インドの人口ボーナス

少し前ですが、日本経済新聞の大機小機というコラムで「アジアは一強から三つ巴へ」という記事が掲載されていました。アジアではこれまで日本や中国のように、「一強」の時代でした。ここへ割って入ってくるのがインドというお話。そこで根拠としていたのが「人口ボーナス」でした。

人口ボーナス

経済の高成長を支える要件の一つとなるのが人口ボーナスです。人口ボーナスとは、「総人口に占める生産年齢(15歳以上65歳未満)人口比率の上昇が続く、もしくは絶対的に多い時期」であるとか、「若年人口(15歳未満)と老齢人口(65歳以上)の総数、いわゆる従属人口比率の低下が続く、もしくは絶対的に少ない時期」を指す言葉です。

生産に携わる人口が増加し、経済の労働供給力が高まることで経済成長につながります。また、高齢者の比率が低いこの期間は、社会保障費なども抑制されます。消費面では働く世代の拡大により住宅費や消費支出全般の増加が見込まれます。ちなみに、人口ボーナス期とは全く反対の時期を、人口オーナス期というんだそうです。

日本における人口ボーナス期は2005年に終了しています。その後先進国の中で最も少子高齢化が進んでいます。代わって中国がアジア一になったというわけですね。あまりに強くなりすぎたため、米国との間で貿易戦争になってしまいました。1980年代に日本がたどった道のりと一緒です。

これからのインド

これまでのところ、中国、インドともに高い成長率を維持していますが、両国の人口動態には明らかな違いがあります。国連の推計によると、インドの人口ボーナス期は2040年まで続く見通しとなっており、豊富な若年層が今後とも経済成長を後押しすることが期待されます。一方の中国は少子高齢化に突入しており、既に2010年から人口オーナス期に入っているんですね。

これから人口ボーナスを享受する人口1億人以上のアジアの国は、インド、バングラデシュ、パキスタンだそうで、特にインドは13億人の人口を抱えており、人口の半数は25歳以下。総人口も2、3年後には中国を抜くと言われています。次の時代、アジアで一番になる資格は十分だと思われます。

日本の9倍の国土を有するインド。コメの輸出は約1000万トンで世界一、自動車生産は5位、鉄鋼生産は約1億トンで日本と同じ。昨年の国内総生産(GDP)はフランスに次ぐ7位でしたが、5年後には現在の日本の水準に追いつくと言われています。年率7%の成長路線にあり、かつ潜在成長力を秘めた魅力的な経済です。

米中貿易戦争とそれに伴う中国経済の減速、米国の利下げに伴う円高におびえる日本の株式市場ですが、それはあくまで目先の話。長期の資産形成を考えるならば、視点を大きく変えることが必要です。人口ボーナスという成長力を図る指標は、長期投資には非常に有効だと思います。