拡大してきた魚介類の陸上養殖

8/16付けの日本経済新聞に、拡大しつつある魚介類の陸上養殖について伝える記事がありました。「漁獲競争が激化し、水産資源の枯渇が懸念される中、食料確保と環境保護の両面から『陸で育つ魚』に熱視線が集まる」、という触れ込みです。

紹介されていた企業と魚種

日経がまとめていた主な陸上養殖事業(上場企業のみ)は次のようなもの。マルハニチロ(サクラマス、アトランティックサーモン)、ニッスイ(マサバ、バナメイエビ)、JR西日本(マサバ、ヒラメ、トラフグ)、関西電力(バナメイエビ)、安藤建設(トラフグ)、ゼネラル・オイスター(カキ)といったところ。子会社での参入という意味では、三菱商事や三井物産の名前もありました。

最大の魅力は

陸上養殖の最大の魅力は、天然物や海上養殖において課題となる寄生虫リスクを低減できることでしょう。食中毒の防止などで付加価値を高めることが可能です。アニサキスの問題でサバはなかなか生でいただくことができなくなりました。前にも書いたけど、酢でしめても効果なし。

生ガキにあたるのも怖いですよね。ノロウィルスや腸炎ビブリオ、貝毒を含むカキを生で食べることで発生する食中毒です。そうしたウイルスや細菌を含む海水(や、食物連鎖)から切り離された陸上養殖は非常に魅力的です。

地方自治体にとっても

昨年夏に2ヶ月ほど田舎に帰省していたんですが、まぁそこら中に耕作放棄地やらがあふれていて、これだけの土地があったら陸上養殖の誘致ありじゃないか、と思いました。空き家や耕作放棄地に悩む地方自治体にとっても非常に付加価値の高い事業だと思います。

オープンハウス 三栄建築設計をTOBで完全子会社化

オープンハウスは8/16、「株式会社三栄建築設計株式(証券コード:3228)に対する公開買付けの開始に関するお知らせ」を公表しました。創業者の反社会的勢力とのつながりで、東京都公安委員会から暴力団排除条例に基づく勧告を受けていたあの三栄建築設計です。

創業者等の保有株式をTOB

今回公表されたのは、創業者とその親族が代表を務める企業が保有する全株式(発行済み株式の約65%)に対するTOBです。これにより、反社と繋がっていた創業者一族から完全に切り離されることになります。TOBが成立した場合はスクイーズアウト(強制買い取り)を実施し、三栄建築は上場廃止となる見通し。ちなみにTOBの条件は1株につき2,025円、買収金額は約430億円になるそうです。

反社認定(反社に繋がっている企業は反社会的勢力です)を受けた企業が、その世界との繋がりはもうないということを世に示すのはとても大変なことなんですね。なので、三栄側にとっても朗報、公安にとっても納得感のある展開です。反社との関係が世に出たのが6月中旬でしたから、2か月ほどで決まった買収劇です。

なんだか微妙な取引も

オープンハウスがTOBを公表したのが、8/16の18:15です。ところがその前々日辺りから三栄建築の株価は出来高を伴って急上昇。何なんでしょうこれ。一方のオープンハウス株は急落しています。反社とも縁が切れて、身綺麗になり、、、良いことずくめ。ともいかないようなこの不穏な株価変動。公安の次はSESC(証券取引等監視委員会)の出番か。

株式会社建設技術研究所 従業員の不正行為(その2)

8/4、「決算発表の延期及び社内調査委員会設置のお知らせ」を公表していた建設技術研究所。8/14には、「不適切な取引の発生及び当社業績に与える影響について」を公表しました。同時に、2023年12月期の業績予想の修正(上方修正)も公表しています。

調査委員会の結論

社内調査委員会の結果が出て、会計処理の前提となる事実関係の確認も済んだため、決算短信を公表し、業績を上方修正しましたと。良い話ばかりなもんだから株価は急騰。前日比430円高となりました。

が、しかし、今回の開示ではあえて不正行為そのものについてはまったく触れていません。上手いやり方があるもんですね。公表されたのは、「2008年2月から2023年4月までの期間に、従業員が実質的に経営する会社へ合計141百万円の不適切な外注取引を行ったもの」とだけ説明されています。

調査漏れ?

2021年に同社が公表した従業員の不正行為。この時は2015年から2020年まで行われた架空発注で資金を還流させ、他の業者からきて、建設技術研究所に常駐で働く同僚たちの処遇が酷過ぎるため、これを改善するために補填していたというものでした(詳細は過去記事を参照)。

現在開示されている不正は2008年から今年まで続くもので、外形的には前回とほぼ同様の手口のように見えます。2021年の調査で発見できなかった、調査漏れ事案ということになりそうです。このことは非常に問題だと思われますし、今回の開示では良い話ばかりを並べて、悪い話を隠している格好に見えます。

もちろん、調査結果の詳細は後日開示するとはしていますが。

中国 日本への団体旅行を解禁したけど

8/10付けの日本経済新聞の記事。「中国、団体旅行を約80カ国解禁 日本や米国など10日から」。中国政府は10日、日本や米欧、韓国を含む世界78カ国・地域への団体旅行を新たに解禁したと発表したとのこと。

中国からの訪日客は復活するのか

コロナ前のピーク時、2019年の中国からの訪日客は約960万人。これに対して今年1~6月の中国からの訪日客は約60万人。足元の6月に関しては20万人ほど。また、2019年のデータで見ると、全訪日客の約30%が団体旅行客だったそう。

つまり団体旅行客を除いた訪日客約70%が今年上半期約60万人なわけで、一番増加している6月データを引き延ばしても半年で120万人ペース。この半分くらいが団体客として新たに増加するとしても、せいぜい60万人の増加ということになります。今年だけでいうと上半期60万人ですから通年で240万人ってとこ。

メディアは中国からの訪日客復活を話題にしたがっていますが、960万人が200万人強へ。「復活」とはほど遠いイメージです。もちろん、今後の中国経済が復活してくれば全然違った風景になるんでしょうが。

中国の現在の立ち位置

最近中国から聞こえてくるニュース。物価が停滞、もしくは下落傾向。若者の失業率が20%を超えてきた。まだまだ一面ではあるものの、バブル後の日本に似てきた感じがします。共産党が政治も経済もどうにでもできる国家のこと、1990年以降の日本と同じような展開になるとは言えませんが、やはり中国経済にしろ、訪日客にしろ、本格的な復活は厳しそうな気がします。

Abalance(Aバランス)株式会社 決算発表延期でストップ安?

Abalance株式会社は8/14の午前9時ちょうど、「2023 年6月期決算発表の延期に関するお知らせ」を公表しました。同日公表予定でしたが、1週間延期して、8/21に公表予定だそうです。開示文には、「決算数値の確定に時間を要しているため」、という理由だけが記されています。

ストップ安

額面通り受け止めるなら、1週間延期しただけの話。にもかかわらず同社株はストップ安(-1,500円)。ここまで売る?って感じです。同日の取引開始と同時に公表されていて、その直後には前日より500円以上高い水準まで買われたんですが、その後反落してます。

よく見ると前日(先週末)にも出来高が急増して下落していて、決算発表の延期が一営業日前に洩れていたのでは?という感じはありますね。

投資家動向だけか、不正とかか

「決算跨ぎ」とかいって、決算の数字が公表される前日までに仕込んでおいて、好決算の公表と同時に売り抜ける、なんてことする人も多いらしいけど、それにしても極端すぎるような。1週間の延期と、期限を明示していることもあり、この後不正が発覚という続報が出てくる確率は低いと思われますが・・・。

それでも、重要な情報が漏れやすいという会社の態勢や、ここまで大きな下げを見せられると、どうしても不正等が潜んでいるのではと勘ぐってしまいます。