エン ・ジャパン株式会社 連結子会社で従業員の不正行為

エン ・ジャパン株式会社は5/19、「当社海外子会社における不適切な行為の疑義発覚に関するお知らせ」を公表しました。連結海外子会社(中国現地法人)である英才網聯(北京)科技有限公司の総経理による不適切な行為の疑義が発覚したというものです。

エン ・ジャパン株式会社

エン ・ジャパンは、総合転職情報サイト「エン転職」など求人情報サイトを運営する企業。人材紹介業では国内だけでなく、積極的なM&A(企業の合併・買収)により海外でもアジアを中心に事業展開を行う、東証プライム上場企業です。バカリズムさんらがCMキャラクター務めてた会社ですね。

不正の概要

2023年5月中旬ごろ、同子会社の銀行預金残高と帳簿残高に差異があることから、調査を行ったところ、同社の総経理により私的に流用されている疑いがあることが判明したといいます。総経理とは会社の事務を統轄管理する責任者、つまり実務面のトップです。

流用額及び回収見込みについては、現在調査中であり確定には至っていないということですが、現時点で判明している銀行預金残高と帳簿残高の差額は1,400 万元(円換算で約2億8,000万円)だそうです。デカいですね。

事実の全容解明、発生原因の徹底追及、再発防止策の検討および経営管理責任の明確化を行うため、外部の有識者を委員に含む特別調査委員会を設置するとしています。

開示の中でも「私的に流用されている疑いがある」といっておきながら、例によって開示タイトル等は「不適切な行為」としてます。いやいや、不正行為です。ちなみに、この連結子会社、エン ・ジャパンの有価証券報告書では「重要性が乏しい」ことを理由に記載が省略されていました。いやいや、重要でしょう。

ITbookホールディングス 従業員の不正行為(横領)が発覚

ITbookホールディングスは5/18、「当社連結子会社元従業員による不正行為に関するお知らせ」を公表しました。2018年10月に、ITbook株式会社とサムシングホールディングス株式会社(現株式会社サムシング)が経営統合してできた会社ですね。

ITbookホールディングス

ITbookホールディングスは情報通信技術(ICT)に関するコンサルティング業務などを官公庁などの公共機関や民間企業に向けて提供する事業と、住宅の安全の基礎となる地盤に関し調査・改良業務や保証業務などを行う事業を行っています。なんでこんな異業種間の統合が行われたんでしょう。東証グロース上場企業です。

不正の概要

不正の舞台となったのは統合の片方である株式会社サムシング。経理担当マネージャーであった従業員が、ATM から現金を着服し、その行為を隠蔽するために、ATM からの出金が正当な処理と思わせる会計上の操作を行っていたということです。

現時点までの調査では、2021年8月ごろから 2023年5月までの間(つまり統合後の不正行為ですね)に横領が行われ、横領額は約67百万円であることが判明しているといいます。同従業員もその事実関係を認めており、今年5月17日付で懲戒解雇処分となっています。

現在、横領額および当該元従業員からの回収可能性に関して調査を行っているといいますから、横領額についてはまだ増える可能性もありそうです。事実の全容解明、発生原因の徹底追究、再発防止策の検討および経営管理責任の明確化を行うため、外部の調査員で構成された調査委員会を設置し調査を進める予定だそうです。

株式会社ラックランド 特別調査委員会を設置

株式会社ラックランドは5/12、「特別調査委員会の設置に関するお知らせ」を公表しました。第1四半期の四半期連結財務諸表に係る四半期レビューの実施過程において、制作案件の工事原価に関する下請け工事業者からの見積書の電子ファイルが変造されていたということです。

株式会社ラックランド

ラックランドは店舗施設の制作会社。商業施設や小売・飲食店舗をはじめ、各種施設などの企画開発、デザイン、設計、施工、メンテナンスサービスなど一貫対応する企業です。もともとは業務用冷凍冷蔵庫、ショーケースの卸販売、メンテナンス業務でスタートした企業のようです。東証プライム上場企業です。

事案の概要

同社の監査法人(PwC京都)が、第1四半期の四半期連結財務諸表に係る四半期レビューの実施過程において、制作案件の工事原価に関する下請け工事業者からの見積書の電子ファイルを閲覧したところ、「見積書発行年月日」及び「工事物件名」のフォントが当該見積書の他の記載事項のフォントと異なることを発見したといいます。

さらに、これらの2箇所の記載を確認したところ上書きされたものであり、上書きされた記載を取り除いたところ、その下に全く異なる内容の記載が存在することを発見したんだそう。凄いですね、監査法人ってこんなところまで見てるんだ。

記載を上書きしたのは、工事見積書の収集を担当していた工事制作部門リーダーで、当該リーダーが見積総原価の算出期日を意識し過ぎるあまり、確実に提出が間に合わない当該見積書の変造を行ってしまったとしています。

変造された見積書ファイルの見積金額にも大きな差異はないようで、工事収益及び工事原価への影響はごく僅少で大事には至らないようです。が、特別調査委員会の設置ということに。まぁ、一度監査法人を欺くようなことやっちゃったから、きちっとけじめつけないと、、、ってことですかね。

株式会社レーサム キックバックに関する特別調査委員会の調査結果

レーサムは5/12、「特別調査委員会の調査報告書受領に関するお知らせ」を公表しました。同社の従業員が外注費の水増し発注を行い、キックバックを受けていたという不正行為でしたね。委員会設置が4/11でしたから、調査期間はちょうど1ヶ月ということになりました。

調査結果の概要

2017年11月頃から2021年12月までの間に、取引先2社に対して水増し発注を行っており、これに対してレーサムが支払った工事代金から、従業員及び同従業員が代表を務める会社にキックバックを受けていました。キックバックの総額は約1億7,600万円にのぼります。

この事案、いくつも面白い点が。まず、この従業員はレーサムに中途入社し、入社前に他社で付き合いのあった業者とその紹介で取引開始した業者との間で、なんと入社2年目から不正を働いていました。

また、キックバックというのは普通、水増し等した金額内で支払わせる(相手にも利益が残ってメリットがある)ものですが、この従業員の場合、大半のケースで水増し金額を上回って入金させていました。さらに、工事のミスや遅延に対して罰金(約2,000万円)を支払わせたり、しまいには業者に対して暴言や暴力まで振るっていたといいます。こんなキックバックは今まで聞いたことがありません。

SNSに不正の書き込み

レーサムがこの事案に最初に対処したのは2022年1月だったとのこと。なんと、2021年11月下旬、SNS上に「レーサムの工事部長(実際には存在しない役職)が年間数億円のキックバックを受領している」などの投稿があったんだそう。

残念ながらこのSNSに端を発した同社における調査は、核心に迫ることはできなかったようで、事実関係を明らかにするまでに1年半を要することになりました。そこはちょっと残念でしたね。

東テク株式会社 従業員の不正行為で特別調査委員会を設置

東テク株式会社は5/10、「特別調査委員会の設置及び2023年3月期決算発表の延期に関するお知らせ」を公表しました。同社子会社の東テク電工株式会社において、同社従業員と仕入れ取引先との間で、実態の伴わない仕入れ取引が行われていたということです。

東テク株式会社

東テク株式会社は、ビルや各種施設向けに業務用空調機器をはじめとする設備機器の販売、計装工事の設計、施工、各種設備・システムの保守サービスなどを一貫提供する企業です。東証プライム上場企業ですね。

不正行為の概要

行為の概要といっても、今のところ公表されているのは上記のように「実態を伴わない仕入れ取引」ということだけ。特定の従業員としていますので、今のところ単独犯と考えているようです。

この事案、税務署がある特定の仕入取引先を調査対象としていて、その反面調査が子会社の東テク電工に対して実施されたことから発覚したということです。反面調査というのは、税務調査対象者の取引先に対して行う税務調査の手法の1つです。 具体的には、税務署が「疑わしい取引」を発見したとき、それが正しいかどうか「裏をとる」ために取引先に調査をすることを言います。

特定の仕入先って?

この反面調査は4/25に実施されたとのこと。「特定の仕入取引先」がどこなのか不明ですが、東テク電工に対して架空発注や水増し発注をしているわけですよね。このあと当該企業からの開示もあるかもしれません。ひょっとしたらすでに当ブログで取り上げてきた企業なのかもしれないし。