グレイステクノロジー 不正会計で上場廃止 株主が集団訴訟を提訴

日本経済新聞は6/2、「不正会計で上場廃止のグレイス社、株主176人が提訴 5億4000万円賠償求め」と報じました。当ブログでも何度も取り上げてきた不正会計でしたが、同社は今年2月末で上場廃止となりました。そしてとうとう最終段階に入っていきます。

おさらい

グレイステクノロジーは製品のマニュアル作成を手掛ける企業。東証1部に上場していた2021年11月、不適切な会計処理の疑いがあると公表し、そこから株価は大幅に下落しました。22年1月には売上高の架空計上などの不正会計も発表し、四半期報告書を期限までに提出できず、上場廃止となりました。

集団訴訟

集団証券訴訟を提起したのは山崎・丸の内法律事務所というところ。裁判所は東京地方裁判所です。原告:176名、訴額:539,170,387円、被告:グレイステクノロジーおよび同社の元役員等。ということです。グレイステクノロジーの不正会計により株価下落の損失を被った複数の株主を代理して、同社に対して、損害賠償請求訴訟を提起したということですね。

同事務所によると、原告人数については、2012年以降に提起された日本における証券訴訟の中で最大となるとのこと。さらに同事務所では、グレイステクノロジーに対する第2次訴訟の提起も検討しているということですから、原告の数はまだまだ増えるんでしょう。

山崎・丸の内法律事務所ホームページで第2次訴訟の案内が出ていますので、グレイステクノロジー株を2021年11月9日時点で保有されていた株主の方はアクセスしてみてください。

ちなみに、この山崎・丸の内法律事務所さん、5/13付で、「Edulab社に対する証券訴訟の募集開始」ってのも公表されています。こちらも同じく不正会計よる株価下落について、株主の損失回復のための証券訴訟です。

ラサ工業 爆発事故の工場が稼働

ラサ工業は5/31、「高純度赤燐工場の一部生産再開についてのお知らせ」を公表しました。今年1/6に発生した同社三本木工場(宮城県大崎市)の爆発事故。その事故を起こした高純度赤燐工場の一部工程について生産を再開したということです。

高純度赤燐

爆発事故では従業員2名が負傷されていました。その後在庫の出荷を再開していたので大事に至らなかったって感じで見てたんですが、生産そのものは約5か月間停止したままだったんですね。今回の開示でも再開したのは「一部生産」となっていて、全行程の再稼働については今月中旬を予定しているとのこと。

同社にとって高純度赤燐を生産していたのは三本木工場だけだそうです。で、この化合物半導体の材料である高純度赤燐は、日本化学工業とラサ工業が世界的にシェアを二分している製品みたい。シェア上位2社のうち1社の稼働が止まっていたわけで、半導体業界にはそれなりのインパクトがあったと思われます。

当該事故に関し、今年5/13に同社が公表した連結業績予想数値に変更はないとのこと。「今回の事故を真摯に受け止め、生産活動再開に際しては再発防止と一層の安全確保に努めていく」としています。

このところ半導体関連の工場火災等の事故が多発しています。装置等の設備や工場の老朽化の問題もさることながら、事故が起きる背景には安全を維持するために必要なコストを削減するといった、非常にリスクの高い経営判断などがあったりします。経営陣には現場のリスクをしっかり認識していただき、二度とこういう事故が起きないようにしてもらいたいものです。

東京産業 不適切な会計処理 特別調査委員会を設置

東京産業は5/26、「特別調査委員会設置に関するお知らせ」を公表しました。この開示で初めて知ったんですが、5/13には「特別損失の発生に関するお知らせ」を開示しており、この中で同社の一部取引において不適切な売上処理が行われていたことが判明したことを発表していました。

東京産業株式会社

東京産業は電力および環境、化学業界などに各種機械、プラントなどを販売する三菱グループの機械商社です。中国や欧州など海外展開にも注力していて、筆頭株主は三菱重工業の子会社で火力発電システム事業を手掛ける三菱パワーです。東証プライム市場上場企業です。

不適切な会計処理の概要

外部公的機関による調査の過程において、取引の実体に疑義のある売上が存在するとの指摘があり、これを受け社内調査を実施したところ、販売取引の一部において計上根拠の確認できない取引があったほか、一部の仕入先に対して実体の伴わない送金を行っていたことが判明したということです。

5/13開示の「特別損失の発生に関するお知らせ」では、実体が伴わないと考えられる売上高および売上原価についてはこれを取り消すとともに、送金済の金額については回収可能性が現時点では見込まれないことから全額貸倒引当金を計上し、貸倒引当金繰入額を特別損失として処理したとのこと。

計上した特別損失は528百万円。決して小さくない金額ですね。単なる不適切な会計処理ではなく、架空取引やキックバックによる従業員の不正行為とかの可能性もありそうです。開示の中にある「送金した金額の回収および調査に基づく法的対応を図ってまいります。」というくだりを見ると、やはり従業員の不正行為と認識しているのかもしれません。

元気寿司 不適切な支出で特別調査委員会を設置

元気寿司は5/27、「特別調査委員会の設置に関するお知らせ」を公表しました。同社の新店舗の建設工事に関連して、不適切な支出が行われていた可能性があることが判明したということです。公正で適正な調査を行うため、外部の有識者で構成する特別調査委員会を設置しました。

元気寿司

元気寿司は国内外で展開する寿司レストランチェーン。「元気寿司」、「魚べい」、「千両」といったブランドで、国内は165店舗、海外は192店舗(2021年3月末)を出店しています。要するに全国展開する回転寿司チェーンなわけですが、餃子の街宇都宮が発祥だそうです。

業界最大手はスシロー。次いでくら寿司、3位がかっぱ寿司で、第4位が元気寿司だそうです。ちょっと上位3社には水をあけられてますね。4位から6位までが団子状態。業界シェアはそんな感じです。

不適切な支出

今回の開示では冒頭書いたように、「新店舗の建設工事に関連して、不適切な支出が行われていた可能性があることが判明」としか説明されていません。会計監査人から、本事案の事実関係の更なる調査、本事案に類似する事象の存否などについて、実態把握をする必要がある旨指摘されたため、特別調査委員会を設置したということです。

地元の新聞報道によると、問題が発覚したのは5/10の内部通報によるものだそうです。5/15には同社を担当する監査法人にも情報提供があったそう。監査法人はトーマツですから対応はしっかりしています。不正が発覚したのは事実ですが、内部通報など(ヘルプライン)は機能していたということですね。

今のところ見えてきてるのは以上です。調査委員会の調査結果を待ちましょう。ちなみにこの元気寿司の社長、法師人 尚史さんという珍しいお名前。「ほうしと たかし」さんと読むんですと。

創業家内で対立 はるやまホールディングスでも

はるやまホールディングスは5/25、「株主提案に対する当社取締役会意見に関するお知らせ」を公表しました。大株主である創業者の娘(現会長の姉)が、現会長らの取締役再任に反対する株主提案を同社に出したということです。また出てきましたね、お家騒動。

はるやまホールディングス

はるやまホールディングスは、ビジネスパーソン向けのスーツなどの衣料品およびその関連商品の販売を主な事業とする企業。大型駐車場を持つ郊外型店舗と都市型店舗の2業態で出店しています。岡山県岡山市に本社を置く、東証スタンダード市場上場企業です。

株主提案の概要

ちょっとややこしいんですが、創業者の息子が現会長。で、その会長の姉が岩淵さんという方で、今回の株主提案をされた方のようです。つまり、創業者の次の世代の姉弟で争いが始まったということですね。まさに創業家内での争いです。

岩渕氏は正史氏(現会長)や中村宏明社長を取締役候補から外し、元専務の野村耕市氏など4人を選任するよう求めているということです。再任反対の理由について「(新型コロナウイルスの感染拡大で)創業以来最大の危機だ。正史氏に経営させていては立ち直れない」としています。

コロナの影響も小さくはないんでしょうが、紳士服業界全体が完全に終わってますよね。コロナとは関係なく、ビジネスマンはネクタイをしなくなりましたし、クールビスや私服OKの企業が増加していて、スーツなんてほとんど不要になってきました。

株主総会は6/29

昨年の株主総会でも、創業家や一部の機関投資家が正史氏の取締役再任に反対票を投じてたんですね。その時はなんとか交わしたみたいですが、さてさて今年の総会はどうなることやら。こんな内輪もめに興じてられるような業界だとは思えませんが。