中部水産 特別調査委員会の調査報告書を受領したようだけど

2/9、「取引先が過年度より、当社に対し実在性のない架空取引を行っていたことが判明した」などという他人事のような書き振りで不正の発覚を公表し、特別調査委員会で調査してきた中部水産でしたが、4/8、約2か月を経て同委員会から調査報告書を受領したということです。

受領はしたけど

特別調査委員会より、調査の結果判明した事実関係及び問題点の指摘、再発防止のための提言を目的とする調査報告書を受領したということですが、その内容については一切触れていません。

黒塗り、黒塗り

「個人情報保護の必要上、機密情報保護等の観点から、部分的な非開示措置を施したうえで、2024 年4月 13 日(土)に公表する予定」だそうです。黒塗りするだけに5日も6日もかけるんかい?って感じ。最近増えてきた黒塗りだらけで理解不能な報告書になってそうですね。

この会社、どうにも自社で発生した不正に対する姿勢が妙な感じがしてなりません。第一報の段階からそのことは書いてたんですが。あくまで取引先の不正に巻き込まれただけなんです、的な。公表が土曜日ってのもちょっと珍しいですよね。一番目立たない日を選んだの?

HOYA 不正アクセスによるシステム障害

HOYAは4/4、「当社グループにおけるシステム障害について」を公表しました。3 月30日未明、海外の事業所においてシステム挙動に不信な点あったことから調査をしたところ、同社グループの国内外の事業所においてシステム障害が起きていることを確認したということです。

眼鏡レンズが

この同社のシステム障害で、眼鏡の大手チェーン店「JINS」などを中心に、一部の眼鏡レンズの注文受け付けを停止する動きが広がっているんだそう。HOYAによると同社のレンズは世界シェア2位で国内ではトップということで、その影響は小さくありません。

さらに、眼鏡レンズにとどまらず、ハードディスクドライブ(HDD)向けや半導体関連製品でも生産に影響が出ている可能性があるということで、こちらの影響も心配されるところです。

脆弱な態勢

HOYAにおけるシステム障害は今回が日初めてではありません。2019年には同社のタイにおける最大の工場がサイバー攻撃被害を受け、レンズの生産ラインが3日にわたって停止する事態に。そして、2021年にもHOYAのアメリカにある子会社が「アストロチーム」と名乗るサイバー攻撃グループによって、身代金要求型ウイルスに感染させられています。

要するにサイバーセキュリティに関する態勢が脆弱な企業としてマークされていた企業ということですね。今回の開示でも、「具体的な影響範囲はセキュリティーの観点から、外部に公表しないとしている。」そうですが、もうそんなこと言ってる状況ではないんですよ。セキュリティの全部再構築しないと。

インサイダー取引未然防止のための社員教育と態勢整備

昨日書いた小林製薬の社長会見の内容について、もう少し掘り下げてみます。「当社ではインサイダー情報について教育を行っています。その情報により売買の事前の社内許可制をとっている。インサイダー取引はないものと信じている」、というお話でしたね。

インサイダー取引未然防止策

役職員によるインサイダー取引を未然に防止するためのルール作りには、各社いろいろ工夫、苦労されていると思います。小林製薬でも「売買の事前の社内許可制」をとっているということでした。しかし、この程度は上場企業であればごく当たり前の態勢と言っていいでしょう。

一歩踏み込んで、自社株の売買を禁止するとか、売買したければ自社を通じて証券会社に注文をつなぐといった態勢も考えられます。要するに役職員の売買を完全に把握することで、保有状況までを自社で把握しておくということです。役職員の反発もあるでしょうが、「自由に株を売買したい」のであれば、自社株以外でやれ、ということですね。自社株は長期保有の観点で持株会でやれと。

インサイダー取引に関する社員教育

インサイダー取引とはそもそもどういう目的で設けられた規制なのか。どういう取引がインサイダー取引に該当してしまうのか。こういった法規制に関する研修・教育等も重要です。上場企業なんですから、主幹事証券に依頼して講師を派遣してもらうことも可能ですよ。

この社員教育で一番重要なのは、何よりもまず、社長をはじめとした取締役や執行役員への教育から始めることです。自社の業績動向やら増資に関する情報、TOBに関する交渉状況など、インサイダー取引に該当しかねない情報が常に身の回りにあるからです。実際に接してみるとビックリするくらい無知な役員が多いものです。

小林製薬 健康被害を巡るインサイダー取引はあったのか

小林製薬が販売する「紅麹」の成分が含まれた健康食品を摂取し、その後に死亡した人が5人に上るなど、同社商品の健康被害が大きな社会問題となっています。その同社株の推移を巡っては、2月上旬から同社の株価が大きく下落していることから、同社株式のインサイダー取引があった疑いが指摘されているそうです。

株価の推移

同社株は2月に入って下落を始め、同月中旬までで約10%(6,700円→6,000円)下げています。同じ時期の日経平均株価は約8%の上昇となっており、確かにインサイダー取引があったかのような印象を受けますね。

この動きについて、記者会見に参加した中国メディアから、「インサイダー取引があったのではないか」という質問があった模様。小林社長は「当社ではインサイダー情報について教育を行っています。その情報により売買の事前の社内許可制をとっている。インサイダー取引はないものと信じている」と否定したとのこと。

同じ業界を見てみると

同社株の比較対象となりそうな銘柄としては、ライオンや花王があげられると思います。両社の同じ期間の株価推移を見てみると、ライオンが約5%程度下落しており、花王も約6%ほど下落しています。日経平均が上昇するなか、この業界全体が売られていたことが分かります。

株価の推移だけではインサイダー取引があった、とまでは言えない程度の下げのように見えますね。もちろん、個別の取引見ないと分かりませんが(当然、監視委員会は既に調査を始めてると思います)。

ラックランド 渦中の代表取締役社長とは

昨日に続きラックランドについて。見落としていたんですが3/28に「取締役の管掌変更及び執行役員人事に関するお知らせ」が開示されていて、渦中の代表取締役社長の管掌変更(4/1付け)が記されていました。つまり問題起きてるけど代表取締役社長は続行するということですね。

2代目社長

社長ってどんな人なんだろうと調べてみましたが、どうやら父親(創業者)から引き継いだ2代目社長みたいですね。1975年生まれで2001年に同社入社。3年後の2004年に社長である父親が亡くなり、その翌日の定時株主総会で早速社長に選任(就任)されています。

不正が行われていたなら

まだ社長が不正を行っていたとまでは確定していないわけですが、通常不正の可能性が高いと考えられる場面では、いったん代表取締役社長を外れて取締役にし、取締役業務からも外すもの。そろそろそういう開示があるのかなと思ってたんですが、冒頭書いたように代表取締役は外れていません。

ここからは推測になりますが、社長に関する良からぬ事案が次々と出てくるけど、そこは創業家の2代目社長。同社の対応や各種の開示は忖度の塊のようなものになっているということでしょう。それでも何とか一石を投じようと特別調査委員会を設置し、自主点検チームなるものも設けて対処しているんだと思われます。

同社の中にも、「このまま2代目の好きにさせて、会社を潰すわけにはいかない」という勢力はあるということでしょうかね。しかしまぁ、創業家の2代目(今でも実質的に20%保有株主)の不正を糾弾していくってのは、かなり馬力のいる仕事ではあります。