東洋エンジニアリング 海外子会社での不正

東洋エンジニアリングは6/30、「当社インド子会社における不正の疑いのある事案の発生について」を公表しました。実態のない発注等の不適切な取引行為が行われている旨の内部通報が2022年6月12日付けで寄せられたということです。

東洋エンジニアリング

東洋エンジニアリングは三井系のエンジニアリング会社です。石油化学・石油精製・油田開発技術・ガス処理・発電など各種プラント、インフラのEPC(設計・調達・建設)事業を手がけています。特に石油化学、肥料分野に強みを持つ会社で、東証プライム市場上場企業です。

不正の概要

インド子会社というのは、Toyo Engineering India Private Limitedという会社のようです。今回の開示では、「プロジェクトサイトにおいて、過去の一部取引について疑義があること、実態のない発注等の不適切な取引行為が行われている旨の内部通報があった」ということまでしか分かりません。

プロジェクトサイトというのがどういう意味で使われているのかよく分かりませんが、とにかく実体のない発注等というのが問題でしょう。この表現の中では「不適切な取引行為」としているんですが、開示のタイトルでは「不正の疑いのある事案」となっているところが面白いですね。

インド子会社としては不適切な行為なんだけど、実際には特定の役職員が明らかな不正を働いていたということを言いたいんですかね。企業が「不正」というときは特定の従業員等の行為であって、組織としては「不適切」と言いたがるもんです。一度の開示で、不正と不適切を使い分けている開示は初めて見るかも。

スマートバリュー サイネックス 確約手続

スマートバリューは6/30、「公正取引委員会による調査終了に関するお知らせ」を公表しました。同日サイネックスも、「公正取引委員会による調査の終了について」を公表しています。タイトルだけ見ても何のことやら分からない開示ですね。

スマートバリュー サイネックス

スマートバリューは行政デジタル化を支援するデジタルガバメント事業と、クルマのサービス化を支援するモビリティ・サービス事業を手掛けるIT企業です。サイネックスは、50音別電話帳「テレパル50」などを発行し広告枠の販売を収益とするメディア事業が中核の企業。どちらも東証スタンダード市場上場企業です。

公正取引委員会の言い分

スマートバリューとサイネックスが組んで、自治体向けにホームページの編集や更新に使うコンテンツ管理システム(CMS)を開発し、販売してきました。その際、セキュリティー対策などを理由に「オープンソースのソフトウエアではないCMSとすることが必須」として、自前で開発したCMSを売り込んできたようです。

これに対して公取委は、セキュリティー対策について「ソフト導入後も継続して保守点検を行うことが欠かせず、オープンソースか否かは関係ない。オープンソースを外す要件を盛り込むことは正当な理由がない」という主張。

確約手続

競合他社の取引妨害に該当するか、徹底的に戦うことを避け、「今後は気を付けます」みたいな改善計画を提出することで手打ちした。みたいな事件ですね。まぁ、一種の司法取引みたいなものかな。これで両社ともに排除措置命令や課徴金納付命令を回避できたということです。

両社の開示では、「確約手続は、当社が独占禁止法に違反したことを認定するものではありません」と往生際の悪いコメントをしていますが、「ヤバッ!」ってことで確約計画出したんでしょ。と思うんだけど。

ナカノフドー建設 不適切な会計処理に関する調査結果を公表

ナカノフドー建設は6/27、「内部調査委員会の調査報告書受領に関するお知らせ」を公表しました。海外連結子会社タイナカノ(同社出資比率49%)において、不適切な会計処理が行われていたことが判明したため、内部調査委員会を設置して調査をしていました。

会計不正の概要

平成31年3月期から令和4年3月期にかけ、工事原価を他の工事に付け替えることにより費用を先送りする会計不正が組織的に行われていたというもの。2017年頃から日系企業から受注する工事が減少し、外資系企業やローカル企業から工事を受注するため、ローカルの建設会社との間で価格競争にさらされたといいます。

そのため、採算の取れそうもない工事を受注しては、赤字を回避するために支払いを渋る。協力業者との間で別の工事に原価を付け替えることで何とか了承を得る。みたいなことを繰り返してたんですね。タイナカノの社長、副社長など、経営層の指示によりこうした原価移動が実施されていたということです。

本社海外事業本部からの受注獲得に対するプレッシャーが、、、ということが発生原因とされていますが、まぁこんなことどこの企業でもあるわけで。

アジア現法の実態

タイナカノはタイに進出する日系企業の倉庫や工場の建築工事を受注して施工してきました。設立以降、日系企業のタイを含む東南アジアへの進出が盛んであったことから、受注件数は安定的に伸びていましたが、2017年ころから、日系企業から受注する工事が減少しています。そこに新型コロナが追い打ちを。

海外現地法人で日本企業の進出を前提に設けられた企業はたくさんあるでしょうが、どこも同じ状況かもしれませんね。報告書を読んでいて、「ナカノフドー建設以外にも結構出てきそうだなぁ」と感じた次第です。

三協フロンテア株式会社 会計不正等の調査結果を公表

三協フロンテアは6/27、「調査委員会の調査報告書受領に関するお知らせ」を公表しました。第一報が5/17でしたから、わずか1ヶ月ちょっとで調査完了ということですね。2022年3月期の決算短信についても同日開示。大きな影響がないということで、過年度の有価証券報告書の訂正もありませんでした。

不正等の概要

そもそも今年1月の、東京国税局による原価の付け替え事案の指摘がきっかけだったようです。さらに水増し請求や架空請求によるキックバック等の不正(地域の営業担当者17名)についても指摘を受けています。国税局の調査により、ある程度不正が判明していたんですね。

「架空請求、上乗せ請求・現金および物品のキックバック」と整理されている事案だけでも、協力業者8社が登場し、同社の損害額は約4,700万円。「架空請求等および着服」と整理されている事案についても、少なくとも3社以上の協力業者とつるんでおこなっており、同社の損害額は約840万円。

「原価の付け替え案件」と整理されている事案については、まぁあちこちでやってたようですが、同社決算への影響額は(同社の原価総額に比して)極めて少額とされています。

「プール金設定案件」については、架空工事による仕入代金を上乗せし、水増しした請求書を同社に提出してもらい、水増し分を当該仕入先にプールするという手口。プール金の設定およびその取崩しは、営業担当者において、もっぱら現場ごとの粗利率の平準化を図るために実行されていたということです。

細かい話はこの辺りにしておきますが、結果的に巨額の不正には至らずという調査結果です。とにかくいろんな従業員が、多くの協力業者や仕入れ先と、昔ながらの「なあなあ」の関係で、今では不正と呼ばれる行為を継続してきていたということのようです。

最も問題なのは、こうしたカルチャーを自社で発見し、是正出来てこなかったということ。で、一番不細工な国税当局の指摘で初めて気が付いた、、、という点につきますかね。

昨年度の会計不正 公表31社 前年度比6社増

日本経済新聞は6/28、「会計不正、公表31社 昨年度、6社増 役員関与が半数」と報じました。もっと増加してるんじゃないかって感じてましたが、6社多いだけということです。会計不正が原因で上場廃止に至ったグレイステクノロジーみたいな事案もあり、酷い年度に見えてたのかな。

日経より

会計不正を公表した社数は、20年3月期が46社。21年3月期は大きく減少して25社。そして22年3月期がやや増加して31社ということです。役員が主体的な関与者だったのは15社と前の期の9社から増加しています。

この記事は日本公認会計士協会が集計したデータに基づくものです。同協会では粉飾決算と会計不正の2種類に分類して公表しているんですが、「粉飾決算」を財務諸表の利用者をだまそうと虚偽の記載をすること。「会計不正」を会社のお金を私的な目的で使うなどの資産流用と定義して集計しているそうです。

粉飾決算と会計不正、やはり明確な定義はないということなんでしょうね。ただし、少なくとも「不適切な会計処理」なんていう用語は出てきませんよ。不適切じゃなくて、、、不正なんです。

上場会社等における会計不正の動向(2022年版)

これが日経が引用していた、日本公認会計士協会のレポート名。日本公認会計士協会のホームページで見付けました。ただ、「著作物の転載を希望される方は、転載許可申請書を作成のうえ・・・」などと書かれていて、引用すら躊躇してしまいます。

一つだけ引用。内部通報により発覚したケースについては、2018年3月期から2021年3月期の4年間における平均は15.7%だそうです。ところが、2022年3月期における割合は15.4%と微減しているんですね。ここ数年内部通報制度の実効性を向上させようという動きがあったにもかかわらず、です。