金融庁、損保ジャパンに立ち入り検査 金融庁の検査とは

金融庁は9/19、ビッグモーターの保険金不正請求問題を巡り、ビッグモーターと損害保険ジャパンへの立ち入り検査を始めました。両社の関係者にそれぞれ聞き取り調査をして、実態把握を進めていきます。

金融機関への検査

金融庁は既に行政処分を行うことを内定していると思いますが、実際に処分を下すために必要な証跡を集めるのが今回の検査の目的だと思われます。もちろん、検査の過程で新たな問題が出てくることもあるでしょうが、おそらくその辺りの話題は普通公表されません。

この立ち入り検査ってのが受ける方にとっては物凄い負担なんですよね。検査官が30人入るとすると、30人が調査を行えるサイズの会議室を用意。リクエストされた人数分の机や椅子、PCも。プリンター、コピー機なども準備し、社内システムへのアクセスも許可します。社内システムの使い方なんかのレクチャーも大変。ほかに、役職員を面談する部屋なんかも用意します。

検査期間は通常1~2ヶ月だと思います。30人のうちの多くの検査官が常駐するわけで、喫煙スペースや自動販売機コーナー、社員食堂などで偶然役職員が検査官に遭遇することもあります。そんな場面で聞かれては困る話なんかが出ちゃったりしないよう、社員教育も徹底します。

会社側では検査対応の専任部署が設けられ、リクエストのあったデータや書類を用意して検査官室に持ち込んだり、面談を受けた者の面談記録を整備したりなど、その人たちはほぼ通常業務ができなくなります。検査を受ける会社にとっては経済的な損失はかなり大きなものになるため、事前に行政処分できるという見込みがたってからでないと、なかなか乗り込めないんですよね。

大林組 大成建設 中央区八重洲のビル建築現場で鉄骨落下事故

9/19午前9時25分ごろ、東京都中央区八重洲のビル工事現場で、クレーンで吊り上げていた鉄骨が落下するという事故が発生しました。この原稿を書いている時点で2人の方が亡くなり、1人が意識不明の重体だということです。当初警察の発表が日本橋と誤報していましたが、八重洲です。

八重洲一丁目東B地区第一種市街地再開発

現場は東京駅の八重洲口。八重洲通りと桜通りに挟まれる地区。八重洲一丁目東B地区第一種市街地再開発と呼ばれる現場です。実はkuniは20年ほど前、この再開発地区で働いていたことがあるんですよね。雑居ビルが立ち並び、1階には居酒屋やら食事処がたくさんある街並みでした。

大林組・大成建設のJV

この再開発は事務所や飲食店舗、劇場、集会所、診療所、共同住宅、駐車場などで構成する地上51階、地下4階、高さ249.72m、延べ面積約225,000㎡の超高層ビルを建てようというもの。設計は大林組、施工は大林組・大成建設JV。 2025年3月に竣工する予定でした。

建設業界 最近おかしいよね

このところ建設業界では設計不良や施工不良などの話題が絶えません。時間外労働の上限が規制されるなどの変化が起きる2024年問題。そのタイミングまでに「なんでもあり」で工事を急がせ、工事を終わらせよう・・・といった焦りが業界全体にあるのでは。と感じていました。

そしてとうとう人命にかかわる大きな事故が発生したわけです。建設業界の皆さん、大丈夫ですか?急いては事を仕損じますよ。

株式会社ナレルグループ 子会社元従業員が逮捕 名刺情報持ち出しで

ナレルグループは9/15、「子会社元従業員の逮捕について」を同社ホームページのみで公表しました。同社の子会社である株式会社ワールドコーポレーションの元従業員が、個人情報保護法違反などの疑いで警視庁に逮捕されたという内容です。子会社名を聞けば、「あの事件か」と分かる人もいると思います。

ナレルグループ

ナレルグループは建設会社に施工管理技術者などの人材派遣を行う「建設ソリューション」と、システムインテグレーター(SIer)に技術者を派遣する「ITソリューション」を手掛ける企業の持株会社です。21年に現商号に商号変更していますが、もともとはワールドコーポレーションです。

逮捕容疑

そのワールドコーポレーションの元従業員が、名刺管理システムに対して不正にアクセスし、同社グループが保有するお客様等の名刺情報を漏洩させたものと説明しています。ただ、報道ではもう少し詳しく伝えられていて、「名刺管理システムにログインできるメールアドレスとパスワードを転職先の社員に送り、同システムを閲覧できるようにして、個人情報を提供するなどした」ということです。

情報の持ち出しは不正競争防止法違反に問われることがありますが、名刺は同法にあたらないため、今回は個人情報保護法違反が適用されたんだそう。

報道では記者から問い詰められ詳しく話すけど、自社の開示ではかなりザックリ。おまけに適時開示はなくホームページでひっそりと。ダメな会社の典型的なパターンです。

ポールトゥウィン 子会社元取締役の不正行為 調査結果を公表

ポールトゥウィンホールディングスは9/14、「特別調査委員会の調査報告書の受領及び役員報酬の減額に関するお知らせ」を公表しました。連結子会社において元取締役による不正行為疑惑が発覚した事案の調査結果ですね。9/8に予定していた決算発表も延期され、この日に一緒に公表されています。

調査結果の概要

結論からいうと、子会社HIKEが実施した初期調査において、疑義取引として識別されたもの以外に、調査委員会が新たに見つけた不正はなかったということです。元取締役による不正行為は計25件、総額 172,448千円と認定したとのこと。

ライセンス料等の権利取得金や、外注費に関する契約書等や請求書を偽装して、HIKEに支払わせ、当該支払金額を取得していました。支払った金額を元取締役に還流させる役割で、外部に2人の協力者がいたようです。

不正行為に及んだ動機

動機について元取締役は、「営業活動費用として接待交際費に充てて使用していた」と言っているようですが、調査報告書では次のように結んでいます。「HIKE のための営業等活動資金とする目的を有していたことは否定できないものの、飲食や遊興等の原資をねん出するため、自らの地位、権限、他社とのつながりを利用して、本件不正行為に至った可能性もあると考える。」

なんともグレーな結論ですね。いや、これ、結論じゃなくて推測です。こんな終わらせ方で良かったんでしょうか。

ジェット機エンジンの欠陥に、カルテルも IHIは踏んだり蹴ったり

公正取引委員会は9/12、独禁法違反(不当な取引制限)容疑で、機械式駐車設備のメーカー8社に対して立ち入り検査を実施したようです。メーカー8社がカルテルを結び、ゼネコンからの発注に対して受注調整していた疑いがあるということです。

メーカー8社

立ち入り検査を受けたのは、新明和工業やIHI子会社のIHI運搬機械、住友重機械工業子会社の住友重機械搬送システム、日精、日本コンベヤ、日本ケーブル、日成ビルド工業、フジパスクの計8社。各社一斉に立ち入り検査を受けたことを開示しています。

各社は担当者同士が電話やメールなどで、ゼネコンから発注される機械式駐車設備の見積価格を事前に相談。特定の企業が受注できるよう調整し、自由競争を制限した疑いが持たれているとのこと。

IHI株式が急落

こういうことがあると、上場企業の株価は売られるわけですが、この日はIHIの株価が大変なことになってました。同社の立ち入り検査に関する開示は14時に行われたんですが、まったく別の事案(悪材料)も出てましたね。同社が一部製造を担当するジェット機エンジンで欠陥がみつかったというもの。

週初3,800円ほどしていた株価が約600円安まで売られ、翌日も下げて3,088円です。エンジンの欠陥の方の話題がメインで売られたんだと思いますが、立ち入り検査という材料も当然悪材料なわけで・・・。いやぁ、IHIの株主には踏んだり蹴ったりの一日でした。