証券投資 NT倍率に変化が(その2)

NT倍率が下げはじめました。この変化から何を読み取るべきなのでしょうか。マスメディアなどは、今のところあまり取り上げていませんが、何が起きようとしているのか、少し振り返ってみようかと。

二度あることは・・・

日経平均が6/8に23,178円で戻り高値を付けた際、そこまで上昇してきたNT倍率は低下しはじめ、6/15に最も低い値となりました。6/15には日経平均は800円近く下げて21,531円で終わっています。これが一度目。

その後7月にかけて相場は持ち直し、これに併せてNT倍率は再び上昇していきます。6月の調整後の戻り高値は7/15の22,946円。やはりこの間NT倍率は上昇しており、7/10に最大値を付け、月末に向けて低下していきます。日経平均は7/31日に600円近く下げて、21,710円まで調整しました。これが2度目です。

要するに日経平均が戻り高値をつけに行く過程でNT倍率が上昇し、下落に転じると日経平均の調整場面が来る。ということを二度経験しているわけですね。

三度あるかどうかは

この二度の経験は、物色される銘柄群の変化としても、多くの方が感じてらっしゃるのではないでしょうか。NT倍率が低下し始めるとき、いわゆる大型株や金融株がかなり買われています。

日経平均がそれなりに上昇し、買うものがなくなってきて、最も戻りの悪かった銘柄群(コロナの影響が大きくて普通は買えない銘柄群)にまで買いが移ってくるわけです。

そして、とうとう本当に買うべき銘柄がなくなって、、、急落。という構図ですね。さて三度目の調整はあるんでしょうか。今回のNT倍率の低下は、これまで以上にはっきりとした下げであり、日経平均株価は戻り高値を更新しました。「これぞ金融相場の始まり」という見方もあるかもしれません。

証券投資 NT倍率に変化が

14倍を超え、大きく上げてきたNT倍率に変化が出てきました。8/3の14.58を天井に下げに転じ、8/12には14.23まで下げています。特に8/11は日経平均株価が400円以上上げた中で、NT倍率は0.10ポイントの下げを見せました。こういうの久し振りのような。

NT倍率とは

Nは日経平均株価のN。TはTOPIXのTです。で、NT倍率というのは日経平均株価をTOPIXで割った数値のことで、株価指標の一つといって良いでしょう。例えば、22,700円くらいの日経平均株価を1,580円くらいのTOPIXで割って、14.37。こんな計算になります。

日経平均株価はその時代の優良株を採用する傾向があります。そのため一般的な銘柄と比べると値嵩株(価格の高い株)や輸出関連銘柄などが多いんですね。そのため、円安に振れると、これらの輸出関連株が買われて日経平均株価が上昇し、NT倍率も上昇する傾向があります。

一方のTOPIXは時価総額の大きい株の影響を受けやすいという特性があり、重厚長大産業や金融株の影響が出やすいです。ここ最近では日銀のETF買いがTOPIX型と言われ、日銀が買いを入れるとTOPIXが反応しやすいというのもありますね。

NT倍率は以前は10倍程度と言われてきましたが、ここ最近は14倍以上が定着してきた感じです。コロナショック時には大きく下げましたが、戻りの場面では14倍以上に急速に戻しました。日経225先物の売り方の買戻しが原因と思われます。

久し振りに見る方向性

このNT倍率が先々週から下げに転じたわけです。ここまではっきりした方向性を見せるのは久しぶりです。何が原因なんでしょう。日経225先物の単なるポジション調整なのか、ここまでの戻り相場が終了しようとしているのか、それとも超本格的な金融相場が始まろうとしているのか・・・。この辺りは明日にでも。

シンニッタン(6319) 配当金出し過ぎちゃった 財源規制違反

先月、リソー教育が配当金を出し過ぎてしまったというお話を取り上げました。この会社、過去に粉飾決算で特設注意市場銘柄に指定されたこともあるという前科者でした。シンニッタンの場合は、自己株式取得に関して財源規制違反を犯しており、その結果を受けて配当金でも財源規制違反となっています。

2回の会社法違反

今年2月、シンニッタンは1250万株、取得価額の総額57億円の自己株式の取得を実施しました。この自己株式取得が財源規制で定める分配可能額を超過していたわけです。

同社の開示した調査報告書によると、自己株式取得を決議した取締役会の議事録や関係資料、自己株式取得に係る稟議書において、自己株式取得が分配可能額の範囲内かどうか討議・検討した形跡は見当たらないとのこと。

続いて5月、取締役会において、2020年3月期の配当について、1株あたり10円の配当を行う剰余金処分案を株主総会に上程する旨の決議を行います。そして6/26、定時株主総会において、1株当たり10円、総額367,487,980円の配当を行う旨の決議を行い、配当を実施しました。

この配当も、財源規制で定める分配可能額を超過しています。調査報告書によると、剰余金処分案を決議した取締役会や、株主総会の議事録や資料において、この配当が分配可能額の範囲内かどうかを検討した資料は見当たらないとしています。

取締役も財務部も

とまぁ、短期間のうちに2回にわたり財源規制違反が発生したわけですが、その原因はというと、取締役及び関係者の多くは、自己株式の取得に財源規制が適用されること、配当に関しても分配可能額の算定上、自己株式の帳簿価額を控除しなければならないことを認識していなかったという結論です。かなりトホホなお話です。

おそらくリソー教育のように、第三者割当による自己株式の処分を行うことになるんでしょうね。全国の取締役の皆さん、財源規制の大枠ぐらいは理解しておきましょうね。

野村證券 元社員の投資詐欺に懲役6年

昨年、当ブログでも「野村證券 底なしの不祥事」の中で取り上げた投資詐欺事件。7/31、神戸地裁姫路支部で懲役6年(求刑は懲役8年)の判決が言い渡されたそうです。4人の顧客に対しうその投資話を持ちかけ、1億4000万円をだまし取ったとしています。

なぜか報道されない

このお話、実は2週間以上も知りませんでした。日本経済新聞も報道していませんし、大手新聞社もおそらく報道してないんじゃないでしょうか。野村自身でさえ、被害が広範に拡大することを恐れて、顧客向けお知らせ(注意喚起)も出していたように、この事件は要注目でした。

ある報道によると、元社員は姫路支店に勤務していたときの顧客や、元同僚の顧客など44人に架空の投資話を持ちかけていたことが伝えられています。そのうえで判決では4人としていますので、持ちかけられて実際に被害にあった顧客は4人ということでしょうか。いや、もっといるはず。

船橋支店の顧客

船橋支店の元同僚に紹介された顧客も被害者の一人のようで、数千万円を超える被害だとか。元社員が昔の顧客に持ちかけるケースは、あくまで元社員の詐欺事件であり、野村が負う社会的責任は限定的です。

しかし、現役社員である元同僚等が自身の担当する顧客を紹介したり、元同僚等が同顧客への勧誘行為に関与していたりすると、そうはいきません。さらに、そうした事実があるとすれば、どう考えても詐取したお金の一部は元同僚等へ還流しているはずです。

昨年時点で一部の週刊誌も、現役の社員が顧客を紹介したり、勧誘に関与していたことを伝えていました。元同僚等の現役社員の関与等について、今回の公判でその一部でも明らかになっているんであれば、野村は公表すべきですよね。現役社員をクビにしたのちに、元社員の犯行として公表するのではなく。

天馬  当社企業価値向上に対する考え方についてのお知らせ

長男、次男、四男の家筋にダルトンという投資ファンドが絡み、ドロドロの関係に。そして株主総会では、ベトナムでの贈賄事件に関与した可能性がある3名の取締役が外れることになりました。8/7、「当社企業価値向上に対する考え方についてのお知らせ」を公表しています。

お知らせに関する問合せ先

このお知らせ、問合せ先に「常務執行役員総務部長 金田 宏」とあります。先の株主総会で否決、取締役を外れた金田氏ですね。株主総会で取締役は外されたけど、そのあとの取締役会で常務執行役員に選任されたということのようです。こりゃまだまだドロドロ、続きそうです。

お知らせの中身

ここからが本題です。お知らせでは、同社の企業価値向上に対する考え方として、次の3つがあげられています。① ガバナンスの向上 ② 収益性の向上 ③ 資本政策の強化 。しかし、ガバナンスと収益性についてはほぼ中身なし。というか、資本政策を打ち出すだけでは、、、ということでおまけで付けられたって感じですね。

で、資本政策の強化なんですが、これも非常にシンプルで、100億円規模の自社株買いですと。これまでも実施してきてるわけで追加の100億円。なんの目新しさもありません。新体制が機能しているところをそろそろアピールしないと、、、って感じですかね。

まぁ、とにかく中身のないお知らせでしたが、少々気になるところ。お知らせの中に従業員に対する「何か」がまったく感じられないことです。そもそもベトナムでの贈賄事件にしても、取締役の不祥事です。社長による従業員へのパワハラなんて話もありました。

株主至上主義からすべてのステークホルダーへと、世の企業が目線を変えていっている中、ここまで最も迷惑している従業員たちへの目線が感じられないんですね。冒頭にも書きましたが、社内はドロドロで、取締役らが自分たちの保身以外に目を向けられていない。そんな感じがします。