昨年度の会計不正 公表31社 前年度比6社増

日本経済新聞は6/28、「会計不正、公表31社 昨年度、6社増 役員関与が半数」と報じました。もっと増加してるんじゃないかって感じてましたが、6社多いだけということです。会計不正が原因で上場廃止に至ったグレイステクノロジーみたいな事案もあり、酷い年度に見えてたのかな。

日経より

会計不正を公表した社数は、20年3月期が46社。21年3月期は大きく減少して25社。そして22年3月期がやや増加して31社ということです。役員が主体的な関与者だったのは15社と前の期の9社から増加しています。

この記事は日本公認会計士協会が集計したデータに基づくものです。同協会では粉飾決算と会計不正の2種類に分類して公表しているんですが、「粉飾決算」を財務諸表の利用者をだまそうと虚偽の記載をすること。「会計不正」を会社のお金を私的な目的で使うなどの資産流用と定義して集計しているそうです。

粉飾決算と会計不正、やはり明確な定義はないということなんでしょうね。ただし、少なくとも「不適切な会計処理」なんていう用語は出てきませんよ。不適切じゃなくて、、、不正なんです。

上場会社等における会計不正の動向(2022年版)

これが日経が引用していた、日本公認会計士協会のレポート名。日本公認会計士協会のホームページで見付けました。ただ、「著作物の転載を希望される方は、転載許可申請書を作成のうえ・・・」などと書かれていて、引用すら躊躇してしまいます。

一つだけ引用。内部通報により発覚したケースについては、2018年3月期から2021年3月期の4年間における平均は15.7%だそうです。ところが、2022年3月期における割合は15.4%と微減しているんですね。ここ数年内部通報制度の実効性を向上させようという動きがあったにもかかわらず、です。

株式会社ダイイチ 第三者委員会の調査報告書を公表

ダイイチは6/24、「第三者委員会の調査報告書受領に関するお知らせ」を公表しました。社外からの指摘により、一部不適切な会計処理が行われていたことについて調査してきた結果ですね。「社外からの指摘」というのは札幌国税局による税務調査だったようです。

通常とは逆の会計不正

ダイイチは北海道帯広市や、旭川市、札幌市などにおいて、食料品主体のスーパーマーケット事業を21店舗展開している企業でした。

よくある会計不正ってのは、今期業績が芳しくなく、翌期以降の売上等を先行計上することで儲かってるように見せるというパターン。同社では真逆で、売上原価や経費の先行計上など、今期の利益を抑えて次の期の利益を大きく見せる(確保する)という会計不正なんですね。

2014年9月期にはこうした会計不正が行われており、2021年9月期まで毎年継続して行われていました。これらは経営陣(取締役レベル)が主導して行っており、その指示に基づき全社的に行ってきたもののようです。調査委員会が調査している最中に電子データを削除し、これを復元不能にするよう工作までしていたと。

不正の動機

会計不正を行ってきた動機というのも珍しいです。報告書では、「株主に対して右肩上がりの業績の推移を示すことにより、経営の自由度を高める」ためということです。つまり、株主からの経営に対する干渉を排除したいという自己保身的な動機だったということなんですね。

最近、四半期開示について議論が盛んになっていますが、ダイイチにおいても似たような弊害が出ていたということかもしれません。毎期毎期利益をあげなきゃ株主が黙ってない。そもそも企業経営なんて長期で語るべきものでしょうにね。

北弘電社 証券取引等監視委員会による課徴金納付命令

証券取引等監視委員会は6/21、「株式会社北弘電社における有価証券報告書等の虚偽記載に係る課徴金納付命令勧告について」を発出しました。売上の過大計上及び売上原価の過少計上等の不適正な会計処理を行ったためですね。課徴金額は600万円と少額ですが。

北弘電社

北弘電社は北海道地盤の電気設備工事会社。ビル・建築物の電気設備工事を手掛ける屋内配線工事を主力に、送電線工事などを行う電力関連工事などを手掛けています。三菱電機の持分法適用会社で、札幌証券取引所上場企業です。

従業員数は217人。三菱電機株式会社が発行済み株式の27.5%を有する大株主であり、取締役5名のうち3名、監査役3名のうち2名が、いずれも三菱電機の出身という企業です。

おさらい

会計監査人である新日本監査法人から、工事原価総額の見積変更の適時性についての疑義が指摘され、調査の結果、原価の付け替えなどが発覚。取締役会における監督機能の不全を露呈してしまいました。まぁ、ほとんどの取締役が不正のデパート三菱電機の出身者ですからねぇ。

不思議と読まれる記事

監視委員会が課徴金を、、、というくらいですから、もうかなり時間が経過した事件ではあります。が、当ブログでは当時取り上げた記事がかなりたくさん読まれているんですね。株価は年初来安値を更新中ですし、地元の株主には心配の種なんでしょうが、なんでこんなに読んでいただけてるのか。

このブログのアクセス状況を見るにつけ、北弘電社で新たに不正等が表面化するのか。内部の方が気になさってるのか、、、などと気になってしまう今日この頃です。中の人、何か起きてることをご存じでしたら教えてください。

東京産業 不適切な会計処理 特別調査委員会を設置

東京産業は5/26、「特別調査委員会設置に関するお知らせ」を公表しました。この開示で初めて知ったんですが、5/13には「特別損失の発生に関するお知らせ」を開示しており、この中で同社の一部取引において不適切な売上処理が行われていたことが判明したことを発表していました。

東京産業株式会社

東京産業は電力および環境、化学業界などに各種機械、プラントなどを販売する三菱グループの機械商社です。中国や欧州など海外展開にも注力していて、筆頭株主は三菱重工業の子会社で火力発電システム事業を手掛ける三菱パワーです。東証プライム市場上場企業です。

不適切な会計処理の概要

外部公的機関による調査の過程において、取引の実体に疑義のある売上が存在するとの指摘があり、これを受け社内調査を実施したところ、販売取引の一部において計上根拠の確認できない取引があったほか、一部の仕入先に対して実体の伴わない送金を行っていたことが判明したということです。

5/13開示の「特別損失の発生に関するお知らせ」では、実体が伴わないと考えられる売上高および売上原価についてはこれを取り消すとともに、送金済の金額については回収可能性が現時点では見込まれないことから全額貸倒引当金を計上し、貸倒引当金繰入額を特別損失として処理したとのこと。

計上した特別損失は528百万円。決して小さくない金額ですね。単なる不適切な会計処理ではなく、架空取引やキックバックによる従業員の不正行為とかの可能性もありそうです。開示の中にある「送金した金額の回収および調査に基づく法的対応を図ってまいります。」というくだりを見ると、やはり従業員の不正行為と認識しているのかもしれません。

三協フロンテア株式会社 不適切な会計処理が発覚

三協フロンテア株式会社は5/17、「不適切な会計処理の判明と 2022 年 3 月期決算発表の延期に関するお知らせ」を公表しました。2022年3月期を含む複数事業年度に渡って、不適切な会計処理が行われていたということです。これも不適切ではなく不正のようです。

三協フロンテア株式会社

三協フロンテアは、ユニットハウスの製造と販売、レンタルが主力。建設・土木業界を中心に、工期が短く増減築が容易で、空調・給排水などのインフラも一体化した仮設建築物であるユニットハウスを提供する企業。他にも立体駐車装置の製造なども行う東証スタンダード市場上場企業です。

不正の概要

今年2月より開始された税務調査の過程で、同社の複数の営業拠点において不適切な会計処理の可能性を認識。直ちに関係者に対して行った調査の結果、営業担当者による着服、原価の付け替え、協力業者の下でのプール金の設定、売上の先行計上という、4つの類型を原因とする不適切な会計処理が複数事業年度に渡って行われていることが判明しました。

これら不適切な会計処理の内容を明らかにするとともに、同種の事案が発生していないかを明らかにするため、外部の弁護士・公認会計士による調査委員会を設置。既に厳格な調査を行っているということです。従業員の不正行為から会計不正まで、かなりいろいろ出てきそうですね。

複数事業年度に渡っていること、4つの累計が現時点で発見されていることから、調査期間や同社に与える負のインパクトも、相応のものになりそうです。こうしたことから3月期決算発表も当然延期となっています。そのため5/18の同社株価の方もストップ安(4,215円、700円安)となっています。