金融庁出向中のインサイダー取引 元裁判官に有罪判決

金融庁に出向中にインサイダー取引をしたとして、金融商品取引法違反(インサイダー取引)罪に問われた裁判官出身の元金融庁職員(32歳)。その判決公判で、東京地裁は3/26、有罪判決を言い渡しました(この事件の経緯等は過去記事でご覧ください)。

判決の内容

判決は「懲役2年、執行猶予4年、罰金100万円、追徴金約1020万円(求刑は懲役2年、罰金100万円、追徴金約1020万円)」という内容です。求刑に対して違ったのは、「執行猶予4年」というところですね。

「金融庁による監督制度の信頼を大きく失墜させた。規範意識の欠落は甚だしい」と断じたそうです。「市場の公平性と健全性、市場に対する一般投資家の信頼を大きく損なった」とも。そのとおり。執行猶予なしでよかったのに。

これまで明らかになっていなかったんですが、被告はTOB情報を利用したインサイダー取引を重ね、約393万円の利益を得ていたそうです。

さて金融庁は

前にも書きましたが、この事件。裁判官の出向を受け入れ、企業開示課課長補佐として働かせていた金融庁の責任も問われて然り。このあと金融庁としてどのような対応(処分や再発防止策など)をとるんでしょうかね。

ニチレイ 子会社ニチレイフーズの中国子会社で代表者による不正行為

ニチレイは3/25、「当社中国子会社における元従業員による不正行為に関するお知らせ」を公表しました。ニチレイフーズの中国子会社である日冷食品貿易(上海市)で、元董事長兼総経理が勝手に取引先の債務を保証したり、経費を流用したりするといった不正があったということです。

ニチレイ

ニチレイは、冷凍食品を扱う加工食品、温度管理が必要な食品を保管し輸配送する低温物流を主力事業として展開しています。冷凍食品や冷蔵倉庫では国内トップの売上高を誇る東証プライム上場企業です。そのニチレイの孫会社にあたる中国企業での不正ということになります。

不正の概要

董事長兼総経理が勝手に取引先の債務を保証したり、経費を流用したりするといった不正が行われ、不正による損失額は最大約9000万円になるとのこと。ニチレイフーズから出向していた董事長兼総経理が2020年から2024年にかけて不正行為を行っていました。

従業員?

公表文では「元従業員」と何度も表現されているのですが、「董事長兼総経理」ってその企業の代表者。日本で言えば、代表取締役兼社長執行役員ってとこですかね。それを「元従業員」と連呼するのはいかがなものか(契約形態が雇用契約なのかもしれませんが)。罪が軽く見えるからでしょうかね。

ちなみに調査委員会の報告書では、「日冷食品貿易の董事長兼総経理がニチレイフーズの承認を得ずに、日冷食品貿易に資金負担等を課す契約を締結し、また、個人出資の会社を通じて日冷食品貿易のビジネスを奪い、人的リソースを流用したという不正事案」と表現しています。

ふくおかフィナンシャルグループ傘下の十八親和銀行 また別の行員が顧客から現金を着服

ふくおかフィナンシャルグループ傘下の十八親和銀行は3/24、男性行員(32歳)が顧客から約9200万円の現金を着服していたと公表しました。行員は同日付で懲戒解雇処分となっており、同行は長崎県警に通報したということです。

今年に入って2度目

十八親和銀行は長崎県を地盤とした地銀で、福岡銀行、熊本銀行と共に、株式会社ふくおかフィナンシャルグループの一員です。十八親和銀では2月にも、元行員の男性(58歳)による数千万円の着服が発覚していました(詳細は過去記事をご覧ください)。

新たに着服が発覚した行員は、2020年6月から2024年10月までの約4年間にわたり、1人の顧客から預かった通帳を使って、無断で預金を引き出すなどの着服を繰り返していました。取得した資金はギャンブルや借金の返済に充てていたということです。度重なる行員による顧客資金の着服、さすがにこれはきついですね。

同行の適切な対応が功を奏した事例

今回の事件は、3月上旬に顧客から銀行窓口に相談があり発覚したもの。同行は2月の事件を公表した際、被害総額はまだ確定していないとして、「本件に関するお問合せ先」という窓口を設けて顧客に周知しているんですね。

おそらくこうした顧客への事実の周知、「自身の取引で不審に感じたことがあったらご連絡を」、という姿勢が2件目を炙り出したんだと思われます。そして今回も同様の対応をとっています。事件自体は酷いものですが、同行の危機発生時のアクションは他の金融機関でも参考になると思います。

アンビスホールディングス 老人ホーム「医心館」で不正に診療報酬を請求

アンビスホールディングスが運営する、末期がんや難病患者向け老人ホーム「医心館」のうち複数のホームで、併設の訪問看護ステーションが入居者への訪問について実際とは異なる記録を作り、不正に診療報酬を請求していたとみられると共同通信が報じました。

アンビスホールディングス

老人ホーム「医心館」は全国120カ所に存在し、ホスピス業界の最大手なんだそう。その医心館を運営しているのがアンビスという会社のようで、その親会社がアンビスホールディングスです。で、この親会社が東証プライム上場企業です。この報道を受けて同社株は本日ストップ安まで売り込まれています。

不正請求の概要等

不正請求手口の類型や共同通信の報道のトーン、すべてサンウェルズの時と一緒みたい。同様の手口がサンウェルズ→スーパーコートと続き、とうとう業界最大手にまでたどり着いた格好ですね。なんや、結局みんな診療報酬の不正請求やってるやん。みたいな。

昨日の一部報道について

アンビスホールディングスも本日になって、「昨日の一部報道について」を公表しています。サンウェルズが第一報で「名誉棄損で訴えるぞ」からの「ほぼ全施設でやってました」という格好悪い対応しちゃったからか、アンビスホールディングスは反発なし。「現在事実関係を確認中」だそうです。

すき家のネズミ混入騒動 事実であったことをすき家が2か月経って認める

すき家は3/22、「すき家に関する一部報道について」を公表しました。1/21に鳥取南吉方店で起こっていた、みそ汁にネズミが混入していたことを正式に認めた格好です。ただ、このお知らせには発信人の名前もなく、親会社のゼンショーが作成して、子会社のすき家にホームページ掲載させたもののように見えます。

すき家

すき家は東証プライム上場のゼンショーホールディングスの子会社です。ほかに、はま寿司やココス、なか卯、ロッテリアなどが同じく子会社ですね。ゼンショーホールディングスは国内外食事業として牛丼、うどん、ハンバーグ、回転寿司、コーヒーショップなど、バラエティ豊かな店舗を展開しています。

問題の本質

再発防止として、「異物混入に繋がる可能性のある建物のクラックなどへの対策を講じる」としていますが、これって、現場の状況をしっかり把握できていれば、事前に対処できていたことです。要するに現場の声が本社や親会社に届いていない、ネガティブ情報が上に上がって行かない。まずはこれが問題の本質。

また、再発防止策にある、「提供前の商品状態の目視確認の徹底」というのも気になるところ。目視でより小さな異物(ゴキブリや虫など)って確認できますか?現実離れした本社だけが満足する改善策。現場との乖離があるように見えるこの点も問題の本質だと思います。

さらに、冒頭に書いたように再発防止策を宣言する文書に、発信人がないこと、発生から2か月も掛かってしまったことも、ゼンショーグループのカルチャーを示しているような気がしますね。