北國銀行 3億6600万円の着服事件

一昨年、当ブログでも変わり始めた銀行として北國銀行を取り上げました。金融財政事情の特集記事を参考にしました。ところがその北國銀行の行員による3億円を超える着服事件が発覚。同じ一昨年から起きていたとは。。。地銀で進む表の世界と裏の世界。難しいですね。

防止できなかった原因は他行においても

事件が公表されたのは2/21です。北國銀行福井支店に勤務していた26歳の男性行員が、福井県の取引先4社に融資した資金など、総額3億6600万円を着服していたと。「融資を受ける実績を積めば、信用度が上がり優遇される」などと持ち掛け、実体のない融資を実行します。そして、4社の口座から融資金を現金で引き出し、着服する手口を繰り返していたといいます。

不正流用額としては同行でこれまでに起きた不祥事の中で最大のようです。実際の被害額は1億5500万円だそうです。

北國銀行はビジネスモデルを変革し、コンサルティング業務を熱く推進している地方銀行の筆頭格のように言われてきました。融資担当部門の行員数を削減し、余剰人員を事業承継、M&Aなどのコンサル業務に振り向けているのは、おそらく地銀全体で言えることでしょう。

こうした表の世界の裏側では、融資担当者一人当たりの担当企業や顧客は増加し、業務量も増加します。当然、コンプライアンス面でのリスクも増加していきます。経営の目線も新規事業に向けられることが増え、監視の目が行き届かなくなるわけです。このリスクは地銀全体で拡大していると考えた方が良さそうです。

北國銀行が事件を公表する1か月前の1/22、宮崎銀行でも2行員で1億2千万円の着服という事件が公表されてるんですね。

なぜか日経はこの事件報道せず

なぜだか分かりませんが、日経はこの北國銀行の事件を全く報道していません。サブスクリプションのコンサルティング事業やAIチャットボットの話題など、公表日の直前に3日連続で取り上げてたんで、悪い記事書きにくかったんですかね。

ベルテクスコーポレーション キックバック ?

ベルテクスコーポレーションは、同社連結子会社の役職員による不正行為が発生したことを公表しました。外部の専門家を含め調査委員会を設置して調査した結果、不正行為が発覚したということですが、詳細の情報はありません。おそらくキックバックかと思われます。

ベルテクスコーポレーション

東証2部上場会社らしいのですが、初めて聞く会社です。2018年10月1日に、ゼニス羽田ホールディングスとホクコンが、共同株式移転の方法により、両社の完全親会社となる「株式会社ベルテクスコーポレーション」を設立したということです。

ゼニス羽田ホールディングスの沿革を調べてみると、株式会社ハネックスと日本ゼニスパイプ株式会社、羽田コンクリート工業株式会社の3社が合併してできた会社ですね。日本ゼニスパイプが東京店頭市場に公開していたことから、その流れでジャスダック、東証2部へと生き残ってるようです。

不正の概要

話を戻しましょう。不正の舞台となったのは、持ち株会社のベルテクスコーポレーションから見ると孫会社にあたる、ホクコンマテリアル株式会社です。当ブログが最近ご縁のある福井県福井市にある会社のようです。

開示情報によると、複数年にわたり下請け工事業者と共謀し、同社に対し架空もしくは水増し請求をさせた資金の一部を自らに還流させ、不正に領得していたとのこと。

元役員、元従業員2名による不正行為としていて、過年度分を含めて総額1億3800万円を不正に得ていたということです。行為者の責任追及、不正に関与した工事業者への損害賠償請求を進めているといいます。

トカゲのしっぽ、それもかなり先の方だけ切ってるんじゃないの?なんていう疑念を持たれないためにも、、、せっかく調査委員会も設置したわけですし、調査結果も公表するべきでは?

東レ子会社 水道機工 土木施工管理技士資格で実務経験虚偽申告

3/18の朝日新聞のスクープです。東レの子会社である水道機工株式会社で、実務経験を偽って国家資格である土木施工管理技士を不正に取得していた疑いがあるとのこと。あと、同社の子会社である水機テクノスでも。当ブログで以前取り上げた「大和ハウスの施工管理技士」の件とよく似た不正ですね。

1級土木施工管理技士

こちらもやはり国家資格で、1級と2級があるそうです。1級は学歴に応じて3~15年以上の実務経験がなければ受験できません。この資格の合格率は30~40%台ということです。

大和ハウスが実務経験を偽っていたのは、1級、2級両方、かつ、建築、土木、電気など広範囲で、合計10種の資格でした。そのため、総称として「施工管理技士」と呼んでましたが、水道機工の場合は今のところ1種類のようです。同社が報道を受けて公表した文書においても、「1級土木施工管理技術検定試験」としています。

問題の試験マニュアル

1種類だけだからマシという問題でもなさそうです。「経験がない方でもやり方次第」などと書かれた社内の試験マニュアルの存在も報道されています。同社のプレスリリースでも、「当社グループ内にて不適切な受験指導があったこと」を認めていますので、現時点で既に会社の関与が明らかということです。

同社は外部からの指摘を受けて、社内調査委員会を設置して調査を開始しており、3/10に関係省庁への報告もしているとのこと。とはいえ、朝日に報道されて後追いとなった公表。カッコ悪すぎです。今後は第三者委員会を設置して深掘りするようです。

このあとも続きそう

大和ハウスの不正が世に出たことで、水道機工の不正も・・・。そんな関係もありそうですよね。2017年から2018年に次から次へと検査不正が明らかになったように、国家試験に関する実務経験虚偽申告、この後も続きそうな予感が、、、。

ネットワンシステムズ 新たに発覚した原価付替取引

2/13に公表された、「特別調査委員会の中間報告書受領及び公表に関するお知らせ」では、調査期間を1カ月延長し、3/12を目途に最終報告書を受領する旨の説明がありました。その中では、調査の過程で、「原価付替取引」が存在することが発覚したため、、、という話もありました。

原価付替取引(ゲンカツケカエトリヒキ)

今では全部で9社が関与したといわれ、注目を集めていますので、ついつい架空循環取引の方に目が向いてしまいますが、新たに原価付替取引も発覚したようです。公表文の中では次のような表現になってました。

「特別調査委員会による調査の過程で、本不正行為に類似する不正(原価付替取引)が存在することが発覚し、当該不正の疑いに係る会社との平成20年以降の直接取引を対象として追加調査を実施することが必要になったことから・・・」

原価 付け替え

原価とは、商品を提供するために必要とした費用といっていいでしょうか。かなり雑な説明ですが。材料費に加え、労務費や光熱費などすべての費用を足し込んだものです。例えば、売上げ1000万円のシステム開発に800万円の原価が計上されていれば、200万円の利益ということになります。

逆に800万円の売上しかないのに、原価が1000万円かかってしまうと、200万円の赤字ということになります。この時、会計上原価として認識していた1000万円のうち、300万円分を他のプロジェクトに掛かった費用として不正に計上すると、100万円の利益が出せるわけです。この行為を原価の付け替えと言います。

昨年6月に電気興業(6706)という会社が、この原価付替取引の発生に関する調査結果を公表していました。コンプライアンス意識の欠如や原価計上ルールの不徹底など、発生原因が分析されていましたが、最も大きな原因は「赤字案件を発生させないというプレッシャー」でした。

赤字案件を戒める過度な手続き(経営への赤字上申書など)がプレッシャーとなり、原価の付け替えという不正の動機になっています。おそらくネットワンでも同じ状況があるんでしょう。ここでも見積書の案件名の書き換えなど、協力している業者が出てきそうですね。

大和ハウス 2億数千万円の架空発注

またしても、、、です。本当にこの会社多いですね不正・不祥事の類。東北工場勤務の課長が4年間にわたって鉄骨加工物件において2億数千万円の架空発注を行っていたというもの。2月7日付で当人を懲戒解雇し、刑事告訴も行ったそうです。

捜査当局に全面的に協力

全容究明に向けて捜査当局に全面的に協力する、とプレスリリースにはありました。第三者委員会とか設置しないんですね。。。ってよく考えたら、今年1月15日に外部調査委員会が設置されたばかりでした。当ブログでも取り上げた、施工管理技士の技術検定試験における実務経験証明書虚偽記載の件です。

同時期に外部調査委員会が2事案走ってます。ってのはシャレにならないからでしょうか。調べると、外部調査委員会、去年の3月、5月、今年の1月って具合にバンバン設置されてました。不祥事はこの委員会設置の数にとどまりませんけどね。あれ、よく見ると去年一時期2本走ってる期間あるなぁ。

当社取締役会の実効性評価の結果の概要について

架空発注の件、第3四半期の決算短信の開示に合わせて公表しているんですが、同時に「当社取締役会の実効性評価の結果の概要について」も公表しています。その中から一部抜粋しておきましょう。

「取締役会の構成、意思決定プロセス、業績管理等の取締役会の運営状況、社外取締役へのサポート状況、取締役の職務執行状況等を確認した結果、当社取締役会の実効性は十分確保されているものと評価しました。」  ん~、空しいねぇ。

度重なる不正・不祥事を受けて同社が新設した「法令遵守・品質保証推進本部」。同本部がしっかり機能したことで今回の架空発注も発見した、、、そういうことだったんでしょうかね。