タカタ元社員に課徴金 監視委が勧告 インサイダー取引

3/2 日本経済新聞で、証券取引等監視委員会が経営破綻したエアバッグ大手タカタの元社員9人がインサイダー取引に関わったとして、元社員に計773万円の課徴金を納付させるよう金融庁に勧告したことを伝えています。

記事では、「①事業の譲渡」という重要事実と、「②民事再生手続き開始の申し立て」という重要事実をチャンポンに書いているので非常に分かりにくかったんじゃないでしょうか。ここで少し整理しておきましょう。

重要事実①:キー・セイフティ・システムズ社への事業譲渡

平成29年6月26日にタカタはキー・セイフティ・システムズ社への事業譲渡という重要事実を公表します。それより前、業務執行を決定する機関が事業を譲渡することを決定したことを知りながら、5/11~6/6の間に6名が株式を売り抜けています。日経はこちらの重要事実である「事業譲渡」のケースを初めてだと書いてるわけですね。

重要事実②:民事再生手続開始の申し立て

同じ6月26日にタカタは民事再生手続開始の申し立てという重要事実を公表します。それより前、業務執行を決定する機関が事業を譲渡することを決定したことを知りながら、5/19~6/13の間に3名が株式を売り抜けています。このように合わせて9名の社員が重要事実を会社が公表する前に売り抜けたわけです。

課徴金の額の計算方法

9名はいずれも株価が400円~500円の間で売却しています。その後株価は下げ続け、公表日の6/26には160円まで下げました。そして公表後は2営業日で125円下げ35円になっています。課徴金の計算は、この公表後の2週間の最安値15円を基準に計算されています。

482円で4,100株を売却した社員の場合は
(482円×4,100株)-(15円×4,100株)=1,914,700円
と計算され、1万円未満の端数を切り捨てて、191万円が課徴金として課されています。

要するに、本来重要事実を知り得てから2週間以内に、最も下手な売り方をしたのと同じことになりますね。

インサイダー取引は他人事じゃない

インサイダー取引なんて言うと他人事のように思ってらっしゃる方が多いと思います。そんな悪いことしないよと。しかし、この事例はどこのサラリーマンにでも起こり得る状況です。この9名が一生懸命会社のために働いてきた社員であったとしたら、彼らも被害者です。

会社に勧められて持ち株会でコツコツためてきたのに、ある日突然無価値になるかもしれない。おまけに職も失うことになるかもしれない。200万円くらいの価値があるうちに売れれば。。。この極限状態でこういう誘惑に勝てなかったんですね。いや、法令違反になり課徴金が、、、なんてこと全く知らなかった人もいたかもしれません。

ソーシャルレンディング エーアイトラスト 監視委員会が再び勧告

2/22 証券取引等監視委員会はインターネット経由で融資を紹介するソーシャルレンディング業者のエーアイトラストを行政処分するよう金融庁に勧告しました。同社への処分勧告は昨年12月7日にも行われており、併せて建議も行われました。その後、12/14には金融庁から、すべての金融商品取引業務について1か月間の業務停止命令を含む行政処分が行われています。

最初に処分勧告を受けた時にも当ブログで取り上げました。「ソーシャルレンディング業者のエーアイトラスト株式会社」「ソーシャルレンディング 金融庁は」の二つの記事も併せてお読みいただければ。。。

やはり溶け出していた資金

やっぱりこの会社おかしいですね。一度の立ち入り検査で2回も処分勧告食らう会社ってkuniも聞いたことありません。前回、当ブログで取り上げた時点では、集めたお金がどうなったのかについては全く分からない状況でしたが、今回はその辺りが少し解明されたようです。

取締役の山本幸雄氏が同社に紹介したファンド貸付先から、山本氏が実質的に支配する法人に、少なくとも15億8千万円が流出しているそうです。これを受けて同社のホームページでは、山本氏を解任したという役員異動のお知らせが出ています。また、「山本氏及び同氏が実質的に支配する法人に対する法的措置を検討する」とも書かれています。

勧告の内容

一つ目は、高速道路事業を貸付対象事業とするファンでにおいて、大手ゼネコンJVの名称を用いるなどして、あたかも国土交通省から発注を受けた事業の孫請けをしている業者へのレンディングに見せかけ、実はそうした実体のない貸付だったというもの。もう一つも同様に実体のないファンドであり、この二つについては「虚偽の表示」を認めています。

三つ目に、実態のないファンド、とまでは立証できなかったようですが、取得勧誘時の「30億円をボトムラインとして」という説明の仕方が、最低でも30億円の売り上げが予定されているかのような誤解を招くとして、「誤解を生ぜしめるべき表示」であると指摘されています。こちらは「虚偽の表示」と比較するとやや軽めの指摘です。

そして最後に、平成29年2月から30年11月までの募集総額52憶円のうち、少なくとも15億8千万円が流出していたという指摘です。態勢面では、事業実態や貸付先におけるファンド資金の使途等を把握するための管理態勢、および貸付実行後のモニタリング態勢について言及しています。

おまけ

以前この会社のHPには役員が紹介されていたと思うんですが、今は役員名簿が載ってません。さらに、今回解任された山本という取締役、就任が去年の10月なんですね。流出したお金を集めていたころはこの人取締役じゃないわけです。検査着手から取締役就任のタイミング、解任に至るまで、どうも良く分からないことが多すぎます。この取締役だけが働いた悪事ではなさそうです。なんだか大きな事件になりそうな予感がします。

三菱自動車 パナソニック 技能実習認定取り消し

また、三菱自動車がやらかしました。っていうか、やらかしたことに対するペナルティが公表されたということです。1/26 日本経済新聞の記事です。技能実習生に本来させるべき(計画した)業務をやらせていなかったということで、今後5年間の技能実習生の受け入れを禁止するというもの。

何度やっても懲りない奴ら

三菱自動車のこの不正は去年夏頃にすでに報道されていましたね。日産自動車も同様に報道されています。燃費不正問題、検査不正問題、そして会長による不正行為。こういう企業がまだ生き残っているのが不思議です。

日産自動車はペナルティなしということでしょうか。去年6月の報道では、45人が計画と異なる作業をしていたとなっていました。厚生労働省のHPで確認してみましたが、認定取り消しの判断基準については良く分かりません。

同HPの報道発表資料「技能実習計画の認定取消の通知と改善命令を行いました」という資料なんですが、添付資料を見てぞっとしました。例えば三菱自動車の場合は別紙1が認定取消の内容となっているんですが、27名の技能実習生を例えば「認 1704005410」という認定番号で示しています。この記号が27人分ずらりと。

現代の奴隷制度と言われるのが分かるような気がします。実習生の個人を識別するために必要なのかもしれませんが、世間に公表する資料にそれ必要ですか?企業に通知する書面上で、実名で表示すれば良さそうなもんです。行政側にも外国人労働者を一個人として扱う姿勢が必要だと思います。

問われる企業のガバナンス

企業の頂点にいる者はどっさり稼ぐ。簿外でもいろいろ儲けちゃう。女性従業員、派遣社員、外国人労働者。時代とともにその矛先を変えながらですが、常に底辺に位置する従業員を搾取することで、一流と言われた企業が成り立ってきたわけです。「いい加減学びなさいよ」と言ってやりたいですね。

朝日新聞のニュースでは三菱自動車の首脳が「軽く考えてはいけない、非常に残念」と述べたとありますが、経営層の甘さ、軽さがにじみ出てます。外国人労働者を巡るトラブルこれから爆発的に増えそうです。ガバナンスのキモになっていくでしょう。

東京証券取引所の市場区分見直し

東証1部銘柄が多すぎとして、1部から2部へ降格となる企業が出てくるのでは、と市場再編に対する非難があるようですが、ガバナンスを切り口にどんどん降格させていったらどうでしょう。1部上場企業の経営層へのインパクトはデカいですよ。一部に生き残るために企業のガバナンスは向上するでしょうし、何より「一部上場企業は安心」と投資家に訴えることができます。もちろん、もともと2部の銘柄と区別できるようにね。kuniのお勧めです。

外貨建て保険 説明不十分 販売増で苦情も急増

1/19 朝日新聞デジタル版の記事です。銀行が販売した外貨建て保険に対する、2017年度の苦情件数が急増したという内容で、生命保険協会がまとめた資料を紹介しています。「元本割れするリスク」や「解約時の税金など」に関する説明を受けていない、または不十分といった内容だと報じてます。

元本確保型

今さらなんですが、「元本確保」という言葉は何とかした方が良いかもしれませんね。このブログをお読みいただいている方は、金融リテラシーの高い方が多いと思いますので、この言葉に騙されたりしないと思うんですが、高齢者の場合はそうでもないんですね。

あくまで元本が戻ってくるのは、償還(満期)まで保有した場合であり、かつその建て通貨での元本ということでしかありません。途中で解約した場合や、償還(満期)時も為替が円高に振れていると円換算で元本を割り込むことがあります。

後で苦情になるのは高齢者

営業には流れというものがありまして、突然元本確保型の保険販売ではないんです。そもそも取引が始まるときには、「元本保証の商品だけにしてね」なんていう顧客の要望を聞いたうえでスタートするわけですが、その後営業員を信頼し始めると、少しづつ「あの人が勧めてくれる商品なら大丈夫」みたいな信頼が出来ていきます。

そうなったうえで、この低金利時代。営業員としても少しづつリスクを取って、少しでも顧客に喜んでもらえる商品を、と考えるようになります。しっかりリスクを説明したうえで、「じゃぁ、すこしだけやってみようかしら」となってくれれば良いんですが、そうでもないよろしくない営業員もいるわでです。

信頼関係ができたうえで、元本確保型という商品を勧められると、高齢者は留意すべきところ「確保と保証の違い」まで細かくチェックできません。一通り商品の魅力的な部分だけ説明を受け、契約に至ってしまいます。当然良いところだけしか説明されていないので、償還時や途中解約時に元本割れ、聞いていた話と違うという苦情等になります。

多くの場合が家族からの苦情

1月、5月、8月。苦情が増加する月なんですが、何故だか分かりますでしょうか?正月、ゴールデンウィーク、お盆。そう、実家を出て暮らす高齢者顧客のご子息等が、実家に戻ってくるタイミングで、契約に関する書類とかを見付けてしまう。そんなふうに苦情は増加するんです。それもご子息等からの問い合わせという形で。ご家族からの苦情って多いんですよね。

ご家族からの問い合わせであっても、お金にまつわる個人情報ですので、問い合わせに対してスムースな対応がなかなかできない。顧客本人の了解を得たり、ご家族であることを確認したりといった面倒な手続きが、ご子息の不信感を買い、火に油を注ぐことになったりもします。

朝日のこの記事

とりとめのない話になってしまいましたが、朝日のこの記事「2012年との比較で、販売が5倍近くに増加していて、苦情は3.3倍に増加」という説得力のないお話になってます。それって、苦情発生率でみると減少してるじゃん。

足元で苦情が増加している(1月なので)という話を聞いたはいいけど、足元の実態調査をすることなく、協会の古いデータで記事書いちゃったもんだから、、、ちょっと間の抜けた記事になってしまったんでしょうね。

野村證券元社員 顧客の現金詐取事件(その2)

最初の事件、2017年5月の豊橋支店での詐欺および窃盗に関して公表された「当社元社員の逮捕について」を読むと、<再発防止に向けた取り組み>が添付されています。同業他社の皆さんも参考になると思われますので、全文引用します。

<再発防止に向けた取り組み>
1.ATM出金に関するモニタリングの強化
2.野村カードの不正利用防止措置の強化
  ① 口座開設時の原則不発行化
  ② 長期未使用カードによる出金に関する制限措置の導入
3.管理職による社員行動の確認態勢の強化
4.長期在籍社員に関する管理・牽制の強化
  ① 連続休暇取得時等におけるお客様確認の実施
  ② コンプライアンス研修への緊急招集による牽制態勢の強化
5.お客様への注意喚起や取引状況の確認機会の確保
  ① 注意喚起文書のホームページ掲載やお客様への送付
  ② 電子書面を長期未確認のお客様に対する報告書等の郵送
6.法令遵守意識の醸成を図るための研修のより一層の強化
(引用以上)

再発防止策 少々解説

1のモニタリングは、それまで使用してなかったのに、急にカードがATMで使用されたとか、それまでの実績との比較でかなり大きな金額が引き出されたといった、異常値に着目してモニタリングを行うことを指していると思われます。

2-①は、高齢者のようにカードを利用する意思がそもそもない顧客には、後に営業員が悪用しかねないカードを発行しないという考え方。2-②は、何年間か使用されなかったカードは、一定の手続きを取らないと再度使用出来ないようにしてしまうということのようです。

4の長期在籍社員というのは、転勤することなく一定期間以上同一顧客の担当者を継続している営業員のことで、一定期間は5年と定義する例が多いように思います。4-①は連続休暇を取得させ、休暇中に顧客確認をすること。4-②は任意の休暇期間ではなく、強制的に会社が時期を決めて職場離脱させ、その間に顧客確認しようとするものですね。

5-②は取引報告書など顧客が郵送ではなくWebで確認するという契約をしている場合で、にもかかわらずWebで確認したログがない顧客に、野村の判断で取引報告書等を郵送してみるというもの。これはやや苦情も覚悟した対応だと思われます。

3件の詐取事件

ということで、ここまで見てきて3件の事件の全体像が見えてきました。最初の豊橋支店の事件が、顧客からの問い合わせで発覚しているのに対し、後から公表された北九州支店と横浜支店の事件は、それぞれ2017年7月と9月に、野村証券自身によるモニタリングによって事態を把握しています。最初の事件を受けて<再発防止に向けた取り組み>を公表した直後に、その取り組みにより発見したということですね。

当局に届け出て、世間に対しても公表した改善策がしっかり機能した好事例ということも出来そうです。内部管理態勢の強化とその実効性の向上は実を結びつつあるということでしょうが、ほぼ同じ時期に3人の社員がこうした事件を起こしてしまった。その事実は非常に重いです。真因については解明できたんでしょうか。ここからがガバナンスのキモです。