ジーネクスト(その2) 代表取締役の解職と今後の展開

ジーネクストの代表取締役社長が、「代表取締役であった社長の取締役会における不合理な議事運営、業務執行に混乱をきたす等、会社の意思決定に支障が出ていたこと」、を理由に解職されました。代表取締役から代表権のみを失わせ、代表権を有さない取締役会長に、ということでしたね。

解職からの今後の展開

解職を決定したというのは、そこまでは取締役会の決議だけで可能だったから。ということだと思われます。代表権を剝奪するだけでなく、取締役としての地位までを失わせるには、株主総会の決議が必要となります。そこで問題になるのが、この方が35%を握る筆頭株主であることです。

ここまでの流れからすると、次の株主総会で当該取締役の解任や退任という議案を持ち出し、株主総会決議で取締役をも外れてもらう、という展開を目指しているのかと思いますが、その他の株主の票集めをする土台が35%分もあるということで、これはかなりしんどい展開かと。

解職された元社長は28歳という若さで同社を設立した創業者。現在でも46歳くらいです。自身が生み育ててきた会社をそうあっさりと手放すとも思えません。今後は投資ファンドなんかも絡んできて、株主総会はかなり荒れる展開となるかもしれません。

ちなみに、定時株主総会は6月下旬のようですから、6月の月初辺りには株主に総会開催の招集通知が出されると思います。もちろん、それを待たずして臨時株主総会を開催するということも考えられますが。ちなみに、先日就任した新社長は、丸井→大手監査法人→ココペリと渡り歩き、2019年に同社の取締役CFO に就任された方だそうです。

創業者を完全に追い出すことができるのかどうか(そこまでの意思があるのかどうかも含めて)、6月上旬に公表されるであろう株主総会招集通知をもうしばらく待ちましょう。

三菱製紙 子会社三菱製紙エンジニアリング株式会社で検査不正

三菱製紙は5/10、「当社子会社での不適切な事案の判明及び特別調査委員会の設置について」を公表しました。同社100%子会社である三菱製紙エンジニアリング株式会社において、製造していた耐熱プレスボード製品に関して検査測定データの改ざん及び所定の検査の一部不実施の事実が判明したということです。

三菱製紙

三菱製紙は印刷用紙、情報用紙を提供する製紙会社。インクジェット用紙、特殊機能紙、写真印画紙、写真感光材料、電子材料、CTP印刷版や印刷製版機材なども手掛けています。王子ホールディングスの持分法適用関連会社で業界7位程度の企業ですね。もちろん東証プライム上場企業です。

不正の概要

不正が発覚したのは100%子会社の三菱製紙エンジニアリング株式会社。三菱製紙白河事業所で製造していた耐熱プレスボード製品に関する検査においてです。出荷検査の一部の検査項目につき、検査で得られた実際の数値とは異なる数値を検査成績書に記載していたほか、 金属探知機による全数検査が抜き取り検査となっていました。

耐熱プレスボードとは、「全芳香族ポリアミド繊維を主成分とする、高い耐熱性・難燃性・電気絶縁性を持つボードで、抄紙技術で形成したシートを複数枚重ねてホットプレスしたもの」、と説明されています。変圧器等に使用されるようです。

こうした事実を受け三菱製紙では、外部専門家である弁護士 4 名で構成される特別調査委員会を設置し、同社及び同社子会社の各製造拠点におけるた耐熱プレスボード製品だけでなく、類似事案の有無も含め、調査を実施するとしています。

株式会社ジーネクスト 代表取締役の異動(解職) 社長交代

株式会社ジーネクストは5/9、「代表取締役の異動(解職)および社長交代に関するお知らせ」を公表しました。最近はハラスメント絡みでのトップの解任がよく話題に上りますが、同社の場合は社長の解職です。

株式会社ジーネクスト

ジーネクストは、電話・メール・チャット・店舗などのチャンネルから取得した顧客対応情報を一括管理するステークフォルダーDXプラットフォーム「Discoveriez」を、食品、日用品を中心に様々な規模・業種の企業に提供する、東証グロース上場企業です。

代表取締役社長の解職

直近ではENEOSHDの事例を書きましたが、同社の場合は解任でした。解任とは代表取締役の取締役としての地位を失わせることで、代表取締役は取締役ではなくなり、代表権もなくなります。つまり全ての会社との委任関係は終了します。

一方、ジーネクストの場合は「解職」。解職とは代表取締役から代表権のみを失わせ、平取締役とすることです。この場合、代表取締役は引き続き取締役としての権限を有し、取締役会に出席することもできます。同社の場合は代表権を有さない取締役会長に就任するそう。

開示によると解職の理由は、「代表取締役であった社長の取締役会における不合理な議事運営、業務執行に混乱をきたす等、会社の意思決定に支障が出ていたこと」とされており、これ以上の詳細情報はありません。実態はどうだったんでしょうね。解職された新会長、35%を保有する筆頭株主であり、ここら辺りも非常に気になるところです。

東海染工株式会社 浜松事業所にて火災事故

東海染工は5/1、「火災発生に関するお知らせ」を公表しました。火災が発生したのは浜松事業所で、4/25のこと。発生から約3時間後には鎮火しています。GW期間があったとはいえ、公表までに時間がかかりましたね。

東海染工株式会社

東海染工は、顧客から受託した生地の染色加工と自社企画で染色加工した生地の販売を中心に、縫製品や染色加工関連設備の販売、保育サービスなどを展開しています。海外向けの売上高が売上高全体の4分の1を占める、東証スタンダード上場企業です。

火災の概要 発生原因

3時間ほどで鎮火しているということで、人的被害はありませんでした。物的被害及び生産への影響等については現在調査中としています。「電気系統・生産設備につきましては翌日より復旧作業を実施しており、5/7より通常稼働を予定している」とのこと。

発生原因について同社は、「精練漂白設備(毛焼機)排気ダクト内部の毛羽埃に引火、工場の一部 25 ㎡程度に延焼した」、と説明してるんですが、これって、業界関係者ならともかく、一般の方が読んで理解できる説明ですかね。開示は正直にしてるんですが、説明の仕方はちょっと。

同社では昨年末に役員報酬の減額や希望退職者の募集を行っており、事業は順調ではなさそう。希望退職者は募集が10名程度で、応募は1名。これ、開示とか必要?正直な会社だけど、なにかと見せ方が下手な会社のようですね。

きらぼし銀行 不審送金見逃し(その2)

きらぼし銀行による不審送金の見逃しに関する記事を一昨日書きましたが、この銀行ってこれまでにもいろいろと起きてる銀行みたいですね。

過去の不祥事

2018年には同行の行員が妻殺しの容疑で逮捕されたという事件が発生。さらに同年、石神井支店勤務の男性行員が顧客の口座から不正に約6億8000万円の現金を引き出し、失踪する騒ぎも発生しています。さらに2022年には同行執行役員による不正融資とその見返りとしてのキックバック、なんて事案もありました。

不審送金に関する同行のコメント

ある報道機関によると、今回の不審送金に関しての同行のコメントは、「回答は差し控える」とか、「犯収法、当局ガイドラインや行内の規定・マニュアルに沿って適切に対応している」といったもの。それなりの立場の方のコメントでしょうが、いかにも硬直的で、法規制の趣旨を理解しない思考停止に陥っている感じです。おそらく同業の皆さんには信じがたい報道だったでしょう。

慣れない手つきでATMを操作している高齢者に声掛けし、オレオレ詐欺を水際で阻止するなんて努力が当たり前に行われているこの時代。そんな対応、法律にも指針にも明記されていない企業努力です。「マニュアル等に沿って対応しているから問題はない」と語ってしまうこの銀行に、やはり金融業を続けさせるべきではありませんね。