天馬 監査等委員の選任を巡る駆け引き

6/21付け日本経済新聞に面白い記事が。「株主提案で『監査等委員』刷新 内紛の天馬に法の盲点」という記事です。まぁ、創業家が分裂して、そこにファンドが乗り込んできて、、、とグダグダな天馬ですが、今回は面白い構図ができています。

取締役会と監査等委員会

まず、同社では取締役会と監査等委員会が対立しています。しかしながら、煙たい存在の監査等委員の選任議案は監査等委員会の同意なしには株主総会に諮れません。取締役会をチェックする監査等委員会の独立性を保つためですね。

取締役会の一員である非常勤取締役の一名は、株主の投資ファンドのダルトン・アドバイザリーの代表取締役なんですね。そこで、取締役会が監査等委員会の抵抗で、提案できない監査等委員の選任提案を、ファンドからの提案(株主提案)として総会に諮るというものです。

新たな監査等委員3名の選任という提案ですが、もちろん現在の2名の監査等委員が外れることになる提案であり、もともと取締役会が推していた人選です。

同じ議案ですが、取締役会としては法の制限で提案できないが、株主提案であれば問題なしという事態が起きているわけですね。日経では「法の盲点」と表現しています。会社法のことです。

創業者元会長も監査等委員ではない取締役3名選任という株主提案していますし、天馬のドロドロ、まだまだ続きそうです。ちなみに同社第73回定時株主総会は、6/29開催予定です。議案を載せておきます。

会社提案
第1号議案 剰余金処分の件
第2号議案 取締役(監査等委員である取締役を除く)7名選任の件
第3号議案 監査等委員である取締役3名選任の件

株主提案
第4号議案 取締役(監査等委員である取締役を除く)3名選任の件(創業者元会長)
第5号議案 監査等委員である取締役3名選任の件(ダルトン等)

アジャイルメディア・ネットワーク 役員の不正行為(その5) 役員報酬減額

アジャイルメディア・ネットワークは6/21、「第三者委員会の最終調査報告書公表及び役員報酬の減額に関するお知らせ」を公表しました。調査報告書を正式に受領し、取締役の役員報酬の減額を行うことを決議したようです。まぁ、当然といえば当然なんですが。

役員報酬減額

一昨日、取締役CFOの不正の概要については書きましたので、今日は役員報酬減額の面から。減額の内容は、代表取締役社長:月額基本報酬の20%減額。社外取締役:月額基本報酬の15%減額。そして、常勤監査役:月額基本報酬の15%減額だそうです。ちなみに対象期間は7月から9月まで 3 ヶ月間。

取締役CFOがその地位及び権限を悪用して、3億4000万円を手にしていたこの事件。報酬の減額はこの程度で大丈夫ですかね。株主代表訴訟に発展しないようにもう少し大きくても良かったのではないかと。

もちろん、3億4000万円のうち一定程度回収が可能ということならいいんですが。普通こういうの、お金に困っているからやっちゃうわけで、ほぼ回収できずというのが定番です。

取締役社長と監査役の責任

この会社、社外を含めなければ、取締役2名と監査役1名の会社です。取締役のうち1名が不正行為の行為者です。要するに社長と監査役はたった1名の取締役の業務執行状況ですら監視・把握することができなかったわけです。この責任はかなり問われることになるでしょうね。

社長は財務のことはCFOに任せっきり?監査役は何をしてたんでしょう?従業員70名の会社でこれだけの不正を見逃してしまったことについて、株主はどう考えるでしょうか。

ショーエイコーポレーション 外部調査委員会調査報告書を公表

ショーエイコーポレーションは6/18、「当社営業部門の従業員の関与の疑われる不適切な取引の外部調査委員会からの調査報告書受領のお知らせ」を公表しました。4/30に設置した外部調査委員会でしたので、約一か月半。決算発表も間に合いそうな感じですね。

不正行為の概要

報告書では、「本件循環取引の中心的な関与者はあくまでもA社a氏であって、ショーエイはa氏発端の架空循環取引に巻き込まれ、その後はショーエイ担当者もC社を巻き込みマージン金額を決定し取引書類の外形を整えるといった点で能動的に協力して架空循環取引の規模を拡大してしまったものとの評価が妥当と考えられる。」とされています。

最近よく見るパターンですね。さらに報告書では、これら架空循環取引により発生した債権・債務は引き続き有効であり、ショーエイに72,313,162 円の利益が残る計算だとか。

発生原因

発生原因の中に、「アメーバ式経営」などと言う言葉が出てきます。各課又は各部ごとに営業目標が設定され、互いに独立した形で営業行為を遂行する体制のことだそうです。そのうえで目標の達成について上層部から強い要請があり、かつこの目標が毎年大きくなると。

まぁ、営利企業ですから当然っちゃあ当然なんですが、度が過ぎてたんでしょうね。「営業の評価においては数字の達成如何が非常に重要視される一方、数値目標を達成していた場合にはそれ以外の要素は良くも悪くもさほど考慮されない。」などという指摘もあります。

ショーエイの企業風土として、営業部門の偏重、営業個人の能力・スキルへの依存及び営業の数値目標への強い傾倒という3点があげられていました。人事考課においてコンピテンシーなんてのを設ける企業は増えたと思いますが、まだまだ上場企業でも実態はこんな感じですかね。

アジャイルメディア・ネットワーク 役員の不正行為(その4)

アジャイルメディア・ネットワークは6/17、「取締役の辞任に関するお知らせ」を公表しました。役員の不正行為に関する第三者委員会による最終報告に関するお知らせ」を公表したあのアジャイルです。

公表の内容

6/17をもって、当社取締役が辞任することとなりましたので、お知らせいたします。辞任の理由は、「第三者委員会による最終報告を受け、本人の申し出によるものであります。」とだけ説明されてますね。

不正を働いた役員、身を隠したわけではないようです。現在も連絡が取れる状況のようですね。「石をも動かす力」というお名前の前取締役CFO。実際にはその地位及び権限を悪用して従業員を動かし、会社のお金を詐取してきました。まったく残念な話です。

こういう事件は、ギャンブルか異性に対する事情というのが定番ですが、その真相はどうだったんでしょうか。

役員の所有株式数の異動

この辞任に関するお知らせの翌日、同社は「役員の所有株式数の異動に関するお知らせ」を公表しています。同社代表取締役社長から大量保有報告書(変更報告書)が提出されたことを受けての開示ということです。

元役員による資金流用の疑義及び、それに伴う2021年12月期第1四半期決算発表の延期を受け、金融機関の「債権保全を必要とする相当の事由が生じた」との判断により担保処分が実行されたとのこと。

代表取締役社長が同社株式を取得するため、金融機関に借入金の担保として同社株式を差し入れていたものの、銀行が同社の不祥事と決算発表の延期を受けて担保株式の強制売却を行ったということですね。

まさに、「雨が降り出したので貸していた傘を取り上げる」という構図。これが銀行です。

ユニデンホールディングス やはり創業者が登場

6/18付け日本経済新聞の記事に、「ユニデンHD創業者、現社長らの選任反対」という記事が掲載されました。やはり創業者が登場しましたね。これを受けてユニデンHDも同日11:30に「当社に関して一部報道されております筆頭株主からの書簡の内容について」を公表しました。

おさらい

UAC(ユニデンアメリカ)、およびUAUS(ユニデンオーストラリア)で、収益を水増しするための不正会計が行われていました。そして、これに関する英語版調査報告書を日本語版に翻訳する際、経営陣の責任の所在等に関する記述を削除していたという事件が続きます。

この改ざんに関わっていたと思われる創業者である元会長は昨年10月に退任しているわけですが、元会長寄りの監査役が経営陣に監査報告で物申す展開に。これはきっと創業者元会長が動き出したのでは?と、想像していたところに、、、やはり登場されたというわけです。

創業者の主張

不正会計処理の対応を巡り、コーポレートガバナンス(企業統治)の改善が進んでいないことを理由として、株主に対して、社長や取締役CFOの選任案に反対票を投じるよう求める、というものです。

「場当たり的な経営計画や配当政策」や「在外子会社の内部統制の改善の不足」を指摘したうえで、「現社長が職責を果たしていない」として反対するよう求めているようで。監査役会の3つの主張のうち、CFOによる重要会議への出席妨害の件を除く2つの主張と概ね一致しているようです。

さぁて、本当に「天馬」や「ひらまつ」のような展開になってきました。今月29日開催予定の定時株主総会。投資会社のリム・アドバイザーズに加えて、筆頭株主でもある創業者までも相手にしていくことになります。(ちなみに今回の株主総会は「株主様のご来場をいただくことなく当社役員のみで開催」だそうです。)