性の方が4,380万円増えて、総額9,750万円になっています(被害顧客数は14名)。30代男性の方は442万円のままみたい。いずれも被害の全額について同行が補償を実施したということです。

2人が協力していた形跡は見つかっていないそうですが、いずれも着服した金は生活費などに充てたということです。この件の横展開の調査も行われていて、結果、2人の社員以外の社員による着服等の事案は確認されていないということです。

今度はスシロー 景品表示法違反(おとり広告)

公正取引委員会は6/9、「株式会社あきんどスシローに対する景品表示法に基づく措置命令について」を公表しました。提供を中止した寿司のメニューを取り扱っているかのようにテレビコマーシャルなどで宣伝したとして、景品表示法違反(おとり広告)を認定し、再発防止を求める措置命令を出しました。

FOOD&LIFE COMPANIES

先月末に、元気寿司において不適切な支出が発覚し、特別調査委員会を設置することになった件を取り上げましたが、今度は業界1位のスシローです。スシローを運営するのは株式会社あきんどスシロー。そして同社を傘下に置き東証プライム市場に上場するのが、(株)FOOD&LIFE COMPANIES。

回転すし店「スシロー」を直営店中心に全国でチェーン展開し、店舗は客席数200席程度の大型郊外店が中心。2022年3月末時点の店舗数は、国内975店、海外73店の合計1048店だそうです。

違反行為の概要

2021年9~12月、全国の約600店舗で実施したキャンペーンで「新物!濃厚うに包み」(税込み110円)、「とやま鮨し人考案 新物うに 鮨し人流3種盛り」(税込528円)、「冬の味覚!豪華かにづくし」(同858円)という期間限定の3商品を売り出し、テレビコマーシャルや自社のウェブサイトで宣伝しました。

しかし、実際は宣伝を続けている間、店舗の9割超で提供されない時期があったようです。提供できなかった店舗は583店舗に上り、公正取引委員会は、実際には購入できない商品を購入できるかのように表示した「おとり広告」に当たると判断したということです。

何度お店に行っても売り切れやら入荷待ちということで、SNSでもこの件は結構顧客から発信されていたようです。あきんどスシローでは、同じ日にお知らせを公表しており、「措置命令を真摯に受け止め、再発防止に努める」としています。

株式会社レスターホールディングス 特別調査委員会を設置

レスターホールディングスは6/6、「特別調査委員会の設置及び第 13 期定時株主総会の継続会の開催方針に関するお知らせ」を公表しました。同社の海外子会社において、コンプライアンス違反の疑いのある取引が行われていたことが判明したためということです。

レスターホールディングス

レスターホールディングスは、半導体・電子部品などを扱うエレクトロニクス商社。ソニーなどの半導体製品の販売、開発からサポートまでのトータルソリューションを提供しています。このほか、調達事業、電子機器事業、環境エネルギー事業も展開してますね。

2009年、ユーエスシー(1973年設立)と共信テクノソニック(1961年設立)が株式移転による共同持株会社としてUKCホールディングスを設立。19年、バイテックホールディングス(1987年設立)との経営統合に伴い、現商号に変更しています。

コンプライアンス違反の疑い

海外子会社における取引の一部にコンプライアンス違反の疑いが生じたため、社内調査を実施したところ、従業員の親族が営む現地企業との取引において、逸失利益の可能性があることが判明したということです。よく見るパターンですね。今回の開示では説明はここまでです。

逸失利益とは、本来得られるべきであるにもかかわらず、債務不履行や不法行為が生じたことによって得られなくなった利益を指します。他社でも見られたのは、親族企業に不法に儲けさせるパターン。そこには架空取引やらなんやらが出てくることが多いです。

逸失利益の算定では、はたしてどこまでが本来得られるべきであった利益か、その確定は容易でなく、訴訟などでもよく争点となるそうです。そうしたこともあって、今月末の株主総会も事業報告や決算報告が見送られることに。

アイ・アールジャパンホールディングス 株価も大荒れ 株主総会も

アイ・アールジャパンは6/10、「第8期定時株主総会会場及び開会時刻の変更に関する重要なお知らせ」を公表しました。同社の役員が未公表の情報に基づいて、同社株式の不正取引に関与した疑いがあるとの報道を受けた措置ということです。

荒れてきましたね

この事件を受けて、6/3に4,270円だった同社株は、6/9に2,255円まで下落。ほぼ半値ですね。一般的なインサイダー事件とは違って、上場企業のIR等を専門とする企業だけに、市場の反応は強烈なものとなりました。株主的には怒り心頭というところだと思います。

株主総会

こうした状況を受け、6/17に開催する株主総会もかなりあれるだろうということで、時間と場所を変更することに。開催時間は午前10:00から1時間遅らせて午前11:00へ。開催場所は同社本社の会議室(セミナールーム)から、ホテルニューオータニ 「芙蓉の間」へ、それぞれ変更になっています。

このホテルニューオータニ 「芙蓉の間」って、テーブルの起き方にもよりますが、おそらく1,400名を収容できる会場のようです。本店セミナールームの10倍近い広さなんでしょうね。大勢の株主が訪れ、荒れるんだろうという経営の読みは当たっていそうです。

開示では、「なお、本総会当日は、議長を含む取締役全員が本総会会場にて出席いたします。」という一言も添えられていて、株主に真摯に対応するという姿勢を見せてはいます。まぁ、当然でしょうね。しかし、そんなことで株主が許してくれるわけではありませんが。

株価へのインパクトも半端なかったので(これで下げ止まったかどうかは知りませんが)、株主による集団訴訟までを見越した対応が必要になりますね。

川崎重工業 子会社の川重冷熱工業で検査不正

川崎重工業は6/7、「川重冷熱工業における不適切行為について」を公表しました。昨年8月に完全子会社化した川重冷熱工業株式会社において、主にビルなどの空調システム用として製造・販売した一部の吸収式冷凍機の、検査などに関する不適切行為が判明したとのこと。

川重冷熱工業

川重冷熱工業は滋賀県草津市に本社を構える川崎重工の100%子会社です。昨年7月末までジャスダックに上場していましたが、完全子会社化で上場廃止となっています。オフィスビルやホテルといった公共設備の空調に使う冷凍機やボイラーが強みで、吸収式冷凍機は国内シェアで19%を占めるそうです。

検査不正の概要

冷房能力90%程度で試運転を行っているにもかかわらず、冷房能力100%での試運転結果であるようにデータを作成して検査成績書類に記載していました。不正の期間は1984~2022年で、1,950件が確認されているといいます。

また、そのうち334件については、顧客の立会で検査する場合、冷房能力100%の運転を行っていないにもかかわらず、計測器を調整(目盛りをずらして)することで冷房能力 100%の運転を行っているように偽装し、顧客に事実とは異なる説明をしていました。

さらに、1986~2009年においては、6機種、2,944 台について、JISの基準を満たしていないのに準拠しているようにカタログおよび仕様書を偽装していたという事案も。

いくつか気になる タイミング

完全子会社化されたのが2021年7月末。事件が発覚したのが2021年8月末。妙に近いタイミングなのがちょっと気になりますね。ガバナンス強化を目的として川重冷熱工業を完全子会社化したということですが。発覚から公表までに要した時間も。

6/7付けで社長が交代してるんですが、不正が行われていた当時の前社長は冷凍機の設計者で、93年から不正を把握していたんだそうです。