大和ハウス工業 またやりました建築基準不適合

中国の合弁子会社で横領が発覚した大和ハウス工業。今度は建築基準不適合が2,000棟見つかったとのことです。以前、東京本店の元営業所長が建設事業を巡って取引先から約4千万円のキックバックを得て、所得隠しを指摘されたという事件も。特にこのキックバックの件については、同社は何も開示しなかったため、企業としての姿勢に疑問を感じさせました。

ガバナンスは機能したのか

この件については以前書いたように、開示しなかっただけにとどまらず、当の元所長が同社から何のお咎めもなく退職金ももらって自主退職したとも言われています。中国子会社の件もまさにガバナンスが行き届いていなかった証左でしょう。そして今回の建築基準不適合。よくいわれるところの、経営と現場の乖離がかなり進んでいるように見えます。

今回の例でいえば、本社は基準に適合するためのルールや手順を適切に定めた。ただ、現場がその手順を守っていなかった。ということ。現場で手順等がしっかり守られているかを、本社、経営がしっかりチェックする態勢に不備があったと言わざるを得ません。今回、唯一の救いは、同社の内部通報によりこの事案が表面化したこと。と言いたいところですが、なんとこの内部通報、2016年の12月だそうです。丸2年以上かかってたんじゃ、、、話になりませんな。

不正の連鎖

しかし、今回の大和ハウスの建築基準不適合。同社の立ち消えになりそうだった内部通報が日の目を見たのは、おそらくレオパレス21の施工不良事件が世間を騒がせたからだと思われます。界壁の問題に始まり、防音性や耐火性能など、かなり専門的なレベルで施工不良が見つかり、メディアがこぞって報道してきました。そのため、これら施工不良に対する世の中の目線が、かなり上がってきています。

「オイオイ、うちの物件のケースもヤバいんじゃないか」とか、「こうなったら公表するしかない」、「公表するんなら早めの方が良いんじゃないか」といった見方が社内に醸成され始めたんでしょう。自動車各社で検査関係の不正が一気に他社に飛び火して行きましたが、これと同じメカニズムです。

これまでであれば、「まぁこの程度の施工不良や手順違いはこの業界には付き物だ」、くらいに思われてきたようなことが、一気に社会悪に見えてき始めます。検査関係の不正でも見られた不正の連鎖。建設業界でも同じことが起きそうですね。大和ハウスの建築基準不適合はまだ始まりにすぎないのかもしれません。

レオパレス21 アップデートが間に合わないよ

つい先日アップデートしたと思ったのに、またまた施工不良が拡大したとのニュース。調査すりゃ、出てくる出てくるみたいな。アップデートが間に合いません。で、これまでに公表していた数字との関係性が良く分からなくなってきました。ということで、ちょっとその辺りを整理してみましょう。

物件不備1万4千棟に拡大 レオパレス、調査の7割超

これ、4/11の産経新聞のタイトルです。「調査を終えた約2万棟のうち、7割を超える1万4599棟に拡大したことが分かった」と伝えてるんですね。どえらい数字になったなぁ、というインパクトありです。で、記事の最後の方で、このうち7514棟は隙間があるなど、軽微な不備としています。メディアもこれだけ話題になってくると、できるだけ読者の目を引く数字を使いたいんでしょうが、これは少しやり過ぎかと。

公表される数字に一貫性がないというか、基準をしっかり押さえておきたいですよね。ということで、今回レオパレス21が3/31時点で公表したデータを基準に数字を整理しておきます。

 レオパレス全棟合計 39,085棟
 調査判定済み合計  20,285棟(判定済み率51.9%)
 不備あり  合計  7,085棟(不備率34.9%)
 

7割を超える1万4599棟 とは

レオパレス21の公表した一覧表形式の資料としては、上記のような構成になっています。そのうえで注記として、不備ありとはカウントしていない、軽微な不備7,514棟を確認していることが記載されているんですね。詳細については書かれていないんですが、この軽微な不備は随時補修を進めるとしていますので、入居者の転居等が必要ないもののように見えます。新聞各紙はこの数字を上乗せして、1万4599棟を強調しています。

転居しなければならない人達

以前の新聞記事で、「400棟に住む4518戸の入居者が転居を迫られる」という表現がありました。ここから1棟10人程度の入居者が居るとします。すると、3月末で判明している不備ありとされた7,085棟をかけると、7万850人の転居が必要になります。

さらに、調査判定をこれから実施する対象が、ほぼ2万棟残っているということは、この2倍にあたる14万人が転居を要することになります。いやぁ、もの凄いことになってきますね。kuniの田舎は人口3万人くらいの市です。その街の住民が全員、かつ5回転居するようなものです。

今回の試算はあくまで足元までのデータで、かつ、軽微な不備とされたものは転居不要との前提を置いたうえで、引き延ばしてみたものです。あくまでご参考ということで。

投資商品に関する意識調査 金融庁

4/10 日本経済新聞で「投資商品の比較「説明なし」7割 金融庁調査」というタイトルの記事が掲載されました。かなり唐突感のある記事でしたので、金融庁の公表資料を確認してきました。正式なタイトルは、『リスク性金融商品販売にかかる顧客意識調査について (インターネット調査結果分析の中間報告)』となっています。

調査の背景・目的

金融庁は、2017年3月に「顧客本位の業務運営に関する原則」を公表しました。併せて,その定着度合いを客観的に評価する「自主的な成果指標(KPI)」の策定・公表を働きかけ、金融事業者は顧客本位の業務運営に取り組んできたわけです。

その取り組み状況を検証するため、金融庁は金融事業者の経営陣・本部・営業現場に対し、モニタリングを実施。各金融事業者の「取組方針」と取組みの実態とが乖離していないか検証もしています。

今回の顧客意識調査は、 「原則」を公表して2年が経過する中、「顧客本位の業務運営」の定着・浸透に向けた金融庁の金融事業者に対する取組み(指導)が、顧客に適切に届いているのかどうかを検証する目的で行われたもの。ということです。この一連の流れといいますか、PDCAのサイクルを頭に入れたうえで、調査結果を見てみましょう。

顧客意識調査の調査対象者等の前提

調査はインターネットと郵送により行われています。インターネットでの調査対象者は、全国の20歳以上の個人(金融機関従事者を除く)で、 リスク性金融商品の購入等にあたり、意思決定に関与する人で、有効回答者数は6,259人。一方、郵送による調査対象者は、全国の60歳以上の個人(金融機関従事者を除く)で、リスク性金融商品の購入等にあたり、意思決定に関与す る人で、有効回答者数は1,500人だそうです。

リスク性金融商品の定義は、「外貨預金、仕組預金、投資信託、貯蓄性保険(終身保険や個人年金保険、養老保険など、貯蓄性を重視し た保険)、仕組債、外貨建て債券、株式(含む自社株式、従業員持株)」。

インターネット調査対象者と郵送による対象者(高齢者が中心)の数の違いにやや違和感がありますが、今回公表されたのはインターネット調査の方でした。

まとまらないまとめ

今日の記事は調査の目的や前提の説明でこんな文字数になってしまい、金融庁の宣伝で終わってしまいます。「8割が、リスク性金融商品の購入後、フォロー・アドバイスを受けていない、あるいは、ほとんど受けていない。」という結果など、今回日経が伝えている「投資商品の比較「説明なし」7割」と同じくらいドキッとするアンケート結果が、他にもたくさん出てます。金融関係者はぜひチェックしてみてください。

スルガ銀行再建策

4/10 日本経済新聞でスルガ銀行の再建策について報道がありました。りそなHD、SBIHD、新生銀行の3金融機関に加え、なぜか家電量販店のノジマが支援に名乗りを上げているんだそうです(ノジマの本社は横浜で、神奈川、静岡で約100店舗展開してます)。また、例によって「複数の関係者によると・・・」という記事でして、ソースがはっきりしませんが、おそらく情報の多くが金融庁関係者からリークしているような感じです。

金融庁のプラン

記事中に「株価が500円強まで低下し、時価総額は1200憶円、割安感が出たため、金融庁も2018年度内には決まるだろうと見ていた」などと書かれています。金融庁としては、資本提携や資本参加といった形で、いずれかの金融グループ傘下に収まることを期待していたと思います。

ところが、本命と思われていたりそなHDは、あくまで資本提携ではなく業務提携にこだわったとか。まぁ、当のりそなHDにしても、先日書いたように、自行におけるレオパレス21絡みの不良債権化問題等もあり、スルガ銀行の救済どころではないんでしょうね。ただ、今後のサブリースショックの破壊力次第では、2行一緒にしておいて、最終的に公的資金の注入なんていう大技もありかもしれません。二度とそんな光景は見たくないんですけど。

4陣営の見立て・思惑

記事を読んでいて少し気になることが。「個人に強いスルガ銀行の顧客基盤を使えば相乗効果が出る可能性がある」というSBIの見立てです。いや、微妙な書き方ですが、この見立ては日経によるものですかね。いずれにしても、ここでいう「個人に強い」とか「顧客基盤」って、幻想に過ぎないですからね。

他にも、不祥事後も貸出金利回りが3.35%だとか、実質業務純益が423憶円で、ライバルの静岡銀行を上回るなどという見立てもあります。これらも決して将来のスルガ銀行を表したものではありません。

投資用不動産向け融資の多くが不正な融資であり、過去数年間、地銀の中の優等生と言われてきた、その営業力は虚構だったわけです。加えてこうした不正融資の餌食になった顧客は少なからず同行から離反していくでしょう。顧客基盤も大きく傷ついているはずです。

スルガ銀行は十分な引当金を積んだとみられているようですが、これもあくまで不正である可能性が高い融資分だと思われます。それ以外の投資用不動産に対する融資も(たとえ不正がなかった案件だとしても)、サブリースショックの規模次第では不良債権化する恐れはあると思われます。こんなことも含めてですが、4陣営ともに、やや見立てが甘いように感じます。不良債権処理の規模等の精査が進むと、まだまだ、このお話二転三転ありそうですね。

企業不祥事 アップデート 住友重機 IHI レオパレス21

2018年に一気に噴き出した検査不正という企業不祥事。今年になってあまり見かけなくなってきたと思っていましたが、やはりまだまだ出てきます。第3社委員会の設置など、真因分析やその他不正事案の徹底調査が行われることが一般的になったため、不祥事を発表した企業が、その他の不正等についても発見し、追加で公表するケースも増えてきました。

これはこれで良いことなんですが、やはり残念ですよね。ということで、3社の追加事案等について、アップデートしておきます。

住友重機工業

今年1/24に、本社とグループ3社で検査不正があったことを公表した住友重機。動く歩道の定期点検やスキーリフトの駆動装置関連などで無資格者が点検したり、、、とかいうあの件です。去年の6月以降相次いで不正を発表している同社ですが、また新たな検査不正が追加されました。

3/28公表の検査不正の内容は、一つ目が、半導体製造装置向け部品の検査に関する遡り調査で約2000件の不正が追加されたというもの。二つ目に、子会社の住友重機ハイマテックスでも約3000件の検査結果の書き換えなどが見付かったというもの。この公表に併せて、社長の報酬を2か月間2割返上すると発表していますが、果たしてこれで打ち止めなのか。

IHI

3/5に日本経済新聞の報道で、航空機エンジンの整備事業において無資格者による検査が行われていたことが発覚したIHI。その後、3/29には経済産業省から行政処分を受けており、不正があったエンジンが209基に上ったことも明らかになりました。

その後4/6にはエンジンの整備だけではなく、エンジン部品の製造過程においても検査不正をしていたことが報道され、4/9には国土交通省がIHIを行政処分したことも報道されました。結局今回見つかった検査不正は、エンジン整備と部品製造を合わせて、約14,000件だそうです。内部通報が発端ではあったが、上手く活かすことができなかったことも伝えられています。

米国ではボーイングが、737MAX 2機の墜落で大変なことになっています。制御システムのソフトの不具合が主因のようですが、IHIが製造した部品が原因の一つとかになっていたら、この会社潰れますよ。航空機でこんないい加減なこと出来ちゃう感覚、理解できません。

レオパレス21

こちらは新たな施工不良等のニュースではありませんが、レオパレス21の入居率の話題をアップデート。4/6付け日経では、同社が管理・運営するアパートの3月の入居率は84.33%に低下したとのこと。同社の場合は新年度が始まる直前の3月が、1年を通じて入居率のピークになることも紹介しています。にもかかわらず、前月から1.24ポイント低下しているんですね。

入居率は過去1年で10%低下してきましたが、このまま低下し、80%前後まで下がると、逆ザヤになる(オーナーに保証する家賃を実際の賃料収入が下回る)ようです。この辺りの数字は覚えておいた方が良さそうです。