パナソニック 施⼯管理技⼠等の不正取得(その2)

実務経験の虚偽による施工管理技士等の不正取得を公表したパナソニック。グループで500人以上が不正取得していました。今日は8/31に公表された同社グループの再発防止策についてです。

資格取得を過度に重視しない適切な人事制度の構築

施⼯管理技⼠を昇任要件とし、役職上の優遇措置や経済的なメリットを与えるような人事制度を設けていたことが不適切な資格取得の背景となっていた。ということで、こういう再発防止策が出てきたようです。

しかし、この国家資格が突然価値がなくなってしまったかのように映ってしまう制度変更ってどうなんでしょうね。この資格が求める経験や知識、スキルには何の変化もなく、引き続き重要な資格なんじゃないでしょうか。社内で自己矛盾起こしてしまわないですかね。

資格を取る意味を浸透させ、資格という形だけにとどまらない技術者の成長を促していく態勢が必要だと思います。

コンプライアンス意識の向上と教育の徹底

再発防止策には必ず入っている項目ですね。ところがこの中に、「外部有識者を講師として招く等の方法により、定期的にコンプライアンス意識を向上させるための研修・教育を行ってまいります。」というのがあります。

コンプラが破綻するとき、会社や事業所が持つ独特の伝統やしきたりのような要素が強く働いてるものです。そうした会社独特のカルチャーみたいなものを知らない外部講師を呼んでもしょうがないんです。最大公約数的な退屈な話を聞かされるだけ。

外部講師を呼ぶ企業は多いですが、これこそコンプラやガバナンスにおける「現実逃避」でしかありません。パナソニックの再発防止策、以上2点が気になりました。

三菱電機 今年公表した不正を整理してみた

三菱電機は9/1、「当社 UL489 遮断器の第三者認証定期検査に関する件」を公表しました。福山製作所が製造する低圧遮断器の一部であるUL489 遮断器(主に機械装置向け)で、認証機関による検査時に不正行為があったということです。

例によって、「対象製品は全て出荷前に別の検査をしており、安全性に問題はない」ということのようですが。

2021年のまとめ

5月7日  当社電磁開閉器における第三者認証登録内容に関する件
6月30日 当社鉄道車両用空調装置等の不適切検査に関する件
7月30日 業務用空調・冷熱機器ご愛用のお客様へのお詫びと点検のお知らせ
8月17日 当社72/84kVキュービクル形ガス絶縁開閉装置の不適切検査に関する件
9月1日  当社UL489遮断器の第三者認証定期検査に関する件

開示された文書のタイトルを並べてみました。検査不正に関する話題、今年に入って5件目ですね。毎月出てきてる。

このあとは

品質に関わる不正行為について、三菱電機ではこれまで3回(2016年度、2017年度、2018~2019年度)にわたり、同社および同社子会社の点検を実施してきています。にもかかわらず、今年に入ってこれだけの不正が出てくるんですね。

鉄道車両用空調装置等の検査不正については、今年9月に調査結果と再発防止策を公表するとしていました(7/2時点では)。が、その後もこれだけ出てくると、、、かなり予定が狂ってしまったでしょう。さてさて今月中にまとまりますやら。

株式会社アクアライン 消費者庁から行政処分 水道屋本舗

消費者庁は8/31、「訪問販売業者【株式会社アクアライン】に対する行政処分について」を公表しました。同処分を受けたアクアラインは9/2、TDnetで「当社の一部業務に係る行政処分について」を公表しています。が、こちらは非常に分かりにくいモノになってます。

株式会社アクアライン

株式会社アクアラインは「水道屋本舗」として、水まわりの急なトラブルの解消に24時間365日の緊急対応サービスを提供する、「水まわり緊急修理サービス事業」を展開する東証マザーズ上場企業です。

営業所を持たず作業員を自宅から派遣する方式で提供地域を全国に拡大しました。きっと皆さんのお宅の冷蔵庫の壁面に、「水道屋本舗」の名前のマグネット式のチラシが張られてるんじゃないかと思います。

処分の概要

今回消費者庁が行った行政処分は、ザックリいうと「水回りトラブルの修理でうその説明をして高額な請求をしていた」、「トイレ部品が製造中止になっているため全部交換するしかない、などと虚偽の理由を告げて、30万円以上の契約を勧めた」、「クーリングオフの対象なのに対象外と説明した」などというものです。特定商取引法違反ですね。

国民生活センターには、同社についての相談が2018年以降計707件あったといいます。とんでもない商売してますね。TDnetでは開示されていない、消費者庁が示した事例の一つを以下に載せておきます。同社の業者のセリフだけね。酷いっすよ。最後は脅し。

「見積書の裏にクーリング・オフができないと書いてるやろ。」、「消費生活センターに相談してもかめへん。クーリング・オフができないことに変わりはない。」、「私の誠意はどうなるんですか。」、「うちには、クーリング・オフはありません。」、「これからお宅に行かせてもらおか。」

パナソニック 施⼯管理技⼠資格等の不正取得 522人

パナソニック株式会社は8/31、「第三者委員会からの調査報告書受領に関するお知らせ」を公表しました。このところ何社も出てきている実務経験の虚偽による施工管理技士等の不正取得ですね。パナソニックグループで500人以上が不正取得していたとのこと。

施工管理技士

当ブログでも何度か取り上げてきた施工管理技士の不正取得。大和ハウス、東レ子会社の水道機工、西武ホールディングスなどで発覚してきました。

昨年、パナソニックの子会社、パナソニック環境エンジニアリング、およびパナソニックコンシューマーマーケティングにおいて不正が見つかり、第三者委員会が調べていたんですね。子会社での発覚、第三者委員会の調査開始が2020年11⽉27⽇ですので、なんと9か月もかかっています。

不正取得の概要

1981年~2020年に施工管理技士の不正取得が500人、工事現場の技術責任者であることを証明する「監理技術者資格者証」で38人の不正取得が見つかっています。このうち16人は両資格を重複して取得していたようで、人数としては522人ということになりますね。

実務経験等のチェック体制の甘さや、コンプライアンス意識の低さなど、定番の原因が並んでいますが、他社で見られたような組織として違反行為を推進していたような事実は認められなかったようです。

水道機工の調査報告書には次のようなことが書かれていました。「試験会場には、明らかに実務経験を満たしていないと思われる若い女性や、主婦、色白の男性といった受験者がいることなど、同業他社でも同じように受験資格を偽って受けているのだろうという推測が、役職を問わず広がっていた。」

これがおそらく現実であり、今回のパナソニックで打ち止めということにはならないでしょう。

みずほフィナンシャルグループ 金融庁へ改善報告書

日本経済新聞は8/31、「みずほ、新システム総点検 きょう金融庁に報告書」を掲載しました。2021年に入り6度のシステム障害を起こした問題で、新システムの総点検やバックアップが機能しない場合の復旧手順の整備などを盛り込んだ報告書の全容が30日、明らかになった、としています。

システム障害

みずほ銀行では2月末から2週間足らずで4件の障害が発生。その後、みずほが6月に策定した再発防止策を実行に移す途上で、8月20日と23日にも再び障害が起きました。中でも2/28の通帳やキャッシュカードをATMが取り込んで出てこなくなったという障害は驚きでした。

ATMが通帳やキャッシュカードを取り込むトラブルは合計5244件、自行ATMの7割超に相当する4318台が稼働を一時停止ました。インターネットバンキングの一部取引もできなくなったてましたね。

報告書

で、8/31に金融庁に報告書を提出するということなんですが、原因はなお突き止められていないんだとか。「点検を検討する」とか、「さらなる調査・確認を進めていく」とかとか。この報告書は中間報告みたいなもんですね。

SNSのとある書き込みで、「それにしても、金融庁に報告する前にここまで内容が漏れる(漏らしてる)のも、どうかと思うが」というのを読みました。たしかに昔からリークの非常に多い会社ですが、今回はどうなんでしょうね。

通常、金融庁が報告書を徴求・受領する際は、あらかじめドラフトを提出させ、金融庁が納得してからの正式提出となります。ドラフト段階でいろいろと指導が入ります。つまり、提出の前段階で内容を把握しているわけで、日経に報告書の内容をリークしたのは金融庁という可能性も結構高いんじゃないかと。