錢高組 元所長ら特別背任容疑で逮捕

中堅ゼネコンの銭高組の元所長が、下請け会社に工事費を水増しして請求させ、会社に約9,450万円の損害を与えたとして、特別背任の疑いで逮捕されました。他に、共謀した下請けの建設会社松岩組の元専務も逮捕されています。同社からの適時開示はありません。

逮捕容疑

逮捕容疑は両者が共謀し、2018年2月~19年2月、銭高組が共同企業体の1社として受注した兵庫県内の鉄道高架化工事を巡り、自己の利益を図る目的で、松岩組に工事代金を水増し請求させ、銭高組に計約9,450万円の損害を与えた疑いということです。

なんだかブラックな感じが

冒頭で開示なしと書きましたが、錢高組のホームページを見ると載ってることは載ってます。11/17付けのお知らせ、「一部のマスコミ報道について」というやつです。報道内容を引用して最低限の情報だけを載せているというスタイル。報道をしっかり把握したうえで読まないと何のことやらって感じです。

おまけに、今年のお知らせを遡ってみると、「一部のマスコミ報道について」というのが今年一年間の間に6回も出てくるんですね。当然、メディアに報道された同社にとって不都合なというか残念な事件に関するもので、やはり同じように報道内容を受け、それを補足する程度のお知らせです。

防衛省関連の建設工事案件で、同社の共同企業体の社員や同社社員が、官製談合防止法違反の疑いで逮捕されたという話。同社の協力企業の会長と社長が、同社に対する恐喝未遂容疑で逮捕されました。なんて話も出てきます。物騒な・・・。

これらの「お知らせ」をつなぎ合わせてみると、今回逮捕に至った特別背任の件は、大阪国税局の税務調査で所得の申告漏れを指摘されたところから発覚したようです。もう少し自社の認識としてしっかり開示するべきでは?と思います。

サカイホールディングス 会計監査人の変更

サカイホールディングスは11/16、「公認会計士等の異動に関するお知らせ」を公表しました。今年6月に就任したばかりの会計監査人が退任し、今度は有限責任中部総合監査法人なるところが新たに就任するんだそうです。

子会社の会計不正

連結子会社の株式会社セントラルパートナーズで、代表取締役の指示に基づき経理部長が6年間にわたり売り上げを水増しするという会計不正。以前当ブログでも取り上げました。子会社における典型的な、経営や親会社に対する忖度で発生した不正でしたね。

調査結果が3月に公表され、一件落着したわけですが、その後6月には、なぜか会計監査人が変更になります。で、その際就任した一時会計監査人が今回退任するという流れ。これだけちょこちょこ変更されると会計監査人も監査やりづらいでしょうね。

新たな会計監査人

今回の開示にはこんなことも。「監査役会で決定した 2022年10月24日時点で速やかに開示すべきところ、本日まで開示を遅延することとなった経緯と致しましては、株主総会議案として取締役会の決議後に開示するものと誤った認識によるものです。深くお詫び申し上げます。」

のっけからケチが付いた格好ですね。さらに今回就任した「有限責任中部総合監査法人」。日本公認会計士協会の上場会社監査事務所登録制度における登録状況が、「現在、準登録事務所名簿への登録を申請中」となっています。

なんとまぁ、とりあえず急場しのぎで取り繕うかのような会計監査人の選定です。この監査法人、設立が2022年9月となっています。大丈夫かいな、サカイホールディングス。

インサイダー取引 スクウェア・エニックス元社員ら逮捕

オンラインゲーム「ドラゴンクエストタクト」に関する未公開情報を入手してインサイダー取引をしたとして、東京地検特捜部は11/17、「スクウェア・エニックス」の元社員とその知人の両容疑者を金融商品取引法違反の疑いで逮捕したと発表しました。

逮捕の容疑

スクウェア・エニックスは、「Aiming」と共同でスマートフォン向けのオンラインゲームを制作。Aimingは2020年2月に「ドラゴンクエストタクト」の共同開発を発表し、7月に配信を開始していました。

共同開発の公表前だった2019年11月下旬、ゲーム開発が配信できる段階まで進んでいたことや、Aimingがスクウェア・エニックスとの業務提携を決定したという重要事実を把握したスクエニ元従業員。2019年12月上旬~20年2月上旬(共同開発公表の直前)までに、2,000万円以上Aiming株式を買い付けたということです。さらに、この元従業員から情報を伝えられた知人も2,600万円程度買付け。

株価の方は

彼らが買い付けた当時のAimingの株価をみてみると、2019年12月~20年1月末まで、200円台後半から300円台前半の往来相場って感じ。2/5に共同開発が公表されたんでしょうね、翌日の2/6から4日間連続のストップ高で、最高値730円まで買われています。

公表直前の株価が290円ですから、4日で2.5倍。二人とも約2,000万円が約5,000万円になった計算です。まさに濡れ手に粟の大儲け。しかし、このてのインサイダー取引は必ず見つかります。読者の皆さんは決してこういう取引を真似なさらないように。

アイ・アールジャパン 元副社長に新たな不正の疑惑

IRジャパンは11/14、「第三者委員会設置に関するお知らせ(ダイヤモンド・オンラインの報道を受けた当社元役員に関する追加調査の実施について)」を公表しました。半年前にインサイダー取引の嫌疑ですったもんだした元副社長(既に辞任)に新たな疑惑が浮上したようです。

新たな不正

IRジャパンは、プロキシー・アドバイザー(議決権行使助言会社)としてアクティビスト対応をいち早く手掛けてきました。日本の株主総会の“参謀役”、あるいは“用心棒”と呼ばれるような企業なんですね。

開示のタイトルにもあるように、ダイヤモンド・オンラインが、「2021年春ごろ、元副社長が投資会社のアジア開発キャピタル(ADC)代表と面会し、新聞輪転機メーカーの東京機械製作所の買収提案を行っていた」と報道したわけです。

何が問題かというと、東京機械の防衛アドバイザーを務めた(かなりのフィーを稼いでいたはず)IRジャパンの元副社長が、実はアジア開発キャピタル(ADC)に東京機械の「乗っ取り」をけしかけていたということ。つまりアクティビストに仕掛けさせておいて、防衛策のコンサルで儲けていたという構図です。いわゆるマッチポンプってヤツ。あくどいですねぇ。

第三者委員会

この報道を受けてIRジャパンも調査を行い、当時の副社長のスケジュールを確認したところ、同時期において副社長がアジア開発キャピタルと接触していた可能性があることを認識したということです。昨年9月にインサイダーを巡る調査委員会を閉じたばかりの同社ですが、再び第三者委員会を設置する羽目になったというお話。

インサイダーも酷い話でしたが、今回のこの事件は同社の信頼を完全に失いかねない一大事です。ダイヤモンド社は買収提案書を既に入手しているといいます。IRジャパン、かなり追い詰められてます。

日本製鋼所 不正行為に関する調査結果

日本製鋼所は11/14、「当社子会社における不適切行為に係る調査結果及び今後の取り組み等について」を公表しました。子会社である日本製鋼所 M&Eにおける不正について、5/20に設置した特別調査委員会の調査結果を公表。6か月間に及ぶ調査になりましたね。

調査結果 違和感その1

これまで火力発電向けの鉄鋼部材で検査不正があったとしていましたが、やはり他の製品にまで拡大し、不正行為は1998年以降で合計449件となったようです。さらに、新たに原子力発電所に関する製品で、データの改ざんなど20件の不適切行為があったということです。

原子力製品では2013年からデータの改ざんや捏造(ねつぞう)、虚偽記載が行われていたものの、この不正があった原子力発電所に関する製品については、海外向けのものであり、国内での使用実績はないとされています。これ、信用していいんだろうか。報告書を読んでいて感じた違和感その1です。

違和感その2

調査の対象とされたのは、室蘭製作所(日本製鋼所 M&E)、広島製作所、横浜製作所、名機製作所ということでしたが、不適切行為が確認されたのは室蘭製作所(日本製鋼所 M&E)において製造出荷された製品のみであり、広島製作所、横浜製作所、名機製作所において製造出荷された製品については、不適切行為は確認されていないとのこと。違和感その2。

室蘭製作所(日本製鋼所 M&E)がもつ特殊な生い立ち(機能分社による子会社化の歴史)が原因だとされているのですが、ここまでくると何をどう説明されてもしっかりと腹落ちしません。この感覚、kuniのような投資家のみならず、取引先においても同様ではないでしょうか。

最後に、国内では使用されていない(つまり海外では使用されている)。の方が今後の同社に対する損害賠償等のリスクは大きいという点は押さえておく必要がありそうです。