従業員が本業の損失を不正により補填する時

先日、当ブログで取り上げたNTP名古屋トヨペットで発生した従業員による不正行為の事件。同社からの開示情報が少ない中、日経では「一部は自身の口座にも振り込ませていたといい、勤務先で自身が生じさせた未回収金を穴埋めしようとした」と報じられていました。

ちょっと気になった動機

従業員が不正を働き資金を得る際のもっとも一般的な動機は、遊ぶ金が欲しい、抱えてしまった借金をどうにかしたいから、というもの。ギャンブルや主に異性を対象とした交遊(風俗やね)のためにお金が必要だったから、という理由がほとんどです。

しかし、今回のNTP名古屋トヨペットの事件では、「一部は自身の口座にも振り込ませていたといい、勤務先で自身が生じさせた未回収金を穴埋めしようとした」とされており、多くの不正の動機とはちょっと違う感じです。もっとも、「一部」という表現で限定しているので、その他はギャンブル等に費消されていた可能性はありますが。

自身が生じさせた未回収金を穴埋め

本業で出してしまった損失を他のところで不正にお金を得て補填するという行為の裏にどのような状況があったんでしょうね。正規の業務で失敗して会社に損失を出させてしまう。どんな会社でもありうることです。

それを不正(犯罪)を犯してまで埋め合わせなければならないというプレッシャー。なにがなんでも会社の利益を上げ続けなければならないという雰囲気やそれを醸成する態勢やカルチャー。ここにメスを入れておかないといけません。くれぐれも行為者だけを処分して終わり、なんてことのないよう。

NTP名古屋トヨペット 車の架空取引で元従業員が逮捕

NTP名古屋トヨペットは8/20、「当社 元従業員の詐欺容疑での逮捕について」を公表しました。元従業員は、付き合いのあった自動車販売会社社長に、架空の取引を持ちかけ現金をだまし取った可能性があるとして詐欺の容疑にて逮捕されました。

NTP名古屋トヨペット

NTP名古屋トヨペットは、愛知県を主な販売エリアとする、トヨタ自動車の正規ディーラーです。2020年からはトヨタ車全車種を取り扱っています。同社は上場企業ではありませんが、トヨタグループということで取り上げました。

不正の概要

当該元従業員(当時は課長)は、業者やその代表者個人に対して、取引に介在することで利益が得られるとして、実体のない取引について送金額や送金先を提案するなどして業者間の金銭の振込行為に関わっていたといいます。

名古屋市緑区にある自動車販売会社に対し、自動車売買の仲介を持ちかけ、車の仕入れ代金を立て替えれば約1割上乗せした額が口座に振り込まれるなどとうそを言って、約9900万円をだまし取ったというのが逮捕容疑。

このような手口で約2年間で十数社と約500回の架空取引を繰り返し、これらの取引による被害総額は14億5千万円になるということです。容疑者はだまし取った金の一部を自身の口座に振り込み、正規営業で出した損失を補てんするなどしていたとみられるとのこと。この動機、考えようによってはかなり怖い。

東急リバブル 従業員が2万5,406名の個人情報を持ち出し不正利用

東急リバブルは8/7、「弊社元従業員による個人情報の不正な持ち出しに関するご報告とお詫び」を公表しました。元従業員が退職、同業他社へ転職するにあたり、不動産登記簿に記載された情報をデータ化した社内資料を、不正に持ち出していたということです。

東急リバブル

東急リバブルは、東急や東急不動産などグループ各社をはじめとする不動産会社からの新築販売受託業や不動産仲介業を中心に、不動産ソリューション事業や自社ブランドによる分譲マンションの企画販売も行う企業。2013年に東急不動産ホールディングス株式会社の完全子会社となり上場廃止となっています。

不正の概要

元従業員が退職し、同業他社へ転職するにあたり、不動産登記簿に記載された情報をデータ化した社内資料を不正に持ち出し、その一部をダイレクトメールの送付に使用していました。

持ち出されたのは東京都港区所在の一部マンションの不動産登記簿に記載されている所有者の ①氏名②住所 ③所有のマンション名、部屋番号および所在地の情報(計 25,406 人) をリスト化したデータだそう。調査により、ダイレクトメールの送付以外に利用された事実がないことを確認しているといいます。

押収した元従業員のパソコンを調べただけみたいだけど、ここまで言い切れるものなのか。ここは少々疑問に感じます。ちなみに、kuniの自宅にも東急リバブルからのDMが届きます。住所や氏名など、この情報はどこから手に入れたのかな? おそらくこの業界では似たような事案がいくらでもあるんだと思います。

ピジョン株式会社 中国子会社で従業員の不正行為(その2)

ピジョン株式会社は8/14、「当社グループ子会社元従業員による不適切取引の疑いについて」を公表しました。中国の同社グループ子会社において、元従業員が費用や資産に関する不適切な取引を行ったと疑われる事象を調査した結果。事実上の終結宣言です。

調査結果

元従業員による固定資産及び物品等の発注 ・支払業務において、架空発注や転売等の不適切な取引が 2019 年から 2024 年までの間に行われていたことが判明しましたが、他に関与した者はおらず、いずれも単独で行われた個人的な不正であることが認定されたということです。

この事案による同社業績への影響額は、固定資産除却損:392 百万円、税金影響額 :164 百万円であり、当第 2 四半期決算に各金額を計上しております。だそうです。

これっで終結?

どの子会社のどういう立場の従業員が、どのような手口で不正を働いていたのか。この開示では全くわかりません。固定資産除却損:392 百万円 というのが不正により生じた会社の損失ということなんでしょうか。これほどの金額であれば何が起きていたのかもう少し説明する責任があるのでは?

組織的に行われていた不正を中国の名無しの従業員の不正ということにして帳尻合わせたんじゃないの?みたいな憶測も出てきそうです。同日延期していた決算も発表しており、調査報告書も開示する気はなさそうです。

ピジョン株式会社 中国子会社で従業員の不正行為が発覚

ピジョン株式会社は8/8、「当社グループ子会社元従業員による不適切取引の疑い及び2024 年 12 月期第 2 四半期決算発表の延期について」を公表しました。決算発表を当初予定していた8月8日から延期し、14 日へ変更することになったようです。

ピジョン株式会社

ピジョンは育児用品の大手。主力商品の哺乳器では国内で約9割と高いシェアを持ち、スキンケア商品、おしりふき、母乳パッド、ベビーカーなど幅広い商品を扱っています。介護用品、保育所運営などの子育て支援サービスも展開し、中国を中心にアジア、欧米など海外進出も積極的に進める東証プライム上場企業です。

不正の概要

7 月上旬、中国の同社グループ子会社において、元従業員が費用や資産に関する不適切な取引を行ったと疑われる事象の存在を認識し、直ちに社内調査を開始したということです。調査及び諸手続を完了させるまでには更に一定期間を要する見込みであることから、決算発表延期ということに。

開示された不正行為に関する情報は以上で、行為の詳細や金額などは不明です。同社の中国子会社は上海に2社と江蘇省常州市に1社、このうちのどれかと思われます。海外子会社での不正というと、経理担当責任者による会社資金の着服と棚卸資産の虚偽計上なんてのが多いですね。あと、自分の親族やその経営する会社とつるんで・・・なんてのも。

数日間だけの発表延期としていることから、社内調査がある程度進んでいるような様子です。特別調査委員会等の設置は行わず、社内調査で完結しようとしているようですね。