モルフォ(3653) 役員 インサイダー取引に関する課徴金命令を取り消し(その2)

今年1月に当ブログで取り上げた、モルフォ株式をめぐるインサイダー取引。金融庁の課徴金納付命令が、東京地裁により全面的に否定された件です。日本経済新聞でも取り上げられてましたね。判決が企業法務の専門家の注目を集めているんだそうです。

重要事実の発生

モルフォがデンソーとの業務提携を行うことについて決定したのがいつのタイミングだったか、が争点になっていて、日経では過去の二つの判例との比較をしていました。日本織物加工株事件と村上ファンド事件です。この二つの事件の判決では、いずれも実質的な決定時期をかなり早いタイミングで捉えています。

そのため、金融庁はモルフォのケースについても、守秘義務契約を締結し、そのことが経営陣に共有されたタイミングを、実質的な決定時期と判断したんですね。

ところが今回の地裁の判断は、「業務提携の決定は一般の投資家の投資判断に影響を及ぼす程度に具体的な内容を持つものでなければならない」としています。守秘義務契約の締結段階では、具体的な内容を持っておらず、重要事実は発生していないということです。

潮目が変わった

実はインサイダー取引規制における重要事実の決定時期については、以前から決定時期を早くとらえ過ぎているという批判が多かったんですよね。そのため法務関係者の多くが今回の判決を評価しているようです。

幅広に捉えられてしまう恐れがあるため、上場企業側も過剰規制に走る。上場企業のそういった過剰な反応に関しては、当の金融庁も見直すべきだとの方向性を示していました。国側は控訴しているようですが、kuniもこの判決は妥当だと思っています。

あと、この役員が「買付に関してあらかじめ会社に了解を得ていた」というのも、判決に影響してるかもしれません。会社としてはインサイダーには当たらないという判断をしているわけですからね。

シャープ カンタツに関する調査委員会の調査報告書を公表(その2)

シャープは3/12、調査報告書を公表しました。連結子会社カンタツにおける会計不正に関する報告書、本日は第2弾です。初めてご覧になる方は、一日前の同名の記事をお読みいただいてから、この記事を読んでいただければと思います。

米中貿易戦争が止めを刺した

足元で一気に業績を悪化させたカンタツ。その要因の一つに米中貿易戦争があったようです。トランプ大統領が次々と繰り出す中国企業への制裁、カンタツが製造する携帯電話カメラ用のマイクロレンズユニットの販売先が次々と制裁の対象となったんですね。そのため売上が一気に低迷します。

そんな状況下で、シャープ出身の取締役たちが何とか販路を開拓しようとするものの、上手くいきません。製品を売り上げたことにして不正を続けますが、シャープ本体からのいわゆる子会社管理はほとんど行われず、現場の暴走を止めることはできませんでした。

常勤監査役がいない

驚くことにカンタツには常勤といえる状況の監査役がいなかったようです。肩書き上はもちろん常勤がいたわけですが、実際には常にカンタツに勤務する体制は執られていなかったようです。同社は監査役会設置会社ですので、常勤監査役を置く必要があります。会社法違反なわけです。

IPO

業績はかなり悪化し、資金繰りにも窮していたカンタツですが、19年にはIPO(取引所への新規上場)の審査にも対応していたようです。業績の実態としてはとてもIPOなんて望める状況ではありません。IPOを実現するため、という動機もこの不正の原因の一つとなったようです。

もう10年近く前になると思いますが、エフオーアイという会社が、上場後わずか7ヶ月で上場廃止となる事件がありました。上場審査時の粉飾決算が原因です。売り上げのほとんどが虚偽で、カンタツと似た状況です。カンタツがこのまま上場していたらと思うと恐ろしいことです。株券があっという間に紙切れになるところでした。

シャープ カンタツに関する調査委員会の調査報告書を公表

シャープは3/12、調査を進めてきた調査委員会から調査報告書を受領し、これを公表しました。連結子会社カンタツにおける不適切な会計処理に関する調査結果ですね。当のカンタツに関してはもちろん、親会社のシャープまでも滅多切りですわ。

不正な会計処理

携帯電話カメラ用のマイクロレンズユニットの設計・製造を主要事業とするカンタツ。中国に二つの製造子会社を持っていて、ここが経営不振へ。不正な会計処理が始まります。

最も多いのが商社向けに商品を出荷した段階で売上を立てるという行為。しかしこの取引は、商社がエンドユーザーに販売できなければ、返品に応じるという契約のため、商品出荷時点で売上を認識することはできません(不正な売上計上)。

他にもあれやこれや。簿価を有しない製品の循環取引や、エンドユーザーへの販売ができなくなった製品を最終的に中国子会社で買い戻す循環取引等。棚卸資産についての評価損の計上回避なんてのも。

取締役が主導

今回の会計不正の特徴の一つが、取締役が主導して行為を行っているところです。代表取締役も主導とは言わないまでも、取締役が主導していることを十分認識しつつそれを行わせているわけで、主犯格であることは間違いなさそうです。

そしてもう一つの特徴が、シャープ出身の代表取締役が就任し、カンタツにおける業績の低迷をテコ入れしようとする場面で、会計不正が行われているところです。彼らの収益偏重、売上偏重の業務執行が不正を引き起こしています。まさにシャープが引き起こしたようなもんです。

親会社から社長や役員が送り込まれ、何が何でも収益を。プロパー社員たちとの溝は大きくなっていくばかり。次第にプロパー社員たちは腐っていく。こんな会社って実はたくさんあるんですよね。読者の皆さんの会社はこんなふうになってませんか?

まだ書きたいこともあるので、近日中に(その2)を。

ネットワンシステムズ 元従業員が逮捕

ネットワンシステムズは3/10、同社元従業員が2021年3月9日付で、詐欺罪の容疑で警視庁に逮捕されたとの事実を確認したと公表しました。例の架空循環取引を主導した部長さんですね。同社はこの従業員を2020年2月に懲戒解雇処分としています。

事件のおさらい

ネットワンシステムズは何度も不祥事起こしていて、どの事件の逮捕者なのか、、、って感じです。が、開示の内容が、2020年3月12日付「納品実体のない取引に関する調査最終報告書」で公表した納品実体のない取引を実行した人物とされているので間違いないでしょう。

ネットワンシステムズ、日鉄ソリューションズ、東芝ITサービス、富士電機ITソリューション、みずほ東芝リース、ダイワボウ情報システムなどが絡んだ架空循環取引事件。ネットワンの売上高の水増し額が276億円に上った一連の取引には、全部で9社が関与したといわれていました。

逮捕容疑

同社の開示では、「詐欺罪の容疑で警視庁に逮捕された」としか説明されていませんが、メディアの伝えるところによると、中央官庁のシステム開発を巡り、同社から虚偽の費用名目で約1500万円を詐取したということらしいです。

その手口は、取引先から購入したパソコン数十台について、この業者に別の機器の納入経費としてネットワンに請求するよう指示。虚偽の費用として約1500万円を送金させたというもの。このパソコンを買い取り業者に売り、約600万円を受け取っていたそうです。

同じ手口でパソコンの売却を繰り返し、警視庁は少なくとも2億円を得たとみているようです。また、同庁は一連の循環取引に関しても、全容解明を進めるとのこと。「実態のない架空の取引であったことを認識していなかった」としてきたその他8社にも、捜査の手が、、、。

新型コロナ ワクチン接種でアナフィラキシー17人?

厚生労働省は9日、新型コロナウイルスのワクチン接種を受けた医療従事者9人が、重いアレルギー症状のアナフィラキシーとして報告されたと発表した。国内でこの症状の報告は計17人となった。と、報道されていますが、厚労省のHPでは確認できません。なんで?

定義が違うのか

冒頭のアナフィラキシーに関する記述は、あるメディアの記事をそのまま引用したものです。3/9時点で累計17人ということですね。ところが厚労省の報道発表資料を見ても、この情報は掲載されていません。

日付を遡ってみると、3/5に「新型コロナワクチン接種後にアナフィラキシーとして報告された事例について(1例目)」というのが出てきます。さらに遡ってみると、3/2に「新型コロナワクチンの接種後の死亡事例の報告について(1例目)」というのがもう一回出てきます。この事例が話題になった死亡事例ですね。

さらに、さらに遡ると、2/20には「新型コロナワクチンの接種後の副反応疑い報告の事例について」という発表が。内容としては、「2件について、当初アナフィラキシーとして報告されましたが、その後報告者から症状名が訂正された事例です。」とあります。

メディアの姿勢

医療現場から厚労省へ「副反応疑い報告」が上がってきますが、ワクチン接種によるものではない偶発的な症状も含まれていて、後日訂正されることがあるということのようです。そのため厚労省の報道発表資料では今でも「1例目」となっているみたい。

しかしこれって、副反応疑い報告が何例、うち副反応ではないと判断されたものが何例。みたいな情報にして、分かりやすくするべきですね。それと、メディアについても同様で、あくまで「副反応疑い報告」の件数であることを明示すべきですし、後に訂正された(取り消された)数字を含めて恐怖心を煽るような書きぶりはやめるべきです。