ジェット機エンジンの欠陥に、カルテルも IHIは踏んだり蹴ったり

公正取引委員会は9/12、独禁法違反(不当な取引制限)容疑で、機械式駐車設備のメーカー8社に対して立ち入り検査を実施したようです。メーカー8社がカルテルを結び、ゼネコンからの発注に対して受注調整していた疑いがあるということです。

メーカー8社

立ち入り検査を受けたのは、新明和工業やIHI子会社のIHI運搬機械、住友重機械工業子会社の住友重機械搬送システム、日精、日本コンベヤ、日本ケーブル、日成ビルド工業、フジパスクの計8社。各社一斉に立ち入り検査を受けたことを開示しています。

各社は担当者同士が電話やメールなどで、ゼネコンから発注される機械式駐車設備の見積価格を事前に相談。特定の企業が受注できるよう調整し、自由競争を制限した疑いが持たれているとのこと。

IHI株式が急落

こういうことがあると、上場企業の株価は売られるわけですが、この日はIHIの株価が大変なことになってました。同社の立ち入り検査に関する開示は14時に行われたんですが、まったく別の事案(悪材料)も出てましたね。同社が一部製造を担当するジェット機エンジンで欠陥がみつかったというもの。

週初3,800円ほどしていた株価が約600円安まで売られ、翌日も下げて3,088円です。エンジンの欠陥の方の話題がメインで売られたんだと思いますが、立ち入り検査という材料も当然悪材料なわけで・・・。いやぁ、IHIの株主には踏んだり蹴ったりの一日でした。

ディスカウントスーパーの「オーケー」 値下げ分の補填を業者に要請

8/11付の日本経済新聞は、「オーケー、値下げ補填を業者に要請 公取委調査受け中止」と報じました。なんでここだけこんなに安く販売し、こんなに勢いがあるんだろう。そんなスーパーでしたが、やはりその裏にはこういう不正が存在したという話。ビッグモーターと一緒です。

オーケー

「オーケー」は、神奈川県に本社を構えるディスカウントスーパー。会社設立は1967年、現在資本金28億円という企業です。従業員数は1万6千人を超え、売上高は5,500億円。関東を中心に142店舗を運営しています。これだけの規模、ネームを誇りますが上場企業ではありません。

今回調べて初めて知ったんですが、創業者一族はなかなか名門のよう。同社の創業者は三男で、長男は父親の事業を継ぎ、次男は居酒屋チェーン「天狗」のテンアライド最高顧問。そして四男はセコムの最高顧問なんだそう。凄いね。

不正の概要

公正取引委員会が独占禁止法上の優越的地位の濫用の観点で調査を進めてきたようで、この調査を受けオーケーは7月、取引先や公取委に対して、「競合店対抗値下げに伴う補填要請を取りやめた」と報告したそうです。数年間続いていたとされる不正、ゲロしてすべてを終わらせようとしたんですね。

日経がオーケーに対する取材で掲載していたコメントが笑えます。「公取委の問い合わせを機に見直しを行い、補填を取りやめることにした。今後ともコンプライアンスを一層徹底していく」。いやいや、「今後とも」じゃなくて、「今後は」でしょ。

エムスリー グループ会社に公正取引委員会が立ち入り検査

日本経済新聞は5/24、「介護ソフト開発、公取委立ち入り 取引に条件、拘束疑い」と報じました。立ち入り検査を受けたのは、介護事業者向けシステム開発のロジック(金沢市)という会社。スマートフォンを通じてヘルパーの業務内容や時間を管理するソフトを開発・販売している企業です。

エムスリー

エムスリーは、医療従事者向けプラットフォームを活用し、医療関連の各種サービスを提供する企業。国内では日本最大級の医療従事者専門サイト「m3.com」を運営し、海外では米国や英国等のグループ企業が医療従事者プラットフォームを運営。国内30万人以上、世界600万人以上の医師が利用しています。東証プライム上場のエクセレントカンパニーです。

立ち入り検査

ロジックは、「全身を拭いた」、「おむつを交換した」といった介護記録を、スマートフォンを通じて管理するソフト「ケアウイング」を開発・提供しており、現在、全国で約2,400の介護事業所が導入しているそうです。

同社は遅くとも20年頃から、介護報酬を請求するためのソフトを製造販売する取引先に対し、ケアウイングの宣伝や営業先での売り込みを要請。断った会社には、ケアウイングに蓄積された介護記録へのアクセスを認めなかったといいます。

介護報酬の請求には介護記録を入手する必要があるため、取引先はロジックの求めに応じざるを得なかったとみられ、公取委は同社の行為が独禁法の禁じる「拘束条件付き取引」などに当たる可能性があるとみて調べています。

同社の22年3月期の売上高は10億円で、19年3月期の3倍超に急増しているようで、、、たしかにエグイことやってそうな感じです。ロジックがエムスリー傘下に入ったのは22年3月ですから、エムスリーもこうした実態を知らなかったかもしれません。ちなみにこの件について、エムスリーは何も開示等していません。

公正取引委員会 IPO公開価格を巡りみずほ証券に対して注意

公正取引委員会は4/13、みずほ証券株式会社に対して、独占禁止法(優越的地位の濫用)の規定の違反につながるおそれがある行為として注意を行いました。新規株式公開(IPO)で、「公開価格」を設定する際、主幹事証券の優位な立場から一方的に低く値決めした行為がみられたということです。

「注意」の概要

みずほ証券は上場するみずほフィナンシャルグループの証券子会社です。問題視されたのは、2020年6月~21年5月に、IPOで主幹事を担当した21社のうちの2社。企業が他の証券会社から聞いた意見等を参考にせず、企業側の主張を下回る想定発行価格を提示するなどしたとのこと。

この2社は上場後の「初値」が公開価格の倍以上となり、公取委は「より多くの資金を調達できた可能性があった」と問題視しました。独禁法違反が疑われた場合、公取委は、違反の再発防止を求める「排除措置命令」、行為の取りやめを求める「警告」、違反はないが未然防止のため口頭で行う「注意」、の対応を取ります。今回はこの中の「注意」にとどまったということですね。

公開価格設定プロセス等に関する実態把握

実は昨年1月に公取委は、「新規株式公開(IPO)における公開価格設定プロセス等に関する実態把握について」という報告書を公表しており、今回のみずほの件はこの時点で把握されていたものと思われます。この昨年の報告書で、「今後は追及するぞ」としていて、今回はそれより2年遡った事案に対するもの。当然、「注意」ぐらいしかできません。

しかし、なぜこのタイミングで「注意」なんかわざわざ出したんでしょうね。昨年1月以降にあくどいことを続けている証券会社が、このあと挙げられるってことかもしれません。

東邦ホールディングス 1億2,759万円の課徴金納付命令

東邦ホールディングスは3/24、「公正取引委員会からの排除措置命令および課徴金納付命令につきまして」を公表しました。独立行政法人国立病院機構が、九州7県の病院への医薬品納入のため実施した入札で談合があったという事件に対する課徴金です。

課徴金納付命令

この件に関して課徴金納付命令を受けたのは、同社子会社の「九州東邦」のほかに、「アルフレッサ」、スズケンの子会社「翔薬」、「富田薬品」、「アステム」の計5社で、その課徴金の総額は約6億2,700万円となっています。その中から今日、東邦ホールディングスブログを取り上げたのは、適時開示を最初に行っていたためです。

昨年3月にも

東邦ホールディングスでは、子会社の「東邦薬品」が昨年3月にも課徴金納付命令を受けています。独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)を発注者とする医療用医薬品の入札に関するもので、この時の課徴金の額は1億6,189万円(課徴金の減免額は30%)でした。ちなみに、「アルフレッサ」、「スズケン」もやはり課徴金食らってます。

課徴金減免制度

課徴金減免制度の目的(違反行為者に自主申告のインセンティブを与え、違反行為の調査を行いやすくする)から、今回も減免されている(やはり30%)のは理解するにしても、何度も同様の行為を繰り返す、懲りない企業に対しては、例えば減免金額を半減させる、などといった例外措置も必要なのではないでしょうか。