SMBC日興証券 地裁判決 罰金7億円 、追徴金44億円

SMBC日興証券のブロックオファーに関する相場操縦事件で東京地裁は2/13、金融商品取引法違反(相場操縦)罪に問われた法人としての同社に対して、罰金7億円、追徴金約44億7千万円の判決を言い渡したそうです。

判決の概要

判決は「『市場のゲートキーパー(門番)』として金融取引の公正の実現へ重要な役割がある立場で、非難の程度は一層重い」と指摘したとのこと。判決は大株主から株を買い取って投資家に転売する「ブロックオファー取引」を巡る同社の発注の違法性を検討した結果です。

元幹部らが2019~21年、10銘柄の株価を違法に買い支えるため、自社資金で計約167万株の買い注文を出したと認定したそうです。一連の取引で同社が計約10億9300万円の利益を得たとしています。

判決を受けて

SMBC日興は同日、「判決を重く受け止め関係者の方々に心よりおわびする。改善・再発防止に向けた取り組みを着実に実行し、信頼回復に努める」とのコメントを出したそうな。いつも書いてるけど、同社のこのセリフはまったく信用する気になれません。これまで何度聞いてきたことか。

44億円と確定した追徴金を巡っては、同社は「すでに厳格な社会的制裁を受けているとしたうえで、追徴金はブロックオファー取引で得られた売買差益相当額に限定されるべきだ」と主張していました。おそらく10億円を指してるんでしょう(儲けた分だけ返したらええやろみたいな感じ)。この主張をしていたのはわずか2か月前のこと。

事件を主導した当時の幹部が外資系の出身者だったことを受け、国内最大手出身のエクイティ本部長を招聘したとかってニュースもありましたね。イヤイヤそういう問題じゃないのよ。他から連れてきた人間に頼っちゃうところから変えないと。

島津製作所 調査結果の報告が面白い

島津製作所は2/10、「外部調査委員会からの調査報告書受領及び当社の対応について」を公表しました。子会社の社員が医療機関に納品したX線撮影装置の故障(一定期間が経過すると回路を遮断するタイマーをセットし、自動的に故障するように仕掛けていた)を装って修理をしていた問題ですね。

調査報告書に基づく同社の発表

「不正の可能性を疑うべき事情があり、かつ、正常取引であることを示す証拠や不正の実行可能性を否定する証拠が確認されない事案」として38件の事案(熊本県・宮崎県・鹿児島県・長崎県)を選定した。んだそうです。

日本経済新聞の報道

この件について日経は、「既に判明していた熊本県内の5件の不正のほかに、熊本・宮崎・鹿児島・長崎県の医療機関で合計38件の不正行為が疑われる事例があった。」と伝えています。開示文書と比べると、不正である蓋然性がより高いという印象を与える書きぶりです。

さらに、「新たに不正行為の疑いがあると分かった38件でも、相手先の病院に不正に得た修理費用を返還するなどの補償を実施する。43件の補償額は合計で約9000万円になる見通しだ。」と続けていました。

関係者の処分についても

開示では、島津メディカルの代表取締役社長 減給 10%(1 か月)、常務取締役
技術本部長 常務解職、技術本部長解任とだけ記されているんですが、日経では、「社長は10%減給とし、技術本部長だった常務は常務職と技術本部長を解く。ただ、社長の減給は1カ月で、元常務は取締役には留任する。」と伝えています。

「たった1ヶ月、10%だけかよ」とか、「取締役には残るんかい」みたいな、記者の主観が伝わってくる感じが、なかなか面白いです。

帝人 決算発表してましたね 工場火災の件も初めて

帝人は2/8、「業績予想の修正及び特別損失(連結・個別)の計上に関するお知らせ」を公表しました。前回取り上げたように、オランダの工場で起きた火災事故とそれによるアラミド繊維の出荷制限など。開示すべき情報を適時に開示せず、決算発表で初めて、特損の理由として開示しています。

業績予想の修正の理由

今回の発表では業績予想の下方修正を行っているんですが、その原因が開示してこなかった工場火災による影響です。下方修正の理由、原文のまま引用します。

「マテリアルセグメントにおける欧州拠点での工場火災による生産量低下に伴う販売量減少、中国のロックダウン後の経済停滞に伴う需要減の影響等により、売上高を上記の通り前回発表予想から下方修正することといたしました。」

「また、売上高修正の要因に加え、マテリアルセグメントにおける米国拠点での設備故障復旧後の立上げ遅延による生産性改善遅れ等も影響し、営業利益、経常利益につきましても上記の通り前回発表予想から下方修正することといたしました。」

開示って何?

オランダの工場火災の件、やっぱりね、って感じです。そしてさらに、これは報道もされていなかったと思いますが、米国の工場でも設備故障が起きていたようです。決算発表で結果を知らされるまで、株主、投資家は何も知らなかったわけです。

工場火災や故障等による設備の不稼働、こうした情報が会社の評価や株価へどんな影響を与えるのか。そういった情報が提供されてこそ、投資家は様々な判断ができるわけです。それを会社が、「こんなの大したことないよ、決算発表の時でいいじゃん」で済まされたらたまりません。

楽天 (楽天モバイル) 従業員の不正行為 新たな展開

楽天モバイルの基地局整備事業をめぐる水増し請求問題。当ブログでは楽天モバイルの従業員の不正行為として取り上げてきました。この事件に関して新たな展開です。下請け業者「TRAIL」(東京都港区)が東京国税局から約70億円に上る所得隠しを指摘されたということです。

おさらい

携帯電話基地局整備をめぐり、楽天モバイルが取引先から不正な水増し請求を受けていたという事件。水増し請求の損害は約46億円に上るということで、一部は同社の当時の担当従業員側に還流していたとみられるということでした。キックバックですね。

その際、共謀していたのが、物流会社の日本ロジステックという会社の役員とされていました。昨年の9月当時に判明していたのはこの辺りまででした。

新たな展開

この不正事件に関し、楽天モバイル従業員や日本ロジステック元役員に加え、TRAIL社長の「共謀」があったという情報です。TRAILという会社も運送会社みたいで、日本ロジステックの下請けとして動いていたということのようです。どうやらこの水増し請求で儲ける不正のスキームを考えたのは、このTRAILの社長みたいです。

このTRAILという運送会社、いまでもネットのホームページは残っているんですが、「会社の概要」というページ(会社の住所や社長、役員の紹介などがあったと思われる)だけが消失、「お探しのページは見つかりませんでした」という状態になっています。

不正が行われている間、TRAILの売上は20倍以上に膨らみ、役員報酬ももの凄いことになっていたようです。社長はしこたま儲けたけど、会社自体は近く破産手続きを申し立てる見通しという情報も。逃げたな、、、ってことですかね。

サンリオでも会計不正? 特別調査委員会を設置

株式会社サンリオは2/9、「特別調査委員会の設置に関するお知らせ」を公表しました。同社のライセンス事業におけるロイヤリティを、あるべき月に売上計上せずプールすることで、任意の月に売上計上を行う期間帰属の操作が行われていたということです。

サンリオ

根強い人気を保つ「ハローキティ」を筆頭に、「マイメロディ」、「シナモロール」などオリジナルキャラクターを多数開発してきた会社です。アジア、欧州、北米などに子会社を持ち、世界でライセンスビジネスを推進するキャラクターライセンサーの大手企業。キャラクターグッズを販売するサンリオショップやコーナーを全国展開するほか、東京多摩地区と大分県にテーマパークを運営しています。

不正の概要

同社のライセンス事業における特定の取引先を管理するライセンス営業本部担当者が、ロイヤリティをあるべき月に売上計上せずプールすることで、任意の月に売上計上を行う期間帰属の操作を行っていたことが、今年1月に判明したといいます。

社内調査の段階で見えてきた情報から、当該操作が行われた金額は最大で1億円強ではないかとしています。顧客に夢を売るビジネスだけに、この手の不正は困ったものですね。

「特定の取引先を管理するライセンス営業本部担当者」というふうに、不正行為の範囲がある程度特定されている様子なんですが、社内調査では全貌が見えず、特別調査委員会を設置する。開示ではこんなふうに読めるんですね。取引先の範囲は特定できても、関与した者の特定なんかは社内調査ではしんどいってことでしょうか。もちろん、今後の調査で取引先等が拡大する可能性もありえます。