公正取引委員会 IPO公開価格を巡りみずほ証券に対して注意

公正取引委員会は4/13、みずほ証券株式会社に対して、独占禁止法(優越的地位の濫用)の規定の違反につながるおそれがある行為として注意を行いました。新規株式公開(IPO)で、「公開価格」を設定する際、主幹事証券の優位な立場から一方的に低く値決めした行為がみられたということです。

「注意」の概要

みずほ証券は上場するみずほフィナンシャルグループの証券子会社です。問題視されたのは、2020年6月~21年5月に、IPOで主幹事を担当した21社のうちの2社。企業が他の証券会社から聞いた意見等を参考にせず、企業側の主張を下回る想定発行価格を提示するなどしたとのこと。

この2社は上場後の「初値」が公開価格の倍以上となり、公取委は「より多くの資金を調達できた可能性があった」と問題視しました。独禁法違反が疑われた場合、公取委は、違反の再発防止を求める「排除措置命令」、行為の取りやめを求める「警告」、違反はないが未然防止のため口頭で行う「注意」、の対応を取ります。今回はこの中の「注意」にとどまったということですね。

公開価格設定プロセス等に関する実態把握

実は昨年1月に公取委は、「新規株式公開(IPO)における公開価格設定プロセス等に関する実態把握について」という報告書を公表しており、今回のみずほの件はこの時点で把握されていたものと思われます。この昨年の報告書で、「今後は追及するぞ」としていて、今回はそれより2年遡った事案に対するもの。当然、「注意」ぐらいしかできません。

しかし、なぜこのタイミングで「注意」なんかわざわざ出したんでしょうね。昨年1月以降にあくどいことを続けている証券会社が、このあと挙げられるってことかもしれません。

五輪テスト大会談合 強制捜査 博報堂などにも拡大

東京五輪・パラリンピックのテスト大会事業を巡る入札談合事件。さらに拡大中です。東京地検特捜部と公正取引委員会による捜査、当初名前があがっていた電通、セレスポに加え、広告大手の博報堂、東急エージェンシー、イベント制作会社のセイムトゥー、テレビ番組制作会社のフジクリエイティブコーポレーションの4社にも。

やはり出てきた

ある程度予想はされていたと思いますが、博報堂などズルズルと出てきましたね。ADKホールディングスは独禁法の課徴金減免制度(リーニエンシー)に基づき、違反を自主申告したため、今回の捜査の対象にはなっていません。組織委員会元理事らの汚職事件で元社長らが起訴されたADK。同社の自主申告が他社捜査開始の起点になっています。

ADKが違反を自主申告し、「入札で受注調整があった」などとゲロってるようですから、他社が不正がなかったと証明するのはかなり難しそうです。

フジクリエイティブコーポレーション

今回捜査された企業の中で気になるのが、フジクリエイティブコーポレーションという会社。そう、フジテレビの持株会社であるフジ・メディア・ホールディングスの子会社です。フジテレビとは兄弟会社みたいな構図ですかね(実質的には子会社みたいなものだと思われます)。

組織委員会元理事らの汚職事件の時は報道機関がこぞって取り上げ、毎日のように批判的な報道を繰り広げていましたが、今回のテスト談合に関しては、テレビであまり取り上げられていないような気がします。テレビ業界からも課徴金食らいそうな企業が出てきた途端に・・・。自らの業界と広告主には甘い。まぁ、いつものことですかね。

医薬品入札談合 学校PC入札談合

10/13、独立行政法人「地域医療機能推進機構」(JCHO)発注の医薬品の入札を巡る談合事件に関し、東京地検特捜部と公正取引委員会は、独占禁止法違反(不当な取引制限)容疑で卸大手4社を家宅捜索しました。10/14には広島県の学校用パソコン入札でも談合が。

医薬品入札談合

捜索を受けたのはメディセオ、アルフレッサ、スズケン、東邦薬品の4社です。昨年11月に公正取引委員会が強制調査を行っていた件ですね。2018年6月の入札では、発注総額約739億円。2016年の入札も今回捜査の対象のようです。各医薬品のグループをどの社が受注するかを事前に調整していたということです。

しかし、一回あたりの金額デカいですね。とはいえ、1社あたり200億円程度、その2%として課徴金は4億円とか、、、そんなレベルでしょうか。ただ、これ1回分ですから、他の年にもやってればこの2倍や3倍になることもあります。

学校PC入札談合

こちらは、広島県や広島市が発注する学校用パソコンなどの入札で、談合を繰り返した疑いが強まったとして、公正取引委員会が14日までに、計14社の関係先を独占禁止法違反(不当な取引制限)容疑で立ち入り検査したという報道です。

立ち入り検査を受けたのは、NTT西日本、大塚商会、NTTビジネスソリューションズ、NTTフィールドテクノ、富士通リース、ソルコム、ハイエレコン、北辰映電、呉電子計算センター、中外テクノス、田中電機工業、新星工業社。これで12社。あと2社が分かりません。

公正取引委員会は、学校向けのパソコンやタブレット端末の市場が拡大する中、業界に適正な競争を促すことを目指しているとみられます。今回はあくまで広島のお話。他の自治体でも出てきそうですよね。この事件、かなり拡大していくかもしれません。

アマゾンでも確約手続

9/4の日本経済新聞に、「アマゾン、公取委に改善計画 値引き分の補填要求巡り」という記事がありました。通販サイトでの値引き分の一部を納入元の事業者に補填させたとして公正取引委員会の調査を受けていたアマゾンジャパンの記事。今日は「確約手続」について。

独占禁止法

アマゾンジャパンは2017年ごろから、値引き分の一部補填のほか「利便性向上」などの名目で販売額の数%から数十%の負担を納入元に求めた疑いを持たれていました。公取委は2018年3月、独占禁止法違反(優越的地位の乱用)の疑いで同社を立ち入り検査しています。

対するアマゾンは、早期決着を図り、法令順守の姿勢を示すため、自主的な改善を確約することで排除措置命令などが免除される「確約手続」の適用を申請するといいます。ここでも出てきました、「確約手続」。

ゲンキー株式会社の記事でも紹介しましたね。確約手続というのは、平成30年12月30日に新たに導入された制度で、独禁法違反の疑いについて、公正取引委員会と事業者との間の合意により、自主的に解決するための手続です。

確約手続はTPP協定(環太平洋パートナーシップ協定)及びTPP11協定の締結に伴い、独占禁止法の違反の疑いについて、公正取引委員会と事業者との間の合意により自主的に解決する制度として導入されました。

確約手続の対象とならない場合

とても合理的な仕組みだと思いますが、この手続きの対象とならないケースもあります。

①入札談合、受注調整、価格カルテル、数量カルテル等(いわゆるハードコアカルテル)
②過去10年以内に同一の条項の規定に違反する行為について法的措置を受けたことがある場合(繰り返し違反)
③刑事告発の対象となり得る国民生活に広範な影響を及ぼすと考えられる悪質かつ重大な違反被疑行為

これらについては、違反行為を認定して、法的措置を採ることにより厳正に対処する必要があるため、確約手続の対象となりません。

クラレ 活性炭談合で課徴金 7,147万円

クラレは公正取引委員会より、東日本地区および近畿地区の浄水施設、ごみ焼却施設等の一部で使用される特定活性炭の製造販売に関して、独占禁止法に違反する行為があったとして、 7,147万円の課徴金納付命令を受けました。

課徴金納付命令は11社

課徴金納付命令を受けたのは11社。このうち上場企業はクラレだけのようです。談合の調整役は本町化学工業株式会社という企業で、入札等に先立ち、クラレを含むその他の企業に対し、落札者を決めたり、落札者に協力するよう調整をしていたというものです。メディアでは調整役と書かれてましたが、まさに元締めって感じですね。

公取委の命令書では、「遅くとも平成25年10月24日以降」、こうした談合行為が行われていたと書かれています。また、「東日本地区と近畿地区で」ほぼ同じ企業が談合に加わっていて、かなり昔から慣習のごとく続いてきた行為のようです。

公取委としては、公共の利益に反して、活性炭の取引分野における競争を、実質的に制限していたことに対して法令違反を認め、課徴金を科したわけです。一方で、公正な競争が行われなかった結果として、自治体等は高い支払いをしてきたわけですから、当然損害賠償請求なんてことになるんでしょうね。

クラレは平成29年1月に参入

さきほど「遅くとも平成25年10月24日以降」と書きましたが、クラレについては「平成29年1月1日以降」となっていました。ガバナンスやコンプライアンスがまだまだ緩かった時代ではなく、一昨年にこの談合に加わったという事実。

クラレではこの年、コンプライアンス体制を整備・運用していくため、「リスク・コンプライアンス委員会」が設置されています。皮肉な結果ですね。ちなみに、クラレでは取締役への業績連動型報酬や、ストックオプション制度が設けられているようですが、クローバック条項※は見つかりませんでした。

※ クローバック条項は、何らかの経営判断の誤りで損失が出た場合に、経営陣から在任中の報酬を取り戻す条項のことです。