岩谷産業 子会社で高圧ガス保安協会の検査に関する不正行為

岩谷産業は9/6、「当社子会社における不正行為の調査結果および再発防止策等について」を公表しました。まったく気付きませんでしたが、7/19に「当社子会社における設備検査成績書に関する不正行為について」が公表されており、これが第一報でした。

岩谷産業

岩谷産業はLPガスの卸・小売販売量が国内トップクラスの企業。卓上カセットコンロで有名ですね。ほかにも産業用ガス、半導体製造装置などの販売、レアメタルの開発なども手掛ける東証プライム上場企業です。

不正の概要

不正が発覚したのは子会社のエーテック株式会社。エーテックが製造した製品を対象にした特定設備検査において、本来であれば高圧ガス保安協会職員が押印する成績書の一部に、エーテック社員が勝手に同職員名義の印章を押捺及び検査成績書に添付されている証明書(ミルシート)に関する不正行為が発覚しました。

ミルシートってのがよく分からないんですが、どうやら協会検査員の印章を偽造して自ら合格の印を押していたということのようです。よくある検査不正は、そのほとんどが検査を受けるに際して違う素材で受けたり、検査データを捏造したりすることで合格しようとするもの。

ところが同社の場合、検査官の印鑑を偽造して合格させてしまうという荒業です。最も悪質といっていい不正ですが、岩谷産業は同社ホームページで公表しただけ。こんなの誰も気付かないでしょ。子会社の不正も酷いけど、親会社の開示に関する姿勢もいかがなものかと思います。

ファインシンター (その2) 不適切な会計処理のその後

トヨタ自動車の持分法適用会社(20%保有で筆頭株主)であるファインシンター。連結子会社であるファインシンターインドネシア株式会社において、不適切な会計処理が行われていた可能性があることが判明し、調査を進めていましたが、新たな展開も・・・。

おさらい

同社の海外連結子会社であるファインシンターインドネシア株式会社において、2021 年3月期頃から 2024 年3月期までの期末棚卸資産の不適切な会計処理により、実態と相違がある資産計上が行われている疑いがあることが判明。特別調査委員会を設置して調査を開始しました。

新たな展開

特別調査委員会の調査の過程で、同社国内工場において製造されていた部品の一部について、販売予定が無くなったにもかかわらず、複数年にわたって棚卸資産として資産計上されたままとなっている事実が新たに確認されたということです。

これにより、当初は想定していなかった追加調査が必要となる状況が生じており、有価証券報告書の提出期限延長(再延長)を申請するという事態になっています(同日付で当局が承認済み)。

インドネシア子会社、本社のいずれのケースも、今のところ何かしらの不正等が原因となっているとの認識はないようですが、どうなんでしょうね。再延長の承認により、本来7/1だった提出期限は9/30となっています。

公正取引委員会 パルシステム生活協同組合連合会に勧告

公正取引委員会は9/4、「パルシステム生活協同組合連合会に対する勧告について」を公表しました。プライベートブランド(PB)商品の製造委託をしていた下請け企業への支払代金を不当に減額したのは下請法違反にあたるという判断で、再発防止を勧告しました。

下請法違反の概要

問題視したのは、PB商品の製造委託先で下請け企業にあたる食品メーカーとの取引で、5社に対して計約2,770万円の支払代金を不当に減額していたというもの。

セール時に下請け企業4社に対して値引き分の一部を負担させたり、契約上支払う必要がないにもかかわらず、物流センターの利用料名目として約1430万円を支払代金から差し引いていました。下請法は下請け企業に責任がある場合を除き、当事者間の合意があっても発注後の代金から減額することを禁じています。

意外と不正は多い

生協というと消費者のための協同組合ということで、不正とは縁遠いイメージですが、これが意外に多いようです。2012年には日本生活協同組合連合会がPB商品の製造委託をする下請け企業への支払代金を不当に減額するなど総額約39億円の下請法違反の行為をしたとして、勧告や指導を受けています。

最近では今年5月、生活協同組合コープさっぽろが、総額約2,537万円の不当減額で再発防止の勧告を受けています。消費者に害を及ぼす不正ではないため見過ごしがちですが、これも立派な不正です。

Shinwa Wise Holdings 株式会社 子会社で不適切な会計処理

Shinwa Wise Holdings(以下シンワワイズ)は9/2、「2024 年 5 月期有価証券報告書の提出期限延長申請に係る承認のお知らせ」を公表しました。見落としていたんですが、7月に連結子会社で不適切な会計処理の疑いが判明し、第三者委員会を設置していたんですね。

シンワワイズ

シンワワイズは、近代美術をはじめワイン・リカー、ジュエリー&ウォッチなどのオークションの開催と、美術品やダイヤモンド(NFTアートなども)などのプライベートセールを主に手掛ける、東証スタンダード上場企業です。

不適切な会計処理

7/4の開示、「子会社における不適切な会計処理の疑いの判明及び第三者委員会設置に関するお知らせ」によると、連結子会社である Shinwa Prive 株式会社において、同社が実施したプライベートセールに関して不適切な会計処理の疑義がある旨、外部機関からの指摘を受けたということです。

指摘事項だけでなく、当該子会社における会計処理に関する事実関係の調査、業績への影響の把握、原因の究明、適切な会計処理に関する提言等が必要であると判断し、第三者委員会を設置して調査を開始しました。

調査委員会の結果やその後の監査手続きにより決算がしめられず、延長申請となったという経緯。発覚の経緯である、「外部機関からの指摘を受けた」っていうのが気になりますね。おそらく税務当局だと思われますが、こういうのって結構派手な不正等につながること多いので。

ブックオフグループホールディングス 従業員の不正行為(その3)

ブックオフグループホールディングスは9/2、「第 6 期(2024 年 5 月期)有価証券報告書の提出期限延長に係る承認申請書提出のお知らせ」を公表しました。6月に発覚を公表した従業員の不正行為に関する調査がまだ時間がかかりそうということで、期限延長の申請ということに。

おさらい

複数店舗において、従業員による架空買い取り、在庫の不適切な計上及びこれらによる現金の不正取得の可能性があることが発覚。6月の発覚に合わせて設置したた特別調査委員会は8/6に、これらの不正は国内ブックオフ事業の24店舗において確認されており、不適切な在庫計上として 70 百万円を認識しているという中間報告がなされていました。

期限延長の申請

有価証券報告書の提出期限が9/2であるところ、延長後の提出期限を10/22とするという期限延長の申請を行っています。特別調査委員会が同社グループ全従業員へのアンケートの実施、また、同社グループに関する財務数値の分析等の調査を行い、類似の不正の有無ならびに他の不適切な取引の有無について調査を行うため、これだけの期限延長がが必要という判断のよう。

現場に対するガバナンスが全く効いていなかったという事実が発覚したわけですから、膿を出し切るという意味で、上記のような徹底した調査を行うことは非常に重要だと思います。中立かつ公正な外部専門家で構成された特別調査委員会だけに、費用は相応にかかると思いますが、再生に向けた必須の投資と考えるべきですね。