京王観光 JRに対するキセル 調査報告書

連休入り直前の4/25、京王観光の例のキセル事件に関する第二次調査報告書が公表されていました。が、しかし、この件は日本経済新聞は報道していません。「京王観光に1.8億円請求 不正乗車でJR6社」という記事は確かにあったんですが、これはJR各社の側からの公表内容でしかありません。日経さん、これはちょっと不可解な対応ですね。

キセルの調査結果

4/25に京王観光のホームページでひっそりと公表された調査結果。事件の概要は以下の通りです。
(以下引用)
新幹線を利用する大型団体旅行案件の一部について、JRから貸与された同社内のJR券発券システム(マルス端末)にて、乗車している人数より少ない団体乗車券を発券し、実際の乗車人数と発券した団体乗車券との差分については、別途指定席料金込みの回数券を発券することにより旅行を催行し、検札印がない回数券が生じた場合には、旅行終了後、不正に回数券を払戻しすることにより、払い戻し額を利益として計 上していたほか、一部を個人で着服していたものです(引用ここまで)。

大阪支店、大阪西支店、福岡支店の計3支店で、当時の支店長を含む、当該3支店在籍の合計12名が関与しており、そのうち、お金の一部を私的用途に着服していた者が4名いたということです。ちなみに、この会社、全13支店で、従業員500人弱という規模です。

保存されていた最も古いデータである2007年4月以降で算定した不正は、約110件。金額にして約6000万円と公表されています。この結果を受けて、JR各社がその3倍の1億8100万円を請求するということになったわけです。京王観光は5/31までに支払うとしています。

不正を行ったのは自社の社員ではない?

この調査報告の内容で驚いたのは、このような不正を働いたのは京王観光の社員ではないとでも言っているかのような説明がされている点です。再度引用します。

1969年に関西に地盤のある桜菊観光株式会社と合併いたしました。大阪支店は、桜菊観光株式会社の流れをくむ支店です。当該支店の社員は、実態として首都圏や他地域への転勤はほとんどありませんでした。

また、東京やその他の支店からの社員の赴任もほとんどなく、現地出身の社員が内部昇格していく人事を行っていたため、独自の組織文化が維持・継承されてまいりました。前述の強い利益意識と合わせて、本件不正行為やその他の問題行為を生み出す温床となっていたものと考えております。

大阪地区の支店は改編を繰り返して現在の大阪支店へ集約されてきた経緯があるため、この組織文化は大阪地区旧2支店に共通したものとなっておりました。なお、福岡支店につきましては、2015年4月に開設した際に、大阪支店から異動した1名(本件不正行為者)が大阪支店での担当案件を引き続き福岡支店で担当し、本件不正行為を継続していたものです。(引用ここまで)

なんなんでしょうね、これ。合併会社を切っておしまいみたいな。。。長くなりましたので、本日のところはここまで。続きは次回に。

日立 日立化成を売却

4/25、26と日立が子会社の日立化成を売却するというニュースが伝えられました。日立化成は日立が発行済み株式の51.2%を保有する子会社で、グループ内で御三家の一角と言われてきた会社です。5月にも日立化成が新たな出資先を募る入札を始める予定とのこと。日立のIT関連の事業に経営資源を集中しながらグローバル展開を強化するという選択により、売られることになりました。

日立化成の価値

日立の経営戦略は、まぁ理解できるところといいますか、今流行りの流れに乗ったものでしょう。中長期的に見てこの戦略が正しいのかどうかは何とも言えませんが。今の風向きでは妥当な判断ですし、株主や社会からも支持の得られるところでしょう。

しかし、一方で日立化成がとうとう見放されたという面も、実はかなり大きいような気がします。昨年11月、同社の国内7事業所すべてで品質データ改ざんなどの検査不正が行われていたことを公表しました。この件は当ブログでも取り上げています。そして、売却されることが公表された同じ26日には、新たに22子会社で数値改ざんや誤った手順での検査といった不正が見つかったと伝えられています。

いくら子会社だの、グループだのと言っても、さすがにもうこれ以上面倒見切れん。日立側にしてみると、こんな感じが正直なところじゃないでしょうか。

ますます気になる広報の在り方

30年以上にわたり不正が行われ、不正発覚後も不正を継続したり、隠蔽したりと、やりたい放題。データ改ざん等の不正は全7事業所で行われ、不正の対象製品は全127製品中42製品。出荷先は2,000社を超える。と昨年11月に公表した時も、タイミングが絶妙で、見事に日産ゴーン事件にかき消されていました。

そして今回の、22子会社でも同様に検査不正等が行われていたことを公表した日も、日立が同社を売却するというニュースに合わせてます。今回の件は日立も当然タイミングを合わせてるでしょうから、昨年から親会社の指示のもとに公表していたんでしょうね。10連休の直前というのも、忘れてもらうには絶妙のタイミングです。

ガバナンス改革

とまぁ、一通り文句付けましたが、ガバナンス面では吉報です。日立から送り込まれた経営陣や、不正をここまで許すというカルチャーを作ってしまった経営陣。総入れ替えしないと同社のガバナンスは改革できないだろうな、と思っていました。ガバナンス改革という面からは、日立色を一掃する今回の売却はチャンスになりそうです。

売却報道直前の4/24の日立化成株は2,621円。報道二日後の週末26日の株価は2,950円で、329円高。12.6%も上げています。ガバナンス改革後の日立化成を先取りしているようですね。

野村證券 危機の真相

週刊ダイヤモンドで、「野村證券 危機の真相」という特集が組まれていました。当ブログでも4月上旬に野村が発表した店舗2割削減のニュースを取り上げましたが、その後野村に関する話題が多くなってきました。ただコスト削減、縮小していくだけにしか見えなかったこの発表については、首をかしげている関係者は多いようです。で、ダイヤモンドも特集組んで取り上げたということです。

記事が伝えるいくつもの事実

出世レースのトップを走っていたエース級の人材が、続々と退職している。とか、働き方改革で野村流の働き方が否定され、顧客本位の業務運営に舵を切ったせいで収益力は大幅に低下している。そんな事実が並んでいます。その結果、預かり資産が流出しており、ラップへの注力で、営業員が考えることがなくなり、マーケットを語る能力のある営業員が不要になってきている、そんなことも人材流出に大きな影響を与えていそうです。

人材が流出することで収益力が落ち、業績が低迷するから人材が流出する。既にそんな負のスパイラルに陥っているかのような印象を受けます。売り上げを大きく伸ばす青写真がないにもかかわらず、店舗の閉鎖などのコスト削減だけが目立つ今回の構造改革は、どうしても前向きな取り組みに見えないわけです。

中でも心配なのは社員の劣化

これまでに何度か取り上げましたが、ここ3年間だけでも4つの事件で5人の逮捕者を出してしまったという事実。3人は顧客のお金を横領し、2人は麻薬所持で逮捕。ちょっとこんな状況って他で聞いたことないですよね。ダイヤモンドの記事ではこれら以外にも、名誉棄損容疑で逮捕された社員や、傷害の疑いで逮捕された社員もいることを書いていました。すみません、kuniは見落としてました。

昔から野村という会社は決してお行儀の良い会社ではありませんでした。やるときはとてつもない悪をやる会社です。損失補填やらインサイダーやら、世の中が驚くような不祥事がありました。けど、最近の野村の不祥事は少し違います。詐欺や横領、暴行みたいな。まるで地場証券みたいな犯罪です。

一体社員に何が起きてるんでしょう。こればかりは外部からでは窺い知ることができません。記事では野村社員による覆面座談会なるモノも見開き2ページで書かれています。興味のある方は是非ご覧ください。証券界の盟主、野村。海外勢とやりあっていくためには不可欠な存在だった証券会社です。今後どうなっていくんでしょう、目が離せません。

日本郵政 かんぽ株 主幹事 野村證券外し

4/17 日本経済新聞で「日本郵政 かんぽ株追加売却 主幹事野村外しの波紋」という記事がありました。日本郵政がかんぽ株の主幹事等を公表したのが今月4日。なんでまたこのタイミングでこんな記事が掲載されたのか、ちょっと良く分かりませんね。

野村不動産を巡る意趣返し

2年前に日本郵政が野村不動産を買収しようとしたものの、価格面で折り合わず、破談となったことに対する意趣返し。というのが今回描かれているシナリオのようです。もともと野村証券が持ち掛けた買収話だったんでしたっけ。しかし、そんな大人げないことやりますか?おまけに2週間も経ってから蒸し返すような話ですかねぇ。と、思います。

今年1月、もう一つ野村外しがあったようで、こちらはかんぽ生命が初めて発行した劣後債。引受先は大和、みずほ、三菱UFJモルガンの3社だったそうです。このタイミングで2回の野村外しに対してこんな記事が出るというのは、この後に控えている日本郵政株第3次売り出しに向けての牽制という意味でもあるんでしょうかね。となると、野村が書かせた記事ということになりますか。

ただ単に不芳な業者外しじゃないの?

とまぁ、いろいろと背景だとか、誰が書かせているのか、、、などと想像してしまう記事ではありますが、kuniは記事を読んで、ただ単純に「最近やらかした2社を外したんだ」と思いました。で、日本郵政の選定結果、全く違和感ありませんです。

直近3年間で4つの刑事事件、5人の逮捕者を出してしまった野村證券。3人は顧客のお金に手を付けてしまい、2人は社員寮で麻薬所持で逮捕。上場企業全部見渡しても、ここまで逮捕者出している企業はおそらくないでしょう。総合的な判断で主幹事外れて当然です。

記事では触れていませんでしたが、もう1社主幹事を外れてます。野村と同様、これまではグローバル・コーディネーターを務めていた、ゴールドマン・サックス証券です。こちらもマレーシア政府系ファンド「1MDB」の汚職問題に幹部が関与していて、壮大な訴訟に発展しています。こちらも総合的な判断で主幹事外れて当然です。

日本郵政側の判断としては、「不祥事を起こした業者は一定期間、取引先から外す」という普通の判断をしただけだと思います。日本郵政の公式な説明では「総合的な観点から選択した」とコメントしているようですね。実は証券界等では、反社会的勢力に該当する顧客との取引をお断りする際にも、「総合的な判断で」なんていう言い回しをするんですね。

スズキ 完成検査不正

新車出荷前の完成検査で判明していた、検査データの書き換えなど不正事案についての調査報告書をスズキが発表しました。測定データの書き換えや試験環境が正しくなかった事例などの不正は、2018年9月の前回報告より約2500台増えて、1万1070台に拡大。これを受け200万台をリコール(回収・無償修理)して、2019年3月期連結決算で800億円の特別損失を計上するようです。

社長会見に見る無責任さ

新たにブレーキ検査などの不正が発覚。検査数値をかさ上げし、不合格の結果を「合格」としていたとのこと。ブレーキの制動能力が不合格の新車を販売してきたということですよ。ちょっと酷過ぎませんか。燃費なんかの合否とはわけが違います。だからリコールなんでしょうけど。

この会社、徹底したコスト削減で知られるそうですが、一方で品質管理を軽視してきたという実態が明らかになりました。当然、経営陣の責任を厳しく問う必要があると思います。ところが、社長会見では、「あくまで機能や品質などを確保したうえでのコストダウンと理解されるべきところが、誤った理解に結びついたのではないか」との発言も。他人事のような無責任さ。現場の理解に責任を転嫁してしまっているように聞こえました。

また、リコール対象を、「過去3年間に国内で販売して、まだ車検を迎えていない約200万台」としている点についても納得がいきません。要するに車検を一度受けていたら、その車の性能についてはもう自分たちの責任ではない。と言っているように聞こえてしまいます。

隠ぺい体質 経営の責任

「自動車業界の無資格検査は2017年、日産自動車やSUBARU(スバル)で発覚した。スズキは当時「無資格検査はない」と国土交通省に報告していた。その裏側で、検査補助者が単独で実施したことが発覚することを恐れ、書類の差し替えなどで隠蔽していた。こうした実態は課長クラスまで認識され、悪質だ。」

日経も珍しくここまでスズキの悪質性を書いています。200万台のリコールも、800億円の特別損失も、会社と株主の損失。経営者は報酬の減額ぐらいのことで、この難局を乗り切れるとでも思ってるんでしょうか。

ここ最近は老害ばかりが目立っていたスズキの会長。今回の会見等には出てきてないようですが、この人によるワンマン経営にも問題があったと思います。トップダウンで降りてくる徹底的なコストダウンに誰も逆らえない。現場で起きていることが経営に伝わらなかったと社長が言ってましたが、当然でしょう。この構図、スルガ銀行と何も変わらないですよね。