総会屋に謝礼 御園座社長を書類送検

3/16付け日本経済新聞は、「総会屋に謝礼渡した疑い 『御園座』社長ら書類送検」と報じました。株主総会の円滑な進行に協力してもらう見返りに、総会屋に観劇券を渡したとして、愛知県警が、会社法違反(利益供与)の疑いで、「御園座」の社長と50代男性課長を書類送検したということです。

御園座

御園座は名古屋市で歌舞伎公演やミュージカル、各種演劇、歌謡ショーなどを上演する劇場事業を手掛ける企業。劇場内では来場客の便宜を図るため、プログラム、飲み物、お土産などの販売も行うそうです。

中部地方にゆかりのある企業や松竹などが大株主に名を連ねる、名古屋証券取引所2部に上場する企業です。前年度はコロナの影響で赤字転落。今期も苦しんでいるようです。

総会屋

何か久しぶりに見るニュースです。総会屋なんてまだ居るんですね。総会屋とは、日本において、株式会社の株式を若干数保有し、株主としての権利行使を濫用することで脅しをかけ、会社等から不当に金品を収受、または要求する者や組織を指します。

会社法では、株主の権利の行使に関する利益の供与(会社法第120条)として規制されています。多分若い人は総会屋なんて馴染みがないでしょうね。

別の会社が絡む会社法違反事件で起訴されている総会屋に、議事の円滑な進行に協力する謝礼として、同社劇場の観劇券2枚(計4万円分)を供与した疑いだそうです。金額ショボいですけど。

同社は3/15に適時開示しており、その株主が総会屋との認識は全くなく、そもそも株主総会の円滑な進行を依頼した事実はないとしています。なんだかよく分からない事件ですね。

アジャイルネットワークス ダイワボウホールディングス アップデート

先週は、過去に取り上げた不正事案に関する逮捕者が立て続けに出ましたね。アジャイルネットワークスとダイワボウホールディングスの事案です。両社ともに逮捕の事実を開示しています。とうとう逮捕、、、逮捕の事実を知った企業側の人達ってどんな気持ちなんでしょうね。

アジャイルネットワークス

アジャイルネットワークスは3/10、「当社元役員の再逮捕に関する報道について」を公表しました。既に2/14に業務上横領の疑いで逮捕されていた元CFOの石動力氏。今度は特別背任の疑いで再逮捕ということらしいです。同社はあくまで報道について報せるのみで、事実関係には言及していません。

一旦事案に関しては終結したわけだけど、こうした元自社役員が逮捕されるといった報道、同社の役職員はどう感じているんでしょうね。再発防止策を粛々と進めているんでしょうが、同社が再生できるのかどうか、こればかりは分かりません。

ダイワボウホールディングス

ダイワボウホールディングスは3/8、「子会社元従業員の逮捕について」を公表しました。旧ダイワボウノイ株式会社の元従業員が、3/8付で大阪府警察本部に逮捕されたとの事実を確認したということです。

2月下旬に刑事告訴していたものの、警察の捜査に支障をきたすおそれがあることから、逮捕まで公表を控えていたようです。同社も既に実施している再発防止策を継続して推し進め、その実効性を高めることで、再発防止に努めていくとしています。

マジで両社の役職員の皆さんはかなり肩身の狭い思いのはず。悪いことしたヤツはそれぞれ逮捕された奴らなんだけど、自社を再生していくのは残された人たちです。二度とこんなことが起きないよう、頑張ってほしいものです。

イー・ガーディアン グレスアベイル 元社長が逮捕

イー・ガーディアンの子会社だったセキュリティー会社グレスアベイルの元社長、沢井容疑者が詐欺容疑で逮捕されました。資金繰りに窮していた自社の運転資金を捻出するため、売掛債権を現金化する「ファクタリング」と呼ばれる仕組みを悪用していたとのこと。

イー・ガーディアン

イー・ガーディアンは2020年に約3億7000万円を投じてグレスアベイル社を100%子会社化。2021年8月に会社を再編する手続きを進めていたところ、不正が発覚しました。その時点で沢井容疑者は解任されています。

イー・ガーディアンは調査委員会を設置し、沢井容疑者が不適切な資金支出や不正に売掛債権を現金化する取引を繰り返したことなどにより、不正支出が計8000万円超に上ったとする報告書も公表しました。

ただ、調査委員会は同容疑者に関して一切聴取等ができていない様子でしたね。既に警視庁捜査2課が動いていたということでしょう。

逮捕容疑

イー・ガーディアンは今回の逮捕に対して開示等は一切していません。報道によると、同容疑者は昨年5月~7月、実在する企業2社に対してネットワーク監視業務やシステム構築費などの名目で1億数千万円の売掛債権が存在するかのように装い、都内の金融関連会社に売却。約1億円を詐取した疑いが持たれています。

だまし取った資金は、グレスアベイル社の運転資金や自身の借金返済などに充てていたといいます。警視庁は同容疑者が複数の会社と同種の取引を繰り返していた疑いもあるとみているようで、まだまだ余罪が出てくるのかもしれません。

HIS(エイチ・アイ・エス) 子会社で不正アクセスによる情報漏えいも

HISは2/8、「子会社ファイルサーバへの不正アクセスによる個人情報流出の可能性に関するお詫びとお知らせ」を公表しました。っていうか、こっそりと公表していました。というのが正しいかもしれません。適時開示は行われておらず、kuniも気付きませんでした。

GoTo補助金の不正受給

連結子会社ジャパンホリデートラベルと、ミキ・ツーリストの2社において、GoToトラベル事業の受給対象とならない取引が判明したHIS。両社併せて、合計6億8300万円の不正受給が発覚したという事件でした。

この事件が最初に開示されたのが、昨年の12/9。事案の発覚と調査委員会の設置を公表しました。その後、12/24に調査委員会からの報告を公表して、この件は一件落着ということになっていました。

子会社への不正アクセス

そして今回、ベトナム現地法人において、ネットワークに対する第三者による不正アクセスを受けたことを確認。最大1,846名の個人情報が不正に引き出された可能性があると判明しています。

ベトナムと聞くとやや他人事のようですが、引き出された個人情報は、2016年8月〜2020年2月の期間に、エイチ・アイ・エスを利用してベトナムへ出発した顧客等なんですね。日本人の個人情報がメインってことです。なんで正式に開示しないんかなぁ。

不正アクセスを受けたのが、昨年10/25。専門家による解析で情報漏洩の可能性が確認されたのが、12/20だそうです。そう、まさに補助金の不正受給の調査と並行して起きていたってことですね。ダブルで不祥事の公表、、、は避けたかったってこと?

グレイステクノロジー 証券取引等監視委員会が課徴金納付命令

証券取引等監視委員会は2/22、「グレイステクノロジー株式会社における有価証券報告書等の虚偽記載に係る課徴金納付及び訂正報告書の提出命令勧告について」を公表しました。グレイステクノロジーに2,400万円の課徴金納付命令と訂正報告書の提出命令を出すよう金融庁に勧告しました。

おさらい

東証1部上場で、産業機械のマニュアル作成を手がける同社。2016年3月期~21年3月期に、発注書や受領書を偽造するなどして、架空の売り上げを計上。計約12億6千万円の利益を水増ししていました。この影響で四半期報告書を提出期限内に提出できなかったとして、2月末での上場廃止が決まっています。

課徴金納付命令

こうしたことを受け、架空売り上げの計上など粉飾決算があったとして、金融商品取引法違反容疑で、課徴金2,400万円の納付と、有価証券報告書などの訂正報告書の提出をさせるよう金融庁に勧告しました。金融庁も近く処分を確定すると思われます。

2,400万円って、そんな小さな金額で済ませちゃうの?という疑問を持った方も多いと思います。ただ現在の金商法ではこれが限界。法に定める金額どおりです。

株主は

国庫に納めさせる金額は上記のとおりですが、問題は粉飾決算が原因で損失を被ることとなった投資家(株主)です。2020年末辺りでは4,000円以上に買われていた同社株。昨日の終値はわずか20円。1,000株を400万円以上で買った投資家の現在の評価額は2万円です。

これに関しては経営陣の不法行為を問う株主代表訴訟などで戦っていくことになります。株式投資にはリスクがつきものですが、粉飾決算は論外。経営陣や取引所、主幹事証券や監査法人の責任追及がこれから始まります。