はるやまホールディングス 創業家の対立

株式会社はるやまホールディングスは6/23、「株主総会検査役の選任に関するお知らせ」を公表しました。同社第47回定時株主総会( 6/29 開催予定 )に関して、株主総会の招集の手続及び決議の方法を調査させるため。だそうです。

株主総会検査役

以前、東京ドームの臨時株主総会を取り上げた際、この株主総会検査役についても書きました。検査役を選任することで、違法または不当な手続が行われることを防ぎ、後日の紛争を未然に防止することができます。

また、後日紛争が生じた場合には、検査役による報告書を証拠資料とすることができる、という効果が期待できるという制度でしたね。もう少し詳しい話は東京ドームの記事をご覧いただければと。ということで、はるやまの株主総会ももめそうなんだ、、、ということです。

創業家の対立

今回、株主総会検査役選任の申立てを行った株主は、岩渕 典子さんとあります。この方、はるやまホールディングス代表取締役社長の、実のお姉さまだそうで。お父様である創業者と一緒に、現社長の再任を阻止しようとしているらしいです。

お姉さまと創業者は、再任反対の理由として「ワンマン経営が過ぎて、社員の実力が発揮できないため」としています。前回、2020年6月の株主総会でも創業家や一部の機関投資家が現社長の取締役再任に反対票を投じたものの、わずかに届かず可決されています。

今回は、岩渕氏名義で個人株主や取引先に、株主総会で反対票を投じるよう求める書簡を送ったようです。書簡により、個人株主がどう影響を受けるんでしょう。はるやまホールディングスにおける創業家と現経営との対立、どうなるんでしょうか。

成長戦略実行計画 SPAC 導入 新規株式公開(IPO)における課題

6/18、閣議決定された成長戦略実行計画。グリーン14分野に係る投資や研究開発、フリーランスの働く環境整備、経済安全保障のためのデジタル政策、SPAC(特別買収目的会社)制度の導入などスタートアップ支援などが盛り込まれました。

SPAC

SPAC(特別買収目的会社)制度がとうとう日本でも導入されるようですね。経産省が前のめりになってる一方で、金融庁は反対してるらしく(まぁ、ここは新しいものについては基本的にこういうスタンスです)、まだまだ導入への道のりは険しそうですが。

成長戦略実行計画では、「投資家保護策等の観点から、SPACを導入した場合に必要な制度整備について、米国をはじめとする海外の規制当局の対応やSPACをめぐる市場の動向、我が国の国際競争力の強化の視点を踏まえつつ、検討する」という表現になっています。

ちなみに、SPACは米国のみならず、英国、ドイツ、フランス、カナダ、イタリア、韓国で導入・活用されているそうです。

現行IPO

成長戦略では現行のIPOの制度に関してかなり否定的に触れています。上場後初めて市場で成立する株価(初値)が上場時に起業家が株を売り出す価格(公開価格)を大幅に上回っていることを指摘しています。これは、米国や英国など、諸外国と比べて突出しています。

このため、IPOによる起業家の資金調達額が少なくなっている、という点に着目してるんですね。おっしゃる通りだと思います。初値で特定の金持ち投資家が利益を得る仕掛けで、公開する企業の売り出し価格は低めに設定され、資金調達額は少なくなってしまいます。

SPAC導入も、現行IPOの否定も、どちらも証券会社の収益機会を奪う方向の議論になります。濡れ手に粟、みたいなビジネスは、やはり消えていくんですね。

天馬 監査等委員の選任を巡る駆け引き

6/21付け日本経済新聞に面白い記事が。「株主提案で『監査等委員』刷新 内紛の天馬に法の盲点」という記事です。まぁ、創業家が分裂して、そこにファンドが乗り込んできて、、、とグダグダな天馬ですが、今回は面白い構図ができています。

取締役会と監査等委員会

まず、同社では取締役会と監査等委員会が対立しています。しかしながら、煙たい存在の監査等委員の選任議案は監査等委員会の同意なしには株主総会に諮れません。取締役会をチェックする監査等委員会の独立性を保つためですね。

取締役会の一員である非常勤取締役の一名は、株主の投資ファンドのダルトン・アドバイザリーの代表取締役なんですね。そこで、取締役会が監査等委員会の抵抗で、提案できない監査等委員の選任提案を、ファンドからの提案(株主提案)として総会に諮るというものです。

新たな監査等委員3名の選任という提案ですが、もちろん現在の2名の監査等委員が外れることになる提案であり、もともと取締役会が推していた人選です。

同じ議案ですが、取締役会としては法の制限で提案できないが、株主提案であれば問題なしという事態が起きているわけですね。日経では「法の盲点」と表現しています。会社法のことです。

創業者元会長も監査等委員ではない取締役3名選任という株主提案していますし、天馬のドロドロ、まだまだ続きそうです。ちなみに同社第73回定時株主総会は、6/29開催予定です。議案を載せておきます。

会社提案
第1号議案 剰余金処分の件
第2号議案 取締役(監査等委員である取締役を除く)7名選任の件
第3号議案 監査等委員である取締役3名選任の件

株主提案
第4号議案 取締役(監査等委員である取締役を除く)3名選任の件(創業者元会長)
第5号議案 監査等委員である取締役3名選任の件(ダルトン等)

アジャイルメディア・ネットワーク 役員の不正行為(その5) 役員報酬減額

アジャイルメディア・ネットワークは6/21、「第三者委員会の最終調査報告書公表及び役員報酬の減額に関するお知らせ」を公表しました。調査報告書を正式に受領し、取締役の役員報酬の減額を行うことを決議したようです。まぁ、当然といえば当然なんですが。

役員報酬減額

一昨日、取締役CFOの不正の概要については書きましたので、今日は役員報酬減額の面から。減額の内容は、代表取締役社長:月額基本報酬の20%減額。社外取締役:月額基本報酬の15%減額。そして、常勤監査役:月額基本報酬の15%減額だそうです。ちなみに対象期間は7月から9月まで 3 ヶ月間。

取締役CFOがその地位及び権限を悪用して、3億4000万円を手にしていたこの事件。報酬の減額はこの程度で大丈夫ですかね。株主代表訴訟に発展しないようにもう少し大きくても良かったのではないかと。

もちろん、3億4000万円のうち一定程度回収が可能ということならいいんですが。普通こういうの、お金に困っているからやっちゃうわけで、ほぼ回収できずというのが定番です。

取締役社長と監査役の責任

この会社、社外を含めなければ、取締役2名と監査役1名の会社です。取締役のうち1名が不正行為の行為者です。要するに社長と監査役はたった1名の取締役の業務執行状況ですら監視・把握することができなかったわけです。この責任はかなり問われることになるでしょうね。

社長は財務のことはCFOに任せっきり?監査役は何をしてたんでしょう?従業員70名の会社でこれだけの不正を見逃してしまったことについて、株主はどう考えるでしょうか。

ショーエイコーポレーション 外部調査委員会調査報告書を公表

ショーエイコーポレーションは6/18、「当社営業部門の従業員の関与の疑われる不適切な取引の外部調査委員会からの調査報告書受領のお知らせ」を公表しました。4/30に設置した外部調査委員会でしたので、約一か月半。決算発表も間に合いそうな感じですね。

不正行為の概要

報告書では、「本件循環取引の中心的な関与者はあくまでもA社a氏であって、ショーエイはa氏発端の架空循環取引に巻き込まれ、その後はショーエイ担当者もC社を巻き込みマージン金額を決定し取引書類の外形を整えるといった点で能動的に協力して架空循環取引の規模を拡大してしまったものとの評価が妥当と考えられる。」とされています。

最近よく見るパターンですね。さらに報告書では、これら架空循環取引により発生した債権・債務は引き続き有効であり、ショーエイに72,313,162 円の利益が残る計算だとか。

発生原因

発生原因の中に、「アメーバ式経営」などと言う言葉が出てきます。各課又は各部ごとに営業目標が設定され、互いに独立した形で営業行為を遂行する体制のことだそうです。そのうえで目標の達成について上層部から強い要請があり、かつこの目標が毎年大きくなると。

まぁ、営利企業ですから当然っちゃあ当然なんですが、度が過ぎてたんでしょうね。「営業の評価においては数字の達成如何が非常に重要視される一方、数値目標を達成していた場合にはそれ以外の要素は良くも悪くもさほど考慮されない。」などという指摘もあります。

ショーエイの企業風土として、営業部門の偏重、営業個人の能力・スキルへの依存及び営業の数値目標への強い傾倒という3点があげられていました。人事考課においてコンピテンシーなんてのを設ける企業は増えたと思いますが、まだまだ上場企業でも実態はこんな感じですかね。