日本証券業協会 三木証券に過怠金8,000万円

日本証券業協会は11/15、「協会員に対する処分及び勧告について」を公表しました。処分を受けたのは三木証券。高齢者への外国株式の販売を巡り、不適切な勧誘行為や法令違反があったとして、過怠金8,000万円を課したということです。

三木証券

三木証券は上場企業ではありません。資本金は5億円、支店数は7店舗、従業員150名程度の小さな証券会社です。調べた限りではどこかの大手証券会社の系列でもなさそうです。大株主にもみずほ銀行が入っているくらいです。

30年前の営業スタイル

三木証券は80~90歳代の少なくとも顧客18人に対して、外国株取引ができるほどの認知判断能力を持ち合わせていないと認識しながら、必要な説明をせずに取引をしていたということです。顧客らは会話がかみ合わなかったり、数分前の会話を覚えていなかったりする状態だったと。

いやぁ、これ、認知症の高齢者をダマして手数料稼ぎ。相応の理解力や記憶力があったとしても、高齢者との取引で仕組み債や外国株なんて既に原則ご法度ですよ。ここまでの酷い営業させてる会社がまだあるんですね。

勧告・行政処分・過怠金

この事案、今年9月に行われた証券取引等監視委員会の同社に対する検査で見付かったもの。9/15に検査結果に基づく勧告がされ、10/6には関東財務局から行政処分を受けています。そして今回の日証協の処分(課徴金8,000万円含む)です。

中小証券の中にはまだこういうの残ってるんでしょうね。監視委員会の資料には、「代表取締役社長自らが主導して、コンプライアンス部門の人員を削減している・・・」なんて話も出てきます。

フェローテックホールディングス 大泉製作所株式に対する公開買付けを公表

フェローテックホールディングスは11/10、「株式会社大泉製作所株式(証券コード:6618)に対する公開買付けの開始に関するお知らせ」を公表しました。このTOBに関する公表は、同日の15:30に行われています。

フェローテックホールディングス 大泉製作所

フェローテックは、半導体・FPD(フラットパネルディスプレイ)製造装置向け製品と電子デバイス製品の製造販売・サービス提供を行う企業。コア技術として、磁性流体(磁石に反応する液体)とサーモモジュール(電流によって発熱・吸熱を制御する半導体素子)を持っています。

一方でTOBを仕掛けられる大泉製作所は、熱・温度変化によって電気抵抗値が変化する半導体セラミックスのサーミスタを利用した各種電子部品のメーカー。サーミスタ温度センサのリーディングカンパニーです。

フェローテックは大泉製作所の株式を既に51%保有しており、今回発行済株式の全てを取得し、大泉製作所を完全子会社化するという情報だったんですね。公開買付け価格は1,300円です。

ド派手なインサイダー取引

11/10の引け後(15:30)に1,300円でのTOBを公表。ところが11/10の取引時間中に株価は急騰し、この日の終値は1,035円(+150円のストップ高)です。さらにそれ以前の数日間も不自然に上昇(150円ほど)しており、明らかにどこからかTOBの情報が洩れている様子がうかがえます。

どこから漏れたんでしょうね。これだけド派手なインサイダー取引も珍しいです。既に各証券会社には、自主規制機関や監視委員会から問い合わせ(買付顧客のリスト提出要請)が来てると思います。

東亜建設工業 子会社信幸建設で組織的な不正行為

東亜建設工業は11/10、「社内調査委員会の中間報告書受領に関するお知らせ」を公表しました。中間報告書というタイトルになっていますが、調査は概ね終了しており、これに再発防止策の提言の詳細が加わって最終報告に。つまり実質的な調査結果となっています。

不正の状況

2016年度から2023年度までの期間において判明した不正金額の合計額は 785百万円に及んだということです。子会社信幸建設で行われてきたこの不正は、①架空・水増し工事代金の支払及びキックバック、②領収書精算及び水増し代金の支払、③資金プール及び補填、といった類型に整理されます。

不正に関与した従業員は9名。取締役支社長に始まり、部長クラス2名、残りも課長や所長クラスです。一方、不正に関与した取引業者も10社に及んでいます。水増し工事代金の金額は合計で約7億9千万円、キックバックされた金額は合計で約4億2千万円だそうです。

不正を行った者の階層にしても、キックバックされた金額にしてもですが、かなり驚きの結果となりました。不正を主導した支社長はなんと、1億円程度のキックバックを得てます。その他の人物も含めて、まぁ、これ定番ですが、受け取ったキックバックはギャンブルや飲食・交遊費に費消したそうな。

親会社も

こんなふうに、完全に腐ってしまっていた子会社なわけです。ここまでズタボロなため、再発防止策の提言についてはより慎重に、時間をかけようということなんでしょうね。子会社のみならず、東亜建設工業の子会社管理についてもしっかりメスを入れないと。

株式会社タカミヤ(その2) 不正を行ったA社員とは?

昨日取り上げたタカミヤにおける社員による不正行為。なんともよく分からない内容でしたが、未入金となっているという金額は2,300万円とされていました。の割には同社株は結構大きく売られましたね。

A社員とは

開示では不正を働いた社員のことをA社員と呼んでいるのですが、この社員は営業職なんでしょうか。だとすると経理処理のためのシステム操作を自在に行っているのが不自然な感じがします。ただ、自分の数字のために悪さしたということであれば、会社としてのダメージは小さいかもしれません。

問題はこのA社員が経理担当者や経理担当の管理職だった場合です。自身にメリットがあると思えない見込み注文を売上計上する行為だとすると、背景にいろいろな力が加わっている可能性があり、会社組織としての問題という可能性もあります。

収益に対するプレッシャーが過大であり、経理担当者や経理部門が不正を働いたという構造です。もしそういうことであれば、類似事案が出てくる可能性も高くなるでしょうね。こうなると経営の問題、ガバナンスの問題がクローズアップされてくるでしょう。

と、まぁ、いろいろと勘ぐってしまうわけです。そんな不安を招かないよう、今回の事案について、もう少し株主に分かりやすく説明する必要があるのではないかと。

ちなみに、調査に時間がかかりそうだとしている理由は、昨年末に不正アクセスにより発生したシステム障害の影響もあるようです(この部分はちょっと読み飛ばしていました)。

株式会社タカミヤ 従業員が架空売上の計上 決算発表を延期

株式会社タカミヤは11/9、「2024年3月期第2四半期決算発表の延期および第56期第2四半期報告書の提出遅延(見込み)のお知らせ」を公表しました。同社社員1名が架空売上の計上を行っている疑義が発見されたため、としています。

株式会社タカミヤ

タカミヤは建設用仮設機材などの製造、レンタル、販売を行う会社。仮設機材をはじめとする多彩な製品を開発・製造から販売、レンタル、設計・施工、管理・物流までトータルに扱い、建設工事にまつわるあらゆるサービスをワンストップで提供しています。東証プライム上場企業です。

不正の概要

今のところかなり断片的な不適切な会計処理について開示している状況で、架空売上というよりは売り上げの先行計上という見え方ですね。取引先も1社しか登場しませんし、前前期末に行った先行計上の穴埋めを行うべく、前期末まで嘘の会計処理を繰り返しごまかしてきている、、、って感じでしょうか。

しかし、その割には、弁護士資格を有する社外取締役(監査等委員)を委員長とする社内調査委員会を設置し、12月13日までの予定で調査するとのこと。かなり大掛かりな印象を受けます。今見えてきている事案のほかにも、類似事案がありそうな感じなんでしょうかね。