グローム・ホールディングス 島津製作所との業務提携情報はやはりフライング

グローム・ホールディングスは8/10、「島津製作所との医療機器を含むシステム構築等に関する業務提携基本契約締結についてのお知らせ」を公表しました。6/2に「当社子会社による情報の誤発信に関するお知らせ」で、一旦は否定していた提携話ですね。

島津製作所との提携

同社子会社グローム・マネジメント株式会社が、島津製作所と医療機器を含むシステム構築により、同社の提携先医療機関における医療効率、および診療の質の向上に貢献することを目指し、相互の知見の利活用に関する基本契約を締結したということです。

まぁ、ほとんどの方が予想した通り、グローム・マネジメントがフライングして公表してしまったということのようです。6/2の誤発信のお知らせはTDnetで公表されていましたが、今回の提携情報はTDnetでの開示はなし。同社ホームページでの公表にとどめています。さすがにカッコ悪いって感じでしたかね。

人の噂も七十五日

日本のことわざに「人の噂も七十五日」なんてのがあります。世間で人があれこれ噂をしていても、それは長く続くものではなく、やがて自然に忘れ去られてしまうものだという意味のことわざですね。

誤発信とやらが6/1。正式公表が8/10です。この冷却期間、数えてみると71日でした。「人の噂も七十五日」を意識したのかどうかは知りませんが、まぁ、このくらい時間を空けて、こっそりホームページでだけ公表すれば、、、そんな心理があったんでしょうかね。

この公表を受けて、翌日の株価は急騰。一時127円高まで買われましたが、その後売りなおされ、見事な往って来い。終値は前日比35円安。一度ケチが付くと、、、ですね。

日本精鉱(5729) 中瀬精錬所で火災事故

日本精鉱株式会社は8/6、「当社中瀬製錬所における火災発生について(第一報)」を公表しました。兵庫県養父市にある同社中瀬製錬所において、8/5、午後0時20分頃火災が発生しています(同日午後2時20分頃鎮火を確認)。

日本精鉱株式会社

日本精鉱株式会社は、自動車、家電製品、繊維製品などの幅広い分野で、難燃助剤あるいは触媒として使用されるアンチモンと、その化合物の生産・販売におけるリーディングカンパニーだそうです。東証2部上場企業ですが、従業員は88人とかなり小ぶりな会社ですね。

アンチモンはプラスチック製品や繊維製品などの難燃助剤をはじめ、触媒や顔料、減摩材、ガラス清澄剤など、様々な用途を持っているそうです。ただ一方で、人体にとっての毒性もあるんだとか。

火災の概要

中瀬製錬所は兵庫県北部にそびえる、県下最高峰の氷ノ山の麓にあります。古くは1500年代に遡る「中瀬金山」の歴史を持ち、現在はアンチモン製品を製造する工場。同工場の前処理建屋内から破砕した原料メタルを製造炉へ送り込むベルトコンベアで火災が発生しました。

公表文では、「火災により損傷した設備はメンテナンスを行っており、一時停止中のものでした。」と説明されています。一時停止中の設備での火災、ここ、ちょっと気になりますね。

株価

同社はこの開示の前日13時に好決算を公表。株価は一時ストップ高まで買われました。同じ日の12:20に火災が発生していて、その40分後に好決算の発表。そして火災の公表は翌日の15時。ジェットコースター相場になりかねません。危うく多くの投資家が巻き込まれるところでした。この公表順、何とかならなかったんでしょうかね。

村田製作所 システム開発業者経由で情報漏洩

村田製作所は8/5、会計システムの更新プロジェクトに携わっていた中国の再委託先の社員が、取引先情報など約7万件を不正に取得していたと発表しました。その取引先情報は外部クラウドサービスの個人アカウントに送信されていたということです。

村田製作所

村田製作所は積層セラミックコンデンサや、SAW(弾性表面波)のRF(無線周波数)コンポーネントなど、高付加価値製品で圧倒的な強みを持つコンデンサ世界トップの電子部品大手企業です。最終消費者が手にする商品を作っているわけではないので、知名度は高くないかもしれませんが、まぎれもなく日本の超一流企業です。

情報の不正取得(結果的に漏洩)

村田製作所では全社で進めている業務効率化の一環で、会計システムの更新を日本IBMに委託していました。その日本IBMは会計システムの更新(開発)の実務を中国法人に再委託していたようです。

その再委託先の中国法人(IBM Dalian Global Delivery Co., Ltd.)の社員が、同社取引先情報および個人情報を含むプロジェクト管理データを、業務用パソコンへ許可なくダウンロードし、中国国内の外部クラウドサービスの個人アカウントへアップロードしていたということです。

システム開発の実態として、開発を委託した企業は再委託先へ実務を委託。再委託先はさらに再々委託先へ開発業務等を分担させる。こうしたことが日常的に、かつ当たり前に行われています。そのためこの業界ではこういう事件が頻発します。

正直なところ再委託先以降の業者のコントロールって、村田には非常に困難だと思います。村田製作所が主語になっているこの事件ですが、実のところは日本IBMによる委託先管理の問題なんですね。なお、持ち出された情報が第三者によりコピー・ダウンロードされた事実はなかったということのようです。

第一カッター興業 連結子会社で役職員の不正行為

第一カッター興業は8/5、「当社連結子会社における不正資金流用疑惑につきまして」を公表しました。さらに翌日には「第三者委員会設置に関するお知らせ」を公表。この事案を受けて、2021年6月期の決算発表を延期することも決めています。

第一カッター興業

第一カッター興業は、舗装道路やコンクリート構造物の解体、撤去に必要な切断工事、穿孔(せんこう)工事などを行う。「切る」「はつる」「洗う」「剥がす」「削る」に、特化した技術を様々な現場に提供する、東証1部上場企業です。

「はつる」って一般の人には分からないですよね。アスファルトやコンクリート部分を、削ったり、切ったり、穴をあけたりする作業のことです。工事現場ではよく聞く用語です。

不正資金流用疑惑

同社連結子会社の従業員からの内部通報により、一部の役職員等が本来の使途とは異なる経費精算等を行い、不正に資金を流用していたと疑われる事象が発覚したといいます。内部通報により発見できたというのは評価できますね。

同社から開示されている情報はここまで。「従業員が」ではなく、「役職員等が」としているところが気になりますね。多くの場合、役職員とは「役員及び従業員」という意味で使われます。最近増加している役員の不正行為が含まれていそうです。

一連の開示から見て取れること。一つには内部通報が機能していたことですね。そしてもう一つは社外監査役が機能したことでしょうか。後者について開示では、「同社外監査役は、本件を認識した後、最初に、独自の調査を行い、公正な調査を求めてきた者である」としています。

監査役が一言、経営に対して「本当にそれでいいのか」と、釘を刺せるかどうか。これってめちゃくちゃ重要なんです。

株式会社ニップン オーケー食品工業 サイバー攻撃によるシステム障害

株式会社ニップンは8/5、「2022年3月期第1四半期連結決算発表の延期に関するお知らせ」を公表しました。同社グループシステムでサイバー攻撃によるシステム障害が発生したためだそうです。同社の連結子会社であるオーケー食品工業株式会社も同じシステムを採用しているため影響を受けています。

ニップン オーケー食品

ニップンは旧社名日本製粉。国内製粉業界で日清製粉グループ本社に次ぐ第2位の東証1部上場会社です。オーケー食品工業はニップンが発行済み株式の50%超を保有するジャスダック上場会社。こちらは国内トップシェアを誇る業務用味付け油揚げのリーディングカンパニーだそうです。

システム障害の概要

オリンピック開催に伴いサイバー攻撃が急増するといわれていましたが、ここまでのところ意外にサイバー攻撃を受けたというニュースは聞こえてきません。まぁ、公表を控えているだけという可能性はありますかね。そこへ、ニップンのニュースが。

7/7未明から、ニップングループのシステムでサイバー攻撃によるシステム障害が発生。現在はシステムの復旧作業中であり、財務・会計アプリケーションを含むビジネス活動に必要な基幹ITアプリケーションの一部が利用できない状況となっているとのこと。

決算発表を延期

システム復旧までにはなお時間を要する状況であり、復旧後も停止期間中に実施できなかった経理処理やデータの整合性の確認が必要となり、当該作業に一定の時間を要するため、決算発表を延期するとしています。

ここまでの公表内容については、オーケー食品工業も全く同じ開示をしています。ビジネス活動に必要なアプリケーションが落ちてしまっているようで、さすがに公表せざるをえなかったということでしょう。