株式会社スマートアセットマネジメントに対する行政処分

少し前になりますが、9/20 関東財務局は株式会社スマートアセットマネジメントに対して、行政処分を行い、金融商品取引業者としての登録を取り消しました。この会社、ネット等ではベストプランナー投資顧問という名称で活動していたようです。

登録取り消し

各地の財務局が検査に入ろうとした際など、登録を受けた会社の所在地に業者が存在しないことで「登録取り消し」というのはよくあるんですが、財務局が検査を実施し、監視委員会経由で金融庁に勧告したケースで、登録の一発取り消しは珍しいかもしれません。

スマートアセットマネジメントをネットで検索してみると、ベストプランナー投資顧問の名称や代表者の高見氏の名前やら、出るわ出るわ。悪い評判というやつ、口コミ情報と言うんですかね。

違反行為の概要

見込み顧客へのメール配信における、銘柄分析・選定者の虚偽と、助言実績に関する虚偽が金商法の虚偽告知に該当するとしています。また、投資助言業者等を比較するサイトにおいて、銘柄分析・選定者や、助言実績に関して著しく事実に相違する表示があり、金商法の「著しく人を誤認させるような表示」であるとしています。

気を付けよう 悪質な街の投資顧問

今年3月にも、AAA投資顧問株式会社が行政処分を食らっていました。ここは業務停止命令でしたが、やはり嘘の投資助言実績で投資顧問契約を取ろうとしていました。一時期はこの手の街の投資顧問は絶滅したのではと思ってましたが、また最近復活してきているみたいです。

投資詐欺等の口コミサイトなんかを見ても、この手の悪質業者に対する情報がわんさか出ています。相場の世界で「必ず」とか「間違いなく」儲かる、なんてことはありません。ましてや、他の人が知らない耳寄り情報なんてのも。行政処分の内容の通り、メールやサイトでの宣伝には嘘も沢山あります。こういう悪質な業者に騙されたりしないよう、気を付けてくださいね。

野村證券 → 日本郵政 → 金融庁

野村證券は不適切な情報伝達問題で、4月のかんぽ生命の売出幹事証券から外され、今秋の日本郵政株式の3次売却においても主幹事から外れました。今度は野村を外した郵政グループのゆうちょ銀行とかんぽ生命が不正販売。ゆうちょ銀行とかんぽ生命の件は金融庁から行政処分を受けることになるでしょうね。

野村 日本郵政の意趣返し

野村がかんぽ生命や日本郵政の売出しにおいて幹事を外れたのは、野村不動産の買収交渉が上手くいかなかったことに対する日本郵政の意趣返しでは、、、と言われたことがありました。野村から話を持ち掛けておきながら、野村が途中で降りてしまった。みたいな。

この両社の間には、当初野村が日本郵政を振り回し、その後野村が不祥事で躓くと、日本郵政がやり返す、みたいな面白い展開があったわけです。

日本郵政と金融庁の関係も

しかし、今度は日本郵政傘下のゆうちょ銀行とかんぽ生命が不正な販売や契約という話になってしまいました。新聞等では金融庁が行政処分を行うかどうかに注目。などと言ってますが、間違いなく処分は出ると思います。実はここでも両者に因縁の関係があるんですね。

そう、ゆうちょ銀行が扱う貯金の預入限度額を1300万円から2600万円に倍増した件です。金融庁は、大幅な預入限度額の引き上げは民業圧迫につながるとして、強く抵抗してきました。しかしながら、参院選をにらんだ政治決着の流れに押し切られてしまいました。金融庁が日本郵政にしてやられた格好です。面目丸つぶれですね。

それから半年、今度は郵政がやらかしてしまったわけです。当然金融庁の出番です。まさに意趣返しといった展開になりそうです。

客観的に見ても

野村と日本郵政、日本郵政と金融庁、という意趣返し合戦の構図を見てきましたが、今回のゆうちょ銀行とかんぽ生命の不正は、過去の経緯を切り離し、客観的に見ても、金融庁が日本郵政に行政処分(業務改善命令)を発出する十分なレベルだと思います。日本証券業協会のガイドライン違反に、保険業法違反。ここで処分を行わないと、今後のその他金融機関に対する検査と処分に大きな影響を与えてしまいます。

最近の行政処分事例としては野村證券がありました。野村の不適切な情報伝達の件、法令や規則には違反していません。それでも金融庁は「業務の運営の状況に関し、公益又は投資者保護のため必要かつ適当であると認められるとき」、と判断し、金商法第51条の規定による業務改善命令を出しています。

野村證券に業務改善命令

またまた野村です。金融庁は野村証券と野村ホールディングスに金融商品取引法に基づく業務改善命令を出す方針を固めたという報道です。東京証券取引所の市場区分見直しに関する情報を一部の投資家に漏えいした問題についての金融庁の判断ですね。野村証券に対する行政処分は2012年のインサイダー問題以来だそうですが、ここのところ不祥事だらけで常連さんのイメージです。

大崎貞和フェロー

情報を流したのは野村総合研究所の大崎貞和フェローという人物。東証が設置した市場区分に関して議論する有識者懇談会のメンバーです。この「市場構造の在り方等に関する懇談会」での議論・情報を野村証券のストラテジストや機関投資家を顧客に持つ営業員に伝えていたというお話。

この事件は3月下旬に発行されたFACTAという雑誌が報道していました。この情報が機関投資家に対して、野村証券のビジネスとして提供されていることから、会社ぐるみの対応ではないかとも言われています。大崎氏はこの報道を受けて政府の国会同意人事案から外されたりしてますね。

漏えいした情報

実際に機関投資家等に提供された情報というのが、「東証は一部上場・降格基準を250億円にしたい意向」というものらしいです。当時、降格基準は時価総額500億円ではないかとの観測がありました。そのため500億円未満だからとして売られていた銘柄は、買戻しが入るかも、、、みたいな感じで情報提供されているらしいです。

これって情報漏えいではなく、立派に積極的な情報提供ですよね。金融庁はインサイダー取引には当たらないとしているようですが、一連の行為は相当酷いです。ただ、一方で、「野村は主幹事企業の一部上場という地位を守るために、意図的に情報を流して議論を潰したのではないか」なんていう見立てまであるようです。

コンプライアンスの鬼門 プロフェッショナル

今回の業務改善命令、主役は政府が頼りにするほどの有識者。いわゆるプロフェッショナルはコンプラ的には非常に扱いにくい存在です。高度な専門性を有するが故、企業は非常に高い報酬で報います。高収入の彼らは一般的な社員とは別という感覚を持ちやすく、そのため会社のルールを守らない傾向が強いんですね。また、この手の輩は短期間で企業を退職し、別の企業に転職していく傾向もあり、会社に対するロイヤリティも低くなりがちという事情もあるような気がします。

終身雇用や年功制が廃止される方向に進んでいますが、一方で会社を次から次へと渡り歩く専門性の高い社員達に対して、コンプライアンスをいかにして徹底していくか。これは意外に大きくて、新しい課題だと思います。