国立研究開発法人物質・材料研究機構 室長級職員が私的流用

国立研究開発法人物質・材料研究機構は6/16、「元職員による架空業者への不正発注について」を公表しました。当ブログでは上場企業以外での不正・不祥事は取り上げてこなかったんですが、この事案についてはちょっと特別に・・・。

国立研究開発法人物質・材料研究機構

物質・材料科学技術の水準の向上を図ることを目的として設置されている機関で、世界最高水準の研究開発成果の創出・普及及び活用の促進に向けた取組を進め、我が国のマテリアル分野を牽引する中核的機関としての役割を果たしているんだそう。

不正の概要

不正を行ったのは同機構の室長職にあった者。事業実態のない架空の個人事業主に対し、調達部署の承認手続きを要しない少額契約の不正発注や経費申請の手続きにより、機構業務を架空業者に繰り返し発注する形を装い、業務委託料等を私的に流用していました。

不正発注は2015年度から2021年度までの7年間にわたり行われ、発注件数は計69件、発注金額は総額27,248,500円だったそうです。

不正は昨年末に情報提供があって発覚し、機構側が内部調査をしていたようです。公表文では、「職員は死亡により退職したため懲戒処分は実施していない」としています。報道等でも、「流用を認めた後に死亡」と表現されています。状況からすると、おそらく自殺なんでしょうね。

不正等の調査で、行為者の自殺は最も回避すべきことです。本人が真摯に語ってくれれば、他にも様々な課題が見えてきたかもしれません。もちろん民間企業であっても同様です。

THECOO株式会社 従業員による不正行為(その2)

ちょっと見落としていたんですが、THECOO株式会社は5/15、「特別調査委員会による調査の進捗に関するお知らせ」を公表していました。そもそも特別調査委員会の設置が5/8。調査を開始して1週間で進捗も何もなかろうってタイミングです。

進捗状況ではなく新たな展開

もともと「業績への影響を判断することを調査の最優先事項とし、当該事項に関する中間報告書を2023年5月15日までに提出する予定」、としていたんですが、おそらく同社としても想定していなかった新たな展開になっているようです。

3名の従業員が、自身の親族が代表を務める会社や個人、知人などに架空発注や水増発注をしていたことが判明しているようです。当初は従業員1名が単独で行っていましたが、同僚で仲の良かった他の2名の従業員らに対して、その実行方法を伝授したんだそう。トホホですな。

取締役の不正?

このような従業員の不正以外にも、2件の不適切な会計処理が行われていた可能性がでてきたといいます。いずれも現時点で全容を把握するには至っていないとしており、把握している金額も数百万円程度のようです。

しかし、新たな展開の極めつけは、これら不適切な会計処理に関して、同社社内のチャットツールの履歴で同社CFO(最高財務責任者)が宛先に含まれており、CFOが関与していた可能性が否定できないというところです。

この取締役CFOが関与していた他の会計処理の中にも不適切なものが含まれているリスクが否定できないことを踏まえ、当初の不正発注に加え、追加の疑義として徹底した調査を実施するとしています。

株式会社レイ 従業員による着服行為 調査結果

株式会社レイは6/9、「第三者調査委員会の調査報告書受領に関するお知らせ」を公表しました。4/14付けで第三者調査委員会を設置していましたから、調査期間は約2ヶ月でしたね。受領に伴い、有価証券報告書等を6/30をめどに提出する予定だそうです。

おさらい

株式会社レイは、SP(セールスプロモーション)、TVCM(テレビコマーシャル)などの企画制作と、デジタル映像インフラを駆使した実制作を行う、テレビ朝日ホールディングスの持分法適用関連会社でした。第一報では同社従業員による着服行為が過去数年にわたって行われていた事実が確認されたとしていました。

調査結果の概要

調査の結果、同社において、①仮想取引による会社資金の詐取、②不適切なキックバック、③背任行為による会社資金の詐取という不正が行われていたことが判明しています。行為に関与したのは3名といっていいと思いますが、実際に儲けていたのは2名で、詐取した金額のほとんどは1名の懐にって感じです。

仮想取引による資金の詐取は約2億2,000万円。不適切なキックバックは約4,300万円。背任行為による会社資金の詐取は約1億6,000万円だそうです。いずれも不正を働いた従業員が設立していた法人口座への入金という形。かなり壮大な金額になりましたね。

売上高が100億円程度で、経常利益が10億円に届くことが珍しい、という規模の会社で、上記のような不正がどうやって隠れ続けてきたのか。2020年3月期から行われてきた不正とはいえ、億円単位で収益や費用がブレることに、普通は誰か気が付きそうなものだけど。

株式会社ヤマウラ 連結子会社で不適切な支出 第三者委員会を設置

ヤマウラは5/30、「当社従業員による不適切な取引の疑義に関するお知らせ(第三者委員会の設置及び 第 64 回定時株主総会の継続会の開催方針)」を公表しました。見落としていたんですが、5/26に第一報「当社連結子会社の不適切な支出に関するお知らせ」が公表されています。

株式会社ヤマウラ

ヤマウラは、長野県中心に工場店舗・住宅の建設や橋梁・水道工事など「建設事業」に加え、工場施設、水管理機器などを設計・施工する「エンジニアリング事業」、自社開発不動産の売買賃貸など不動産に関する事業を営む「開発事業」を手掛ける総合建設会社。東証プライム上場企業です。

不正の概要

2023年5月9日、同社連結子会社の預金残高と帳簿残高との相違について、監査人より指摘を受けたことで不正が発覚したようです。5月23日にはヤマウラの従業員による連結子会社の不適切な支出があったことが判明したといいます。

同社連結子会社の、不適切な支出と懸念される支出総額は2023年3月期に約1,000 百万円。うち同連結子会社の不適切な支出と判明した支出が2023年3月期に約334 百万円だそうです。これまたデカいですね。まだ7億円の不明支出があるのも怖いし。

同社が「不適切な支出」と表現しているモノ、がいったい何を表しているのかは現在のところ不明。長野県駒ケ根市というのどかなアルプスの麓で、結構ド派手な不正となりそうな気配。そういえば最近世間を騒がせた警察官など4人の殺害事件も長野県でした。

東洋機械金属 中国子会社で従業員の不正行為

東洋機械金属は5/25、「当社海外⼦会社における不適切な⾏為の疑義発覚に関するお知らせ」を公表しました。海外子会社での不正って最近減りましたね、みたいなこと書いたら途端にぞろぞろ出てき始めました。

東洋機械金属

東洋機械金属は国内トップクラスの射出成形機メーカー。プラスチック射出成形機や、ダイカストマシンとその周辺機器の開発から製造、販売までを一貫して手掛ける企業です。海外売上高比率が7割を超える東証プライム上場企業です。本社は兵庫県明石市。

不正の概要

2023年5⽉中旬ごろ、本件⼦会社の銀⾏預⾦残⾼と帳簿残⾼に差異があることから、調査を⾏ったところ、同⼦会社の従業員により私的に流⽤されている疑いがあることが判明したといいます。

流⽤額及び回収⾒込みについては、現在調査中であり確定には⾄っていないということですが、現時点で判明している同社における銀⾏預⾦残⾼と帳簿残⾼の差額は約2,800万元(円換算で約5億5,000万円)だそうです。これまたデカいね。

開示ではこの子会社の社名等は明らかにされていないんですが、日経によると広州の販売子会社だとされています。有価証券報告書で調べると、東洋機械金属(広州)貿易有限公司というのがありますから、たぶんこの会社だと思われます。

正式な開示では伏せておきながら、メディアに詰められれば伝える、説明する、、、そういうの止めましょう。追及されなきゃ言わんのかい?って感じで、良い印象ありませんよ。