かんぽ生命 全顧客に意向確認 2900万件

7/15付け日本経済新聞の記事です。「かんぽ生命保険で多数の不適切販売があった問題で、同社と販売を受託している日本郵便が、すべての契約者に保険の契約内容が希望に合っているかなどの意向を確認することが分かった」と伝えています。

手紙の送付や直接訪問を通じて、顧客と一緒に内容を確認する。意向に沿わない契約だったと申し出があれば、契約時の状況を確認し、場合によっては取り消しや保険料の返還などに応じるとしています。

契約件数 2900万件

全契約件数は2900万件に上るとも書かれています。ものすごい数ですね。契約者数とイコールではないでしょうが、意向確認の作業、大変な業務不可になりそうです。かんぽ生命のホームページでは、「かんぽ商品に係る当面の業務運営について」というプレスリリースが出ています。7/14付け、日曜日ですね。

「当面の間(7~8月)は、お客さまからのお問い合わせ、ご訪問依頼に最優先で対応させていただきます。 また、お問い合わせ等のないお客さまに対しても、ご心配をおかけしたことをお詫び申し上げるとともに、今後ご通知等を通じてご契約内容の確認等を行わせていただきます。」とあります。

顧客側から問い合わせや訪問依頼があった場合は、電話や訪問により意向確認等を実施し、なかった顧客に対しては通知等(郵送)で意向確認するということですね。

契約の取り消しや保険料の返還

ホームページのプレスリリースを受けて、日経の取材に応じたんだと思われますが、日経が書いている「意向に沿わない契約だったと申し出があれば、契約時の状況を確認し、場合によっては取り消しや保険料の返還などに応じる」というくだりは、ホームページでは確認できません。メディアには良いこと言って誠意を見せるが、ホームページの顧客向けメッセージには載せないってのはいかがなものでしょう。

また、日経の記事には、「新契約を減少させる影響があるが、販売費用の減少も見込まれるため、現時点で業績予想は修正しないとしている。」と書かれていますが、この業績予想に関するお話もホームページにはないんですね。

「新契約の減少と販売費用の減少が相殺する」という前提もかなりいい加減な話で、9月辺りに業績予想の下方修正を迫られるのは間違いなさそうです。何もかもが後手後手になっています。そして、今後の業績に関する見通し等を、一部のメディアに対してのみ提供するという脇の甘さも、、、。なんだかねぇ、これからもまだまだメディアを賑わせそうです。

インドの人口ボーナス

少し前ですが、日本経済新聞の大機小機というコラムで「アジアは一強から三つ巴へ」という記事が掲載されていました。アジアではこれまで日本や中国のように、「一強」の時代でした。ここへ割って入ってくるのがインドというお話。そこで根拠としていたのが「人口ボーナス」でした。

人口ボーナス

経済の高成長を支える要件の一つとなるのが人口ボーナスです。人口ボーナスとは、「総人口に占める生産年齢(15歳以上65歳未満)人口比率の上昇が続く、もしくは絶対的に多い時期」であるとか、「若年人口(15歳未満)と老齢人口(65歳以上)の総数、いわゆる従属人口比率の低下が続く、もしくは絶対的に少ない時期」を指す言葉です。

生産に携わる人口が増加し、経済の労働供給力が高まることで経済成長につながります。また、高齢者の比率が低いこの期間は、社会保障費なども抑制されます。消費面では働く世代の拡大により住宅費や消費支出全般の増加が見込まれます。ちなみに、人口ボーナス期とは全く反対の時期を、人口オーナス期というんだそうです。

日本における人口ボーナス期は2005年に終了しています。その後先進国の中で最も少子高齢化が進んでいます。代わって中国がアジア一になったというわけですね。あまりに強くなりすぎたため、米国との間で貿易戦争になってしまいました。1980年代に日本がたどった道のりと一緒です。

これからのインド

これまでのところ、中国、インドともに高い成長率を維持していますが、両国の人口動態には明らかな違いがあります。国連の推計によると、インドの人口ボーナス期は2040年まで続く見通しとなっており、豊富な若年層が今後とも経済成長を後押しすることが期待されます。一方の中国は少子高齢化に突入しており、既に2010年から人口オーナス期に入っているんですね。

これから人口ボーナスを享受する人口1億人以上のアジアの国は、インド、バングラデシュ、パキスタンだそうで、特にインドは13億人の人口を抱えており、人口の半数は25歳以下。総人口も2、3年後には中国を抜くと言われています。次の時代、アジアで一番になる資格は十分だと思われます。

日本の9倍の国土を有するインド。コメの輸出は約1000万トンで世界一、自動車生産は5位、鉄鋼生産は約1億トンで日本と同じ。昨年の国内総生産(GDP)はフランスに次ぐ7位でしたが、5年後には現在の日本の水準に追いつくと言われています。年率7%の成長路線にあり、かつ潜在成長力を秘めた魅力的な経済です。

米中貿易戦争とそれに伴う中国経済の減速、米国の利下げに伴う円高におびえる日本の株式市場ですが、それはあくまで目先の話。長期の資産形成を考えるならば、視点を大きく変えることが必要です。人口ボーナスという成長力を図る指標は、長期投資には非常に有効だと思います。

野村證券 → 日本郵政 → 金融庁

野村證券は不適切な情報伝達問題で、4月のかんぽ生命の売出幹事証券から外され、今秋の日本郵政株式の3次売却においても主幹事から外れました。今度は野村を外した郵政グループのゆうちょ銀行とかんぽ生命が不正販売。ゆうちょ銀行とかんぽ生命の件は金融庁から行政処分を受けることになるでしょうね。

野村 日本郵政の意趣返し

野村がかんぽ生命や日本郵政の売出しにおいて幹事を外れたのは、野村不動産の買収交渉が上手くいかなかったことに対する日本郵政の意趣返しでは、、、と言われたことがありました。野村から話を持ち掛けておきながら、野村が途中で降りてしまった。みたいな。

この両社の間には、当初野村が日本郵政を振り回し、その後野村が不祥事で躓くと、日本郵政がやり返す、みたいな面白い展開があったわけです。

日本郵政と金融庁の関係も

しかし、今度は日本郵政傘下のゆうちょ銀行とかんぽ生命が不正な販売や契約という話になってしまいました。新聞等では金融庁が行政処分を行うかどうかに注目。などと言ってますが、間違いなく処分は出ると思います。実はここでも両者に因縁の関係があるんですね。

そう、ゆうちょ銀行が扱う貯金の預入限度額を1300万円から2600万円に倍増した件です。金融庁は、大幅な預入限度額の引き上げは民業圧迫につながるとして、強く抵抗してきました。しかしながら、参院選をにらんだ政治決着の流れに押し切られてしまいました。金融庁が日本郵政にしてやられた格好です。面目丸つぶれですね。

それから半年、今度は郵政がやらかしてしまったわけです。当然金融庁の出番です。まさに意趣返しといった展開になりそうです。

客観的に見ても

野村と日本郵政、日本郵政と金融庁、という意趣返し合戦の構図を見てきましたが、今回のゆうちょ銀行とかんぽ生命の不正は、過去の経緯を切り離し、客観的に見ても、金融庁が日本郵政に行政処分(業務改善命令)を発出する十分なレベルだと思います。日本証券業協会のガイドライン違反に、保険業法違反。ここで処分を行わないと、今後のその他金融機関に対する検査と処分に大きな影響を与えてしまいます。

最近の行政処分事例としては野村證券がありました。野村の不適切な情報伝達の件、法令や規則には違反していません。それでも金融庁は「業務の運営の状況に関し、公益又は投資者保護のため必要かつ適当であると認められるとき」、と判断し、金商法第51条の規定による業務改善命令を出しています。

ゆうちょ銀行 社内調査委員会 調査報告書(スルガ銀行への媒介の件)

一昨日、かんぽ生命、日本郵政の不正・不祥事について書きましたが、その際スルガ銀行への不動産ローンの媒介において、ゆうちょ銀行に不正はないとした社内調査委員会調査報告書について触れました。今日はこの報告書についてもう少し深掘りしてみます。

調査報告書の中身

スルガ銀行がシェアハウス関連融資問題に関する調査結果を公表したことを受け、ゆうちょ銀行としても、昨年8/31に調査委員会(1名の弁護士を除き社内メンバー)を立ち上げ、調査を実施したものです。ゆうちょ銀行がスルガ銀行に対して行ってきた不動産ローンの媒介行為についてですね。

調査結果報告書は今年2/1に公表されました。調査結果についてはここでは詳しく触れませんが、概ね「疑いのあるものはいくつか発見されているものの、不正や不適切な行為に社員が関与した事実は認められなかった」といった回答になっています。

もともと調査対象となる不動産ローン全件が257件という規模ですし、まぁこの件に関する調査結果は妥当なもののように思うんですが、気になるところも少々。

営業推進してないから不正を誘発してない

社員へのヒアリングや、デジタル・フォレンジック調査(社員のメール等を復元して調査する手法)の結果、前述のような報告となっています。が、しかし、案件に関わった不動産業者にはヒアリングを断られたことや、一部の契約者(オーナー)からもヒアリングを拒否されたことから、完全な調査ではない(任意で行う調査の限界があった)としています。

それでも、結果として問題なしとした理由の一つとして営業推進の状況を挙げています。以下に原文のまま引用します。

  • スルガ銀行から当行へ、賃貸併用住宅ローンに特化した営業推進の指示はなかった
  • 当行本社から全店舗への賃貸併用住宅ローンに特化した営業推進の指示はなかった
  • 当行におけるローン関係の営業目標は、過年度の融資実行額(実績ベース)を基準としており、その水準は過度なものになっていない

つまり、スルガも当行も積極的に営業推進しておらず、期初に割り当てる目標(ノルマ)も過大なものではないことから、行員が不正を働く誘因性は小さかった。ということを言っているわけです。

投信不正販売と保険不正契約との関係

この報告書が2/1に公表されていることから、遅くとも1月中には、「積極的な推進をしていないから大丈夫」という視点、逆に「積極的な推進をしている商品は大丈夫か?」という視点が経営陣の中で認識されていたと思われます。

ゆうちょ銀行における、高齢者に対する投資信託の不正販売は、今年2月の社内アンケートで実態が発覚しました。かんぽ生命が当初公表した保険契約の不正については、昨年11月の1か月分に関する調査結果でした。

おそらく、相当きついノルマをかけている投信と保険については、調査してみた方が良いんじゃないか、、、という雰囲気になったのが12月から1月にかけてだったんでしょうね。スルガ銀行絡みのこの調査が、結果的に今回の不正を発見するきっかけになったのかもしれません。

IFAの資産運用アドバイス ファイナンシャルスタンダード株式会社

金融庁のホームページで、7/5、金融審議会「市場ワーキンググループ」第22回の議事録が公表されています。その中で、ファイナンシャルスタンダード社長が自社に関して説明されているんですが、これがなかなか良い話でした。

投機や投資との違い

同社長がこんなことを言っています。「投機は株価チャートやマーケット予想にフォーカスする手法で、投資は企業業績の予想にフォーカスします。一方で資産運用は、自分自身にフォーカスします。自身の収入や支出、保有資産を把握し、それをどう管理していくかです。」

「資産運用のアドバイスって、一生懸命頑張っても、お客様を悲しませてしまうことがある。」何かが違うということで自分たちの価値をゼロから見直し、上記の整理をしたということです。そしてさらに、「資産運用では、長期目標に対して理にかなった分散投資や積立投資が基本。アドバイザーの価値は、相場の予測に基づいた金融商品を提案することではなく、お客様とゴールを共有し、プランを立て、長期的に実行支援すること」。この価値観を明確にしたところから預かり資産が増え始めたとのこと。

「相場の予測に基づいた金融商品を提案することではない」としているところがミソですね。人生を見渡した資産運用であれば、短い周期で変化するマーケット要因はとにかく排除することです。代わって、結婚や自宅の購入、子供の入学・卒業、自身の退職といったライフステージにだけ注目することで、長期にわたる資産形成とそのゴール設定も可能になります。

資産運用のアドバイスに関する考え方、ここまでしっかり持って運営できている会社もあるんですね。感心しました。金融庁がワーキングメンバーに呼んだのも理解できます。

担当者任せにしない態勢

実際の顧客対応についても工夫がされていて、提案の際には担当者以外の他のアドバイザーや専門家も加わった会議により、提案内容を議論する場が設けられているようです。また、投資商品の選定にあたっては、別途専任のポートフォリオマネジャーが設けられています。

担当者(IFA)任せにしない態勢が作られており、その機能もさることながら、顧客保護(投資家保護)の観点からも納得感、安心感のある態勢となっていますね。

ファイナンシャルスタンダード株式会社は現在、預かり資産437億円、役職員18名とのこと。おそらくコミッション型ではなく、フィー型(預かり資産に応じた報酬体系)でしょう。200億円の預かり資産がないとやっていけないと言われる業界だそうですから、経営の方もそろそろ軌道に乗った感じですかね。