りらいあコミュニケーションズ(その3)東京電力エナジーパートナーに業務改善勧告

東京電力エナジーパートナーは9日、営業委託先である、りらいあコミュニケーションズが不適切な勧誘行為をしたとして、経済産業相直属の電力・ガス取引監視等委員会から業務改善勧告を受けたことを公表しました。同社が業務改善勧告を受けたのは18年10月以来、4度目だそうです。

不適切な勧誘行為

電力・ガス取引監視等委員会、なんてのがあるんですね。kuniは証券出身でしたので、証券取引等監視委員会にはいろいろとお世話になりましたが。ビミョーに「等」の位置が違います。

りらいあコミュニケーションズに委託していた業務は、東京電力から他社へ乗り換えた顧客を対象に、再度東京電力に切り替えてもらうための勧誘業務でした。この電話勧誘業務は成約数に応じて業務料が支払われる契約形態です。

この電話勧誘が高齢者等を相手にかなり強引に行われており、さらにその証拠となる通話録音が改ざん・捏造までされていたという事件でした。

改善勧告の内容は、「法令違反の原因となり得る事象を早期に把握、是正する仕組みの構築」、「需要家に対する説明方法の改善」、「業務委託先に対する監督方法の抜本的な改善」等必要な措置を講ずるとともに、同社および業務委託先の役員および従業員に周知徹底を図ること、だそうです。

成約数に応じて業務料を支払うという契約形態は即、見直す必要がありますね。

りらいあコミュニケーションズのその後

事件発覚後、7/7には諮問委員会を設置し、8/7には役員報酬の一部自主返上を公表。同日諮問委員会の検証・分析結果等も公表されています。この「諮問委員会の活動記録」はなかなか良いことが書かれてます。中でも共感できたのが次の一節でした。

「お仕着せの再発防止策をこなしていくだけでは何も変わらないので、諮問委員会は再発防止策をお膳立てすることはしない。経営陣が内省を深め、本音をぶつけ合って徹底的に議論する中で、「新生りらいあ」のビジョンを明確に描き出し、そこに至る道のりを全社員に指し示して牽引していくプロセスこそが、再生への第一歩である。」

マルウエア Emotet(エモテット)の猛威 亀屋良長が被害に

創業1803年、京都の和菓子の老舗、亀屋良長株式会社が保有するPC端末が、マルウエア「Emotet(エモテット)」に感染。同社からの情報流出や流出した情報を悪用されたなりすましメールが確認されたとのこと。9月1日に発生しています。

感染の経緯と影響

9/1、実在する同社従業員を名乗る人物から別の従業員に、請求書の連絡メールに偽装した添付ファイル付きのメールが送られてきます。受信した従業員が添付ファイルを開封し、「コンテンツの有効化」を許可したことでエモテットに感染したそうです。

感染後、エモテットの影響でいろんなことが起きているようです。社内で利用する共通メールアドレスに大量の不正メールが届いたり、同社と取引関係がある顧客情報が別の顧客に配信されるなど。

専門会社の調査によると、メールサーバー内に記録されている個人情報(氏名、住所、電話番号、メールアドレス、メール本文の内容)の流出が確認されています。ただし、クレジットカード情報は流出してないそうです。

Emotet(エモテット)の巧妙化

エモテットが9月に入って活動を活発化させているようです。亀屋良長はまさにその攻撃対象になってしまったわけですが、情報処理推進機構(IPA)には、同社以外にも感染の一報や問い合わせが急増しているとのこと。

手口も巧妙化しているようで、従来の添付ファイルはワードだったんですが、パスワードを設定した「zipファイル」を使用し、セキュリティ対策製品のスキャンをすり抜ける可能性のあるものも見付かっているみたいです。

領収書や請求書などのファイルは、ほとんどの場合マクロを必要としません。くれぐれも、マクロを実行させるための「コンテンツを有効にする」ボタンは押さないように。

アマゾンでも確約手続

9/4の日本経済新聞に、「アマゾン、公取委に改善計画 値引き分の補填要求巡り」という記事がありました。通販サイトでの値引き分の一部を納入元の事業者に補填させたとして公正取引委員会の調査を受けていたアマゾンジャパンの記事。今日は「確約手続」について。

独占禁止法

アマゾンジャパンは2017年ごろから、値引き分の一部補填のほか「利便性向上」などの名目で販売額の数%から数十%の負担を納入元に求めた疑いを持たれていました。公取委は2018年3月、独占禁止法違反(優越的地位の乱用)の疑いで同社を立ち入り検査しています。

対するアマゾンは、早期決着を図り、法令順守の姿勢を示すため、自主的な改善を確約することで排除措置命令などが免除される「確約手続」の適用を申請するといいます。ここでも出てきました、「確約手続」。

ゲンキー株式会社の記事でも紹介しましたね。確約手続というのは、平成30年12月30日に新たに導入された制度で、独禁法違反の疑いについて、公正取引委員会と事業者との間の合意により、自主的に解決するための手続です。

確約手続はTPP協定(環太平洋パートナーシップ協定)及びTPP11協定の締結に伴い、独占禁止法の違反の疑いについて、公正取引委員会と事業者との間の合意により自主的に解決する制度として導入されました。

確約手続の対象とならない場合

とても合理的な仕組みだと思いますが、この手続きの対象とならないケースもあります。

①入札談合、受注調整、価格カルテル、数量カルテル等(いわゆるハードコアカルテル)
②過去10年以内に同一の条項の規定に違反する行為について法的措置を受けたことがある場合(繰り返し違反)
③刑事告発の対象となり得る国民生活に広範な影響を及ぼすと考えられる悪質かつ重大な違反被疑行為

これらについては、違反行為を認定して、法的措置を採ることにより厳正に対処する必要があるため、確約手続の対象となりません。

読売新聞 台風10号への対応

特別警報級と言われていた台風10号。実際には特別警報は発表されず、上手い具合に日本列島をよけながら北上してくれました。まぁ、想定していたほどの大きな被害もなかったようです。9/6の夜から9/7午前にかけて通過ですから、新聞屋さんは大変だったでしょうね。

読売の粋な計らい

7日は珍しく新聞社のトップページを一通り眺めたんですが、読売のトップページに異変が。「台風10号の影響で、新聞の配達が遅れる場合があります。こちらから特別に朝刊紙面を公開しています。」というバナーというか、ボタンが登場してたんですね。

通常の「朝刊紙面」から入ろうとすると、当然ですがIDやパスワードを求められ、会員ではないkuniはここから先へは進めません。これ当たり前ですね。ところが上記のボタンからだと通常の9/7付け読売新聞朝刊が全て読めちゃうんです。

これなかなか良いアイデアですよね。他の新聞も同様のサービスしてるのかチェックしてみましたが、朝刊を開放していたのは読売だけでした。こういう災害時には電子版会員でなくても読めちゃうというのが定着すれば、新聞配達員も命がけで配達する必要もなくなるわけだし。

顧客に対しても、新聞配達員に対しても優しいサービス。とても良いサービスだし、他社との違いアピールできてると思うんだけど、次からは各社同じことをやってくるんでしょうね。

むしろ業界として、鉄道会社がやる計画運休みたいに定着させても良いのでは?災害時はあらかじめ宣言して配達を停止。その代わりネットでサービス提供しますと。配達員の安全を確保するのも新聞社の重要なガバナンスですよね。

ナイス(旧すてきナイスグループ) 創業家との決別

昨年、当ブログでも粉飾決算で取り上げましたナイスグループ。今年3月末、またナイスに商号変更してたんですね。2007年までの旧社名に戻っています。創業家の会長らが逮捕され、粉飾決算が発覚。9/3、この不祥事に対する改善対応の状況を開示しています。

おさらい

元会長が100%保有するA社、その100%子会社にB社という会社があります。このB社にナイスの約30億円の在庫物件を買い取らせていた。B社は資本上はナイスと一切関係ありません。ところがこのB社が買い付けに投じた30億円は、実はナイスから融資された資金。

資本関係はないが、元会長が支配する会社を舞台に、在庫物件を売却して、会計上認められない売り上げを計上し、利益も上げていたという事件でした。

当社元代表取締役会長らとの合意について

というのが開示のタイトルです。改善計画の中であげていた「粉飾決算主導者に対する責任追及」、、、これにに関しては、弁護士を通じて交渉を重ね、ナイスが被った損失の補てんとして元会長らから、1億4200万円の支払いを受けることになったそうです。

また、「創業家との決別」に関しては、創業家が発行済株式の100%を保有していた同社連結子会社(開示文書では2社の社名あり)の株式を、同社グループ会社で譲り受けることで合意したとのこと。

しかし、1億4200万円はちょっと少な過ぎやしませんかね。この粉飾決算で、東京証券取引所からは上場契約違約金として3360万円を徴求され、金融庁からは課徴金2400万円を納付させられています。違約金と課徴金の分は十分担えたという判断でしょうか。

改善対応は着々と進んでいるようですが、今年3月時点で、同社の10番目の大株主に元会長が残ったままですね。個人株主としてはトップ、2.43%で23万4千株の保有。創業家との決別、、、これだけはちょっと気になりますね。