親子上場の意義 東証が開示要請 1000社超が対象

日本経済新聞は12/11、「親子上場の意義、東証が開示要請 1000社超が対象」と報じました。親会社が企業グループとしての利益を優先することで子会社に不利益になるような経営を進めても、子会社の少数株主がその決定を覆すのは難しいなどの問題が指摘されてきました。

親子上場

東京証券取引所は親子関係や持ち分法適用関係にある上場会社1000社超に対して12月にも、企業統治に関する情報開示の拡充を求めるということです。企業側は上場子会社を持つ意義や、子会社の独立性確保のための取り組みなどの説明が必要になります。

少数株主の利益を脅かしかねない親子上場などには相応の説明責任を求め、市場全体の魅力向上につなげるのが目的だそうです。まずは投資家に対してしっかり説明しなさいということなんですね。

PBR1倍割れ

今年3月末、東京証券取引所はPBR(株価純資産倍率)の低迷する上場企業に対して改善策を開示・実行するよう要請しました。それ以降ご存じの通り、PBR1倍割れ企業はそれを何とか改善しようと、自社株買いや増配などの対策も行い、ある意味今年の上昇相場トレンドを作ってきましたよね。

その経験から、今回の親子会社に関する説明責任を求めるという施策が次の相場トレンドを作るのではと考える向きが少なくないようです。親子上場を解消するための親会社によるTOBやらMBOも増加しそうです。もちろん、親会社が子会社株を売却してしまう可能性もありますが。

日本証券業協会 三木証券に過怠金8,000万円

日本証券業協会は11/15、「協会員に対する処分及び勧告について」を公表しました。処分を受けたのは三木証券。高齢者への外国株式の販売を巡り、不適切な勧誘行為や法令違反があったとして、過怠金8,000万円を課したということです。

三木証券

三木証券は上場企業ではありません。資本金は5億円、支店数は7店舗、従業員150名程度の小さな証券会社です。調べた限りではどこかの大手証券会社の系列でもなさそうです。大株主にもみずほ銀行が入っているくらいです。

30年前の営業スタイル

三木証券は80~90歳代の少なくとも顧客18人に対して、外国株取引ができるほどの認知判断能力を持ち合わせていないと認識しながら、必要な説明をせずに取引をしていたということです。顧客らは会話がかみ合わなかったり、数分前の会話を覚えていなかったりする状態だったと。

いやぁ、これ、認知症の高齢者をダマして手数料稼ぎ。相応の理解力や記憶力があったとしても、高齢者との取引で仕組み債や外国株なんて既に原則ご法度ですよ。ここまでの酷い営業させてる会社がまだあるんですね。

勧告・行政処分・過怠金

この事案、今年9月に行われた証券取引等監視委員会の同社に対する検査で見付かったもの。9/15に検査結果に基づく勧告がされ、10/6には関東財務局から行政処分を受けています。そして今回の日証協の処分(課徴金8,000万円含む)です。

中小証券の中にはまだこういうの残ってるんでしょうね。監視委員会の資料には、「代表取締役社長自らが主導して、コンプライアンス部門の人員を削減している・・・」なんて話も出てきます。

フェローテックホールディングス 大泉製作所株式に対する公開買付けを公表

フェローテックホールディングスは11/10、「株式会社大泉製作所株式(証券コード:6618)に対する公開買付けの開始に関するお知らせ」を公表しました。このTOBに関する公表は、同日の15:30に行われています。

フェローテックホールディングス 大泉製作所

フェローテックは、半導体・FPD(フラットパネルディスプレイ)製造装置向け製品と電子デバイス製品の製造販売・サービス提供を行う企業。コア技術として、磁性流体(磁石に反応する液体)とサーモモジュール(電流によって発熱・吸熱を制御する半導体素子)を持っています。

一方でTOBを仕掛けられる大泉製作所は、熱・温度変化によって電気抵抗値が変化する半導体セラミックスのサーミスタを利用した各種電子部品のメーカー。サーミスタ温度センサのリーディングカンパニーです。

フェローテックは大泉製作所の株式を既に51%保有しており、今回発行済株式の全てを取得し、大泉製作所を完全子会社化するという情報だったんですね。公開買付け価格は1,300円です。

ド派手なインサイダー取引

11/10の引け後(15:30)に1,300円でのTOBを公表。ところが11/10の取引時間中に株価は急騰し、この日の終値は1,035円(+150円のストップ高)です。さらにそれ以前の数日間も不自然に上昇(150円ほど)しており、明らかにどこからかTOBの情報が洩れている様子がうかがえます。

どこから漏れたんでしょうね。これだけド派手なインサイダー取引も珍しいです。既に各証券会社には、自主規制機関や監視委員会から問い合わせ(買付顧客のリスト提出要請)が来てると思います。

株式会社プロルート丸光 虚偽有価証券報告書提出事件の告発

証券取引等監視委員会は10/31、「株式会社プロルート丸光に係る虚偽有価証券報告書提出事件の告発について」を公表しました。同社の株価をつり上げる目的で、子会社化する会社の価値を過大に算出し、虚偽の情報を開示したということらしいです。このことを受け2021年に同社株は200円近辺から700円まで急騰しています。

プロルート丸光

プロルート丸光は衣料品、服飾雑貨、寝具・インテリア商品などを全国の衣料品店、専門店、チェーンストア、ECショップなどに実店舗およびオンラインストア、アプリなどで販売する総合衣料問屋です。東証スタンダード上場企業ですが、株価は今年に入って100円を割れており、直近では20円まで売られています。

事件の概要

実態のないアーティストのグッズ販売会社の価値を過大に評価して株式交換による子会社化を進め、19年12月に「将来収益に高い信頼性がある」などと売上高予想や事業内容について虚偽の内容を開示していました。

最終損失が1億円に迫る状況で、架空売上を計上する方法により5,000万円近い利益が出ているような開示をして株価をつり上げています。

告発を受けて東京地検特捜部は11/1、同社の筆頭株主だった経営コンサルティング会社「ウェルスブラザーズ」代表を金融商品取引法違反(風説の流布、偽計)容疑で再逮捕しました。さらに、法人としてのプロルート社と同社元社長、前社長、同社の子会社だったグッズ販売会社の男性役員2人を同法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の罪で起訴しています。

妙に納得した話 みずほ証券エコノミスト 上野氏の説明

10/16付けの日本経済新聞に、「あり得る緩和への回帰」という記事がありました。日本においても今後金利が上昇するだろうという大方の見方に対して、異論を唱えたみずほ証券エコノミストの上野氏の意見です。

記事の前提

来年の春辺りには、、、との予想が多い日銀によるマイナス金利政策の終焉。さらにゼロ金利も解除するなど利上げを重ねることになると、変動型住宅ローンの基準金利までも上昇し始めるのでは?、というお話に対して、同氏が反論というか、別の切り口で意見されている記事です。同氏の解説をまとめると次のような感じ。

上野氏の指摘

「冷静に考えると、原油高は再生可能エネルギーへのシフトが続いていくと終わる。米利上げ・金利高止まりもいつまでも続くはずはないから、円安圧力もいずれ後退する。」さらに、「人手不足による物価高も続かない。人口減少は供給だけでなく消費など需要も減らすはずだし、供給面の制約も外国人労働者の受け入れ積極化や人工知能(AI)活用で緩和されうる」

はい、確かにその通りです。どうしても我々庶民は、目の前で起きていることに目を奪われがちで、中長期的に考えるとどうなんだ、という点を見失ってしまいます。米国の金利引き上げは気になるし、円安は物価高を引き起こして我々の生活を圧迫します。

けど、長い目で見れば、こんな状況はそう長くは続かないはず。という上野氏のご指摘。こんなふうに少し引いて、世の中を俯瞰できるようにならないとな、、、と思わされた次第です。