帝人 決算発表してましたね 工場火災の件も初めて

帝人は2/8、「業績予想の修正及び特別損失(連結・個別)の計上に関するお知らせ」を公表しました。前回取り上げたように、オランダの工場で起きた火災事故とそれによるアラミド繊維の出荷制限など。開示すべき情報を適時に開示せず、決算発表で初めて、特損の理由として開示しています。

業績予想の修正の理由

今回の発表では業績予想の下方修正を行っているんですが、その原因が開示してこなかった工場火災による影響です。下方修正の理由、原文のまま引用します。

「マテリアルセグメントにおける欧州拠点での工場火災による生産量低下に伴う販売量減少、中国のロックダウン後の経済停滞に伴う需要減の影響等により、売上高を上記の通り前回発表予想から下方修正することといたしました。」

「また、売上高修正の要因に加え、マテリアルセグメントにおける米国拠点での設備故障復旧後の立上げ遅延による生産性改善遅れ等も影響し、営業利益、経常利益につきましても上記の通り前回発表予想から下方修正することといたしました。」

開示って何?

オランダの工場火災の件、やっぱりね、って感じです。そしてさらに、これは報道もされていなかったと思いますが、米国の工場でも設備故障が起きていたようです。決算発表で結果を知らされるまで、株主、投資家は何も知らなかったわけです。

工場火災や故障等による設備の不稼働、こうした情報が会社の評価や株価へどんな影響を与えるのか。そういった情報が提供されてこそ、投資家は様々な判断ができるわけです。それを会社が、「こんなの大したことないよ、決算発表の時でいいじゃん」で済まされたらたまりません。

楽天 (楽天モバイル) 従業員の不正行為 新たな展開

楽天モバイルの基地局整備事業をめぐる水増し請求問題。当ブログでは楽天モバイルの従業員の不正行為として取り上げてきました。この事件に関して新たな展開です。下請け業者「TRAIL」(東京都港区)が東京国税局から約70億円に上る所得隠しを指摘されたということです。

おさらい

携帯電話基地局整備をめぐり、楽天モバイルが取引先から不正な水増し請求を受けていたという事件。水増し請求の損害は約46億円に上るということで、一部は同社の当時の担当従業員側に還流していたとみられるということでした。キックバックですね。

その際、共謀していたのが、物流会社の日本ロジステックという会社の役員とされていました。昨年の9月当時に判明していたのはこの辺りまででした。

新たな展開

この不正事件に関し、楽天モバイル従業員や日本ロジステック元役員に加え、TRAIL社長の「共謀」があったという情報です。TRAILという会社も運送会社みたいで、日本ロジステックの下請けとして動いていたということのようです。どうやらこの水増し請求で儲ける不正のスキームを考えたのは、このTRAILの社長みたいです。

このTRAILという運送会社、いまでもネットのホームページは残っているんですが、「会社の概要」というページ(会社の住所や社長、役員の紹介などがあったと思われる)だけが消失、「お探しのページは見つかりませんでした」という状態になっています。

不正が行われている間、TRAILの売上は20倍以上に膨らみ、役員報酬ももの凄いことになっていたようです。社長はしこたま儲けたけど、会社自体は近く破産手続きを申し立てる見通しという情報も。逃げたな、、、ってことですかね。

サンリオでも会計不正? 特別調査委員会を設置

株式会社サンリオは2/9、「特別調査委員会の設置に関するお知らせ」を公表しました。同社のライセンス事業におけるロイヤリティを、あるべき月に売上計上せずプールすることで、任意の月に売上計上を行う期間帰属の操作が行われていたということです。

サンリオ

根強い人気を保つ「ハローキティ」を筆頭に、「マイメロディ」、「シナモロール」などオリジナルキャラクターを多数開発してきた会社です。アジア、欧州、北米などに子会社を持ち、世界でライセンスビジネスを推進するキャラクターライセンサーの大手企業。キャラクターグッズを販売するサンリオショップやコーナーを全国展開するほか、東京多摩地区と大分県にテーマパークを運営しています。

不正の概要

同社のライセンス事業における特定の取引先を管理するライセンス営業本部担当者が、ロイヤリティをあるべき月に売上計上せずプールすることで、任意の月に売上計上を行う期間帰属の操作を行っていたことが、今年1月に判明したといいます。

社内調査の段階で見えてきた情報から、当該操作が行われた金額は最大で1億円強ではないかとしています。顧客に夢を売るビジネスだけに、この手の不正は困ったものですね。

「特定の取引先を管理するライセンス営業本部担当者」というふうに、不正行為の範囲がある程度特定されている様子なんですが、社内調査では全貌が見えず、特別調査委員会を設置する。開示ではこんなふうに読めるんですね。取引先の範囲は特定できても、関与した者の特定なんかは社内調査ではしんどいってことでしょうか。もちろん、今後の調査で取引先等が拡大する可能性もありえます。

パスコ 不適切な会計処理で決算発表を延期

株式会社パスコは2/7、「2023年3月期第3四半期決算発表の延期及び特別調査委員会設置に関するお知らせ」を公表しました。前期、前々期において、利益先送りに関する不適切な会計処理が行われていたということです。ここまで社内調査委員会で調査してきたようです。

株式会社パスコ

パスコは国内外で地理空間情報の収集、加工・処理・解析、ICT技術を活用した高品質な情報サービスを提供する空間情報サービス事業を展開する企業です。セコムの子会社(発行済み株式の71%を保有)ですね。 

過去にも当ブログで取り上げたことがあるんですが、その際は防衛関連企業が続けざまにサイバー攻撃を受けていたという事案でした。同社も被害を受けていましたが、それほど大きな影響はなかったような気がします。同社は、防衛省から基地などの測量業務を受注し、衛星画像を納入していたんですね。

不適切な会計処理

2021年3月期および2022年3月期において、利益を先送りしていたとのこと。それぞれの年度末に完了した案件の利益の一部を翌期に繰り越していたということです。ここまでは社内調査委員会で調査してきましたが、専門的および客観的な見地が必要として、特別調査委員会を設置することになりました。

今回の開示で判明していることは以上です。決算発表を延期してでも、第三者の目線で客観的に調査を行う。これが正しい対応です。先日取り上げた大豊工業ではこの視点を欠いていました。っていうか、親会社TOYOTAの方針だと思いますけどね。

親会社の姿勢は開示にも表れていて、差出人名というか、発信者名のところ、その欄にはパスコと並んで「親会社 セコム株式会社(コード:9735)」と明記されています。親会社としての責任を自覚されているということだと思います。

株式会社レノバ 関連会社御前崎港バイオマスエナジーで労働災害事故

レノバは2/7、「当社の持分法適用関連会社における労働災害事故の発生について」を公表しました。その会社は御前崎港バイオマスエナジー。請負作業員1名が死亡し、他の10名が被災する労働災害事故が発生しました。ニュースで見られた方も多いのではないでしょうか。

株式会社レノバ

レノバは大規模太陽光発電、バイオマス発電等の複数種類電源の発電所を開発し、所有・運営している企業です。洋上風力発電事業の開発にも取り組んでいます。再生可能エネルギー発電事業が売り上げの95%を占める、2000年に設立された東証プライム市場上場企業です。

事故の概要

開示では、「事故発生は2/6の16:40頃。バイオマス発電所建設現場で、バグフィルタ内で溶接作業をしていた作業員2名が被災、また救出に向かった9名が二次被災し、うち7名が緊急搬送された。人的被害については死亡1名、被災10名」とだけ説明されています。

なんともシンプルというか、、、もう少し状況を説明してくれてもよさそうなもんだけど。報道によると、バグフィルターと呼ばれるボイラーの煙をろ過する装置は筒型の形状で、高さ約15メートルの装置です。作業員はこの「バグフィルター」の中で溶接作業をしていて、一酸化炭素中毒になったとみられる、としていました。

持分法適用関連会社

ちなみに、御前崎港バイオマスエナジーは2021年4月に着工し、今年7月の運転開始を目指していました。レノバが38%を出資しており、他には中部電力(34%)、三菱電機クレジット(18%)、鈴与商事(10%)といった企業が出資しているようです。この記事を書いている時点で、中部電力からの開示は見つかりませんでした。