ショーエイコーポレーション 第1四半期決算にみる不祥事のコスト

ショーエイコーポレーションは8/13、四半期報告書を公表しました。3月決算の会社ですので、第1四半期決算ですね。架空循環取引に関する外部調査委員会の調査を実施するなど、余計なコスト負荷もあり残念な決算内容となりました。

決算の概要

第1四半期においては、コロナ禍が続く中、厳しい決算になったようです。そこへ架空循環取引という不祥事が発覚し、様々なコストが積み上がってしまいます。こうした不祥事が発生すると、当然ですが、営業を筆頭に社全体の士気も低下し、大きな影響が出ているはずです。

こうした二次的な影響はともかく、外部調査委員会の設置や社内における調査関係部署における費用負担といった直接増加した費用についてみてみましょう。

四半期報告書

四半期報告書の記述を見てみます。

「利益面につきましては、売上原価の低減によって売上総利益は微増したものの、企業価値調査費用、不適切取引に関わる監査費用等による販管費の増加(前年同期比140百万円、18.3%増)により、営業利益は130百万円(前年同期比49.9%減)となった」とあります。

企業価値調査費用はそれほど大きな金額ではないと思われますので、社内における調査や監査、再発防止策の策定など、1億円内外のコストが増加したとみてよさそうです。

さらに、「外部調査委員会の費用を営業外費用に計上したことで経常利益は45百万円(前年同期比83.0%減)、親会社株主に帰属する四半期純利益は24百万円(前年同期比86.2%減)となりました。」とあります。

営業利益と経常利益の差額が9,500万円。前年同期とも比較してみて、ほぼこの全額が外部調査委員会絡みの出費と思われます。こちらは社外へのキャッシュアウトですね。

かなり雑な計算ですが、従業員の不正により、同社では2億円程度の損失が発生したことになります。最終利益が2億円程度の同社。この損失はデカいですね。

内部通報者を処分したら懲戒 改正公益通報者保護法に基づく指針で

日本経済新聞は8/13、「内部通報者を処分したら懲戒 役員ら対象、政府が指針」という記事を掲載しました。通報した人に不利益となる対応をした企業に対し、その企業の役員や社員を懲戒処分にするよう企業に求めるということです。

懲戒処分を求めるのは

日経によると、懲戒処分にするよう企業に求めるのは、「通報した人に降格や減給といった処分をした役員や社員」と説明されています。ここでいう社員というのは人事権を持つ(と判断される)部長等の管理職を指していると思われます。

また、国が違反企業に指導・勧告し、従わなければ企業名を公表するとしています。他にも指針で内部通報に関する運用策を規定するようで、消費者庁が8月中にも告示するようです。

他にも、通報者を特定しようとする行為や、内部調査による「必要最低限の範囲」を超えた社内での情報共有も認めない。とも書かれているんですが、その範囲の詳細は明示していないようです。

ここでいったん整理。新たな指針で禁止し、それに違反した場合に懲戒処分を求めるのは、①通報者に降格や減給などの処分、②必要な範囲を超えた情報共有、③通報者の探索ということですね。

人事上の処分

「通報者に降格や減給などの処分」。「など」という部分は曲者ですね。日経では、通報した人物が望まない部署に配置転換されたオリンパスの事例もあげていました。が、人事異動まで含めると運用がかなり難しくなりそうです。

降格や減給は論外ですが、望まない部署への異動は日本ではよくあることですもんね。通報制度を運用していると、中には趣味で通報してくる人や自身への処遇に関する不平不満を訴え、通報してくる通報マニアみたいな人も出てきます。

こういう人に一般的な異動を発令すると、きっと揉めると思います。それが契機になって役員の懲戒処分に、、、なんてこともあるかもしれません。

キャンセルカルチャーとな?

日本経済新聞は8/6、「過去の言動、問われる倫理 『キャンセルカルチャー』五輪機に日本へ、社会全体で姿勢変える契機」という記事を掲載しました。キャンセルカルチャーという用語、kuniは初めて聞く言葉でした。その現象自体はいくつか知ってましたが・・・。

キャンセルカルチャーとは

日経の記事によると、「キャンセルカルチャーとは、問題のある言動で地位や仕事を失うことを指す。法律のない倫理的な問題についても、過去にさかのぼり追及されるのが特徴だ。」と説明されていました。

五輪に関してだと、音楽家が障害のある同級生へのいじめを後に音楽誌などで語った件で辞任しましたし、演出家はユダヤ人虐殺をコントのネタにした映像が見つかり解任されましたね。芸能人にも大会に迷惑がかかるからと開会式への参加を辞退した人がいました。

正直言うと、kuniはそんな昔のこと、そこまでヒステリックになる必要があるのかな、と感じましたね。日経では「価値観の転換に気づかない人が多い点にあるのではないか」、「中高年層には当時の価値観を今も引きずる人もいる。」、などと分析していました。ん~、確かにそうかもしれないけど・・・。

キャンセルカルチャーは、アメリカなどを中心に2010年代中頃から見られるようになったそうです。一昔前であれば問題にならなかったことも、SNSの普及に伴い、今や簡単に人々がキャンセル運動に参加できるようになっているというのがありそうですね。

SNS上での誹謗中傷はよく話題に上りますが、SNSが持つ暴力性みたいなものが背景にあるとすれば、このキャンセルカルチャー、良い面よりも悪い面の方が突っ走りそうな気がします。五輪は終わったけど、今後も様々な場面でこの言葉に触れることになりそうです。

なぜ まだ「中国」なのか

8/10付け日本経済新聞に、「企業に問う『なぜ中国』 市場混乱、世界に警告」という記事がありました。本社コメンテイターの方が書かれている記事です。当ブログでも以前から指摘してきた、日本企業と中国の関係について論じた記事です。

中国に進出する意味

そもそも「中国に進出することの意味」が分からなくなってきていると思います。従来から言われてきた中国進出の大きな意味は二つ。「安くて豊富な労働力」と「巨大な消費市場」でしょう。

このうち前者の「安くて豊富な労働力」については、既にそう大きなメリットはなくなってきているといいます。では後者についてはどうでしょう。越境ECなど、日本で生産して商品を中国に売るという枠組みが十分整備されつつあります。中国に拠点を持つ意味合いは薄れてきていると思うわけです。

ガバナンスの観点で

当ブログでは、理研ビタミンを取り上げました。中国の連結子会社で会計不正が発覚し、すったもんだしましたね。他にも多くの企業が中国の子会社等で不正が発生し、日本からのガバナンスが非常に難しいことを示しました。ガバナンスの強化は当然コスト高を招きます。ガバナンス面でも中国に拠点を置くリスクが顕在化しているのです。

その後、理研ビタミンは不正を起こした中国連結子会社を手放しました。その報道を受けて株価は上昇、今でも高い水準を維持し続けています。投資家は既にそういう見方(いつまで中国なんだ)をしているということだと思います。

国際政治の大きな枠組みが大きな転換点を迎えていることは確かでしょう。密接だった米中の経済関係の分離がどこまで進むのか分かりませんが、日本企業は既に中国に拠点を多く保有しています。経営陣はこれらが仇になることのリスクを、もう少し真剣に考えるときなのではないでしょうか。

株式会社 アイ・テック 四半期報告書の提出期限延長申請

株式会社 アイ・テックは8/11、「2022年3月期第1四半期報告書の提出期限延長に係る承認申請書提出に関するお知らせ」を公表しました。7/26に公表した役員及び従業員による不正行為(キックバック)により、決算が締められない状況というわけですね。

新たな情報

今回の開示では新たな情報が2点ありました。まず、7/1に同社東京支社に広島地方検察庁が家宅捜索に入っていたという事実。同社の取引先の法人税法違反の捜査で東京支社が浮かんできたということですね。

既に公表されていた、同社役員及び従業員が取引先に対して外注費を過剰に支払い、キックバックを受けていたという嫌疑。今回の開示では、このキックバックが複数の取引先との関係においても、同様に行われていた可能性があるとしています。

新たな情報はこんなところです。第三者調査委員会の調査や会計監査人による検証や追加監査手続、過年度の決算数値の確定など、数週間の時間が必要と見込んでおり、四半期報告書の法定期限内の提出は困難であると判断したようです。

渦中の役員

静岡市に本社を置くアイ・テック。にもかかわらず東京支社に家宅捜索ということになると、やはり東京支社で事件が発生してるんでしょうね。同社役員の一覧を見ると、常務取締役東京支社長という方と、取締役東京支社副支社長という方がいらっしゃるようです。

常務取締役東京支社長は今年6月に就任されているのに対し、取締役東京支社副支社長は就任が2011年6月。10年にわたり同じポストというのは少々気になります。