内部告発の報復か 介護士雇い止め訴訟

11/27付けの日本経済新聞に、「 介護士雇い止め訴訟 『虐待』内部告発、報復か」という記事がありました。派遣先の老人ホームで施設職員の暴力行為があったとして40代の男性介護士が自治体に通報。直後に雇い止めに遭い、慰謝料や未払い賃金などを求めて派遣会社を訴えたという事案。

結果的には暴力行為は認められず

4年超に及ぶ訴訟の結果、「虐待は認められなかった」という結論に。調査結果については意見する立場にありませんが、一つ気になったことが。派遣会社側が主張していた、「通報前にまず(派遣)会社への報告をするべきだった」という主張について、判決がこれを認めたことです。

派遣会社とはいえ、自社が派遣している社員が派遣先で不祥事を起こしていたという事実はできれば公になってほしくない、というバイアスがかかります。高齢者虐待防止法は、虐待の疑いを発見した段階で行政への通報を広く求めているんだそう。

にもかかわらず、まずは派遣会社へ報告するべきだったという判断はいかがなものでしょう。企業における内部通報で例えるなら、通報窓口の弁護士事務所に通報する前に会社に相談するべきだった。と言われているようなものです。

裁判所としては、虐待は認められなかったという調査結果を前提に、ほぼ和解させたいという意図で、お互いの主張を一部ずつ認めた、というような判決なのかもしれませんが、通報制度の根幹を揺るがすような判断はするべきではなかったと思います。