ねんきん定期便談合 26社の違反認定 課徴金17億円

公正取引委員会は3/3、「日本年金機構が発注するデータプリントサービスの入札等の参加業者に対する排除措置命令及び課徴金納付命令等について」を公表しました。特定データプリントサービスの入札等の参加業者が、独占禁止法第3条(不当な取引制限の禁止)の規定に違反する行為を行っていたということです。

特定データプリントサービス

「特定データプリントサービス」とは、日本年金機構が一般競争入札等の方法により発注する「ねんきん定期便の作成及び発送準備業務(直近1年間通知者用)」等の22業務に係るデータプリントサービスのこと。発注者から発注者の顧客のデータを預かり、データの編集・加工、印刷・印字、封入・封かん、発送準備などを行う業務です。

違反認定

違反事業者は全部で26社。課徴金額の大きい順に、東洋紙業株式会社、ナカバヤシ株式会社、共同印刷株式会社(ここまで課徴金は3億円超)、トッパン・フォームズ株式会社、北越パッケージ株式会社(ここまで1億円超)、といった面子です。課徴金納付命令対象事業者数は24社で、総額は 17億4,161万円だそうです。

日本年金機構

今回公取委が公表した文書において注目は、「日本年金機構に対する要請」という部分。談合が行われやすい状況を作っていたことや、入札談合が行われている旨の情報について通報を受け、内部調査を行ったにもかかわらず、その結果を含むこの談合情報を公正取引委員会に通報しなかったことを指摘しています。

日本年金機構の前身である社会保険庁時代にも、支払通知書等貼付用シールの入札談合事件というのが発生しています。違反事業者もそうだけど、胴元がゆるいってのも、かなり大きな要因です。

スマートバリュー サイネックス 公正取引委員会による立入検査

地方自治体が発注するウェブサイト管理システムを巡り、競合他社の参入を妨げた疑いで、公正取引委員会は情報システム開発のスマートバリュー、サイネックスの関係先を独占禁止法違反(不公正な取引方法)の疑いで立ち入り検査しました。

スマートバリュー

スマートバリューは、公的手続きのオンライン化を推進する「デジタルガバメント」と、クルマに関するデータ利活用を支援する「モビリティ・サービス」からなるクラウドソリューション事業を手掛ける東証1部上場企業。

サイネックス

サイネックスは、50音別電話帳「テレパル50」などを発行し、広告枠の販売を収益とする出版事業が中核。このほか、インターネットの地域情報サイトなどを運営するICTソリューション事業、ロジスティクス事業などを展開する、こちらも東証1部上場企業です。

疑われている不公正な取引方法

自治体がウェブサイトの編集や更新に使う、コンテンツ管理システム(CMS)。誰でも利用可能なオープンソースのソフトウエアを使って開発する業者が多いようですが、スマートバリューはオープンソースを使わず、自前でCMSを開発する企業。

そこで両社は複数の地方自治体に対し、事業者の提案を総合評価する「プロポーザル方式」で受注企業を募る際の仕様書に、オープンソースのソフトウエアを使っていないCMSであることを要件に盛り込むよう働きかけていたようです。このことで、オープンソースを利用する企業の取引を妨害した疑いがあるということです。

オープンソースを利用することで安価で構築できる(多くの企業が競える)という面と、オリジナルのプログラムでセキュリティを堅牢にできるという面。両方一理あると思われます。この案件の審議はかなり難しいものになりそうです。

ねんきん定期便談合 二十数社に課徴金

日本年金機構が発注した「ねんきん定期便」などの帳票の作成及び発送準備業務に関する談合問題で、公正取引委員会は、二十数社に排除措置命令や課徴金納付命令の処分案を通知しました。報道によると課徴金の総額は約14億円だそうです。

談合とは(復習)

談合とは、国や地方自治体の公共事業などの入札の際に、入札業者同士で事前に話し合って落札させたい業者を決め、その業者が落札できるように入札内容を調整すること。刑法上は談合罪(刑法96条の3)の適用があり、また不当な取引制限となる場合には独占禁止法に違反します。

二十数社

今回、独占禁止法違反の疑いがあるとして、公正取引委員会による立ち入り検査を受け、同委員会より独占禁止法に基づく排除措置命令書(案)および課徴金納付命令書(案)に関する意見聴取通知書を受領したのが二十数社あるとのこと。

機構が発注するねんきん定期便や、年金振り込み通知書などのはがきや封書の印刷、発送準備業務の入札で、入札額や受注数量などを事前に調整していたということです。少なくとも数年以上続いていたといいます。

TDnetでの開示を見てみると、11/5までに、サンメッセ、光ビジネスフォーム、カワセコンピュータサプライ、トッパン・フォームズ、ナカバヤシ、ディーエムエス、共同印刷、の7社が当該事実を認めています。ただし、サンメッセは立ち入り検査は受けたが、命令書等は受領していないとしています。

課徴金の総額は約14億円とのこと。内訳をみると、トップはナカバヤシの3億1071万円。続いて、共同印刷 3億5百万円、トッパン・フォームズ 1億9600万円、ディーエムエス 7,835万円、光ビジネスフォーム 5,772万円、カワセコンピュータサプライ 1,840万円となっています。

医薬品入札談合 学校PC入札談合

10/13、独立行政法人「地域医療機能推進機構」(JCHO)発注の医薬品の入札を巡る談合事件に関し、東京地検特捜部と公正取引委員会は、独占禁止法違反(不当な取引制限)容疑で卸大手4社を家宅捜索しました。10/14には広島県の学校用パソコン入札でも談合が。

医薬品入札談合

捜索を受けたのはメディセオ、アルフレッサ、スズケン、東邦薬品の4社です。昨年11月に公正取引委員会が強制調査を行っていた件ですね。2018年6月の入札では、発注総額約739億円。2016年の入札も今回捜査の対象のようです。各医薬品のグループをどの社が受注するかを事前に調整していたということです。

しかし、一回あたりの金額デカいですね。とはいえ、1社あたり200億円程度、その2%として課徴金は4億円とか、、、そんなレベルでしょうか。ただ、これ1回分ですから、他の年にもやってればこの2倍や3倍になることもあります。

学校PC入札談合

こちらは、広島県や広島市が発注する学校用パソコンなどの入札で、談合を繰り返した疑いが強まったとして、公正取引委員会が14日までに、計14社の関係先を独占禁止法違反(不当な取引制限)容疑で立ち入り検査したという報道です。

立ち入り検査を受けたのは、NTT西日本、大塚商会、NTTビジネスソリューションズ、NTTフィールドテクノ、富士通リース、ソルコム、ハイエレコン、北辰映電、呉電子計算センター、中外テクノス、田中電機工業、新星工業社。これで12社。あと2社が分かりません。

公正取引委員会は、学校向けのパソコンやタブレット端末の市場が拡大する中、業界に適正な競争を促すことを目指しているとみられます。今回はあくまで広島のお話。他の自治体でも出てきそうですよね。この事件、かなり拡大していくかもしれません。

ゲンキー株式会社 公取委が確約計画を認定 Genky DrugStores(9267)

Genky DrugStoresの子会社、ゲンキー株式会社は、確約計画を提出し公正取引委員会はこれを認定しました。これにより、独占禁止法第19条(同法第2条第9項第5号〔優越的地位の濫用〕)の規定に違反する疑いがあるとして進められていたこの調査は終了しました。

確約手続

公正取引委員会が、独占禁止法に違反している疑いがあるとして調査を開始した後は、意見聴取手続 → 排除措置命令・課徴金納付命令 → 不服がある場合は訴訟、という流れにより進んでいました。

確約手続きというのは、平成30年12月30日に新たに導入された制度で、独禁法違反の疑いについて、公正取引委員会と事業者との間の合意により、自主的に解決するための手続です。競争上の問題の早期是正や、公正取引委員会と事業者が協調的に問題解決を行う領域を拡大し、独占禁止法の効率的かつ効果的な執行に資するものとされています。

調査等に係る時間や費用を削減し、事業者が確約計画を策定して自主的に改善することを約束するということですね。このような趣旨で行われる手続きのため、公取委が認定を公表する際は、「独禁法の規定に違反することを認定したものではないこと」を付記することになっているようです。

疑われていた行為

  •  あらかじめ必要な手続きを取ることなく、納入業者の従業員等を派遣させていた
  •  クリスマスケーキやお節料理について、納入業者に対し購入を要請していた
  •  キャンペーンの費用を確保するため、納入業者に対し金銭の提供を要請していた

こんなことが公表されています。いずれもあらかじめ納入業者と話し合われた結果であれば問題ないわけですが、すべて有無を言わさず強制していたわけですから、まさに優越的地位の濫用ですわな。ただし、、「独禁法の規定に違反することを認定したものではない」ことになりますが。