東京産業 警視庁が元社員を詐欺容疑(循環取引?)で逮捕

日本経済新聞は9/29、「東京産業元社員『循環取引』か 詐欺容疑で逮捕、警視庁」と報じました。当ブログでも昨年一度取り上げましたが、やっと元社員を逮捕するに至りました。

おさらい

東京産業は電力および環境、化学業界などに各種機械、プラントなどを販売する三菱グループの機械商社。昨年5月に不適切な会計処理が発覚したと公表し、特別調査委員会を設置して調査を開始しました。その後7月末には調査委員会の調査結果を公表しています。

調査委員会としては架空循環取引を認定しており、そのうちの一部の資金が行為者である元社員及び元社員の配偶者個人名義の預金口座に入金されているとしていました。

日経の報道では

警視庁は容疑者が関与した循環取引は約70件あり、同社の支出総額は約37億円に上るとみて調べている、としています。逮捕容疑は「虚偽の書類を作成し、仕入れ代金として東京産業に約2,400万円を支払わせ詐取した疑い」です。借金の返済やギャンブルなどに使ったといいます。

特別調査委員会の調査結果では、東京産業から流出した資金約6億6千万円のうち、、複数の会社を通して同容疑者及びその配偶者の口座へ約3億円が還流した可能性があるとしていましたので、今後の捜査で詐取した金額は3億円近くになっていくんでしょう。

容疑者は現在37歳とされています。2017年頃から架空取引を行っていたようですので、30歳そこそこでこれだけの会計処理を任されていたということ。こんなことしなければちゃんと出世できたんだろうに。

株式会社エージェント 決算延期 従業員の不正行為

株式会社エージェントは9/14、「2024 年1月期中間決算発表の延期および調査委員会設置のお知らせ」を公表しました。で、早速同社がどういう会社か調べようとしたんですが、株探やらなんやらいろいろ調べてみても該当銘柄なし。はっ?なにこれ。

株式会社エージェント

株式会社エージェントは、社会の「困った」を解決する「次世代のエージェントになる」ことをヴィジョンとして掲げ、世の中に存在する様々なマンパワーをネットワークして企業の課題解決に繋げていく「総合人材サービス事業」を展開する企業だそう。なんと、TOKYO PRO Market上場企業でした。株主は2法人だけ。流通株式はゼロという会社です。当然取引所での取引も成立しません。

不正行為

開示では2024年1月期中間決算発表を行うべく、準備を進めていましたが、その過程の中で、同社社員による不適切な取引の疑いおよび不正行為の疑いを認識したとのこと。社内で調査を進めてきましたが、より独立性の高い調査が必要であると考えられるため、調査委員会を設置することにしたということです。

適時開示された情報は以上なんですが、そもそも一般株主はいないし、一般投資家にとって投資対象にもならないわけですが、しっかり適時開示し社外調査委員会も。ルール通り開示して隠しごとをしない、不正は徹底的に調査する。一般株主を多数抱える企業には見習ってほしいね。

株式会社ナレルグループ 子会社元従業員が逮捕 名刺情報持ち出しで

ナレルグループは9/15、「子会社元従業員の逮捕について」を同社ホームページのみで公表しました。同社の子会社である株式会社ワールドコーポレーションの元従業員が、個人情報保護法違反などの疑いで警視庁に逮捕されたという内容です。子会社名を聞けば、「あの事件か」と分かる人もいると思います。

ナレルグループ

ナレルグループは建設会社に施工管理技術者などの人材派遣を行う「建設ソリューション」と、システムインテグレーター(SIer)に技術者を派遣する「ITソリューション」を手掛ける企業の持株会社です。21年に現商号に商号変更していますが、もともとはワールドコーポレーションです。

逮捕容疑

そのワールドコーポレーションの元従業員が、名刺管理システムに対して不正にアクセスし、同社グループが保有するお客様等の名刺情報を漏洩させたものと説明しています。ただ、報道ではもう少し詳しく伝えられていて、「名刺管理システムにログインできるメールアドレスとパスワードを転職先の社員に送り、同システムを閲覧できるようにして、個人情報を提供するなどした」ということです。

情報の持ち出しは不正競争防止法違反に問われることがありますが、名刺は同法にあたらないため、今回は個人情報保護法違反が適用されたんだそう。

報道では記者から問い詰められ詳しく話すけど、自社の開示ではかなりザックリ。おまけに適時開示はなくホームページでひっそりと。ダメな会社の典型的なパターンです。

JTB 従業員が顧客のクレジットカードを不正利用 警察が逮捕

株式会社JTBは9/7、「『JTB旅物語中部販売センター』元従業員の不祥事に関するお詫び」を公表しました。このところ旅行代理店によるコロナ便乗業務委託費の過大請求が頻繁に話題になっていましたが、今回は顧客のクレジットカードの不正利用。また、エグイのが出てきました。

JTB

JTBは日本の旅行会社で、JTBグループを統括する事業持株会社です。昔は日本交通公社なんて呼ばれていて、2018年に現在の商号となっています。歴史もあり、旅行取扱額トップの会社ですね。上場企業ではありませんが、トップ企業ということで取り上げました。

不正行為の概要

不正の舞台となったのは子会社の「JTB旅物語」中部販売センターというところ。電話オペレーターをしていた女性容疑者(55歳)が、今年5月から6月にかけ、顧客のクレジットカードの情報を不正に使い、ライブ配信アプリで使うコイン68万円分をだまし取った疑いが持たれています。

顧客から聞き取ったカード番号やセキュリティコードを使い、ライブ配信アプリ「ミクチャ」で、女性アイドルにいわゆる“投げ銭”をしていたとみられているとのこと。本人は容疑を否認しているらしいけど、警察は顧客25人のカード情報であわせて870万円分のコインをだまし取っていたとみているようです。

いやいや、いい歳してアイドルに投げ銭するためにですかぁ。困った話ですな。JTBともなると全国にもの凄い数のオペレーター抱えてるだろうし、横展開(類似案件の調査等)大変そうです。

THECOOの損害賠償請求に見る特別調査委員会の費用

THECOO株式会社は9/8、「当社元従業員らに対する訴訟提起に関するお知らせ」を公表しました。インフルエンサー事業部に所属していた元従業員らが、自らが実質的に経営を支配する会社等に対する不正発注を行い、金銭を着服することを繰り返していた事案が発生していました。

独立調査委員会

不正行為の発覚を受け、今年5/2に特別調査委員会を設置して調査を開始。その後調査の過程で新たに不適切な会計処理の疑義が判明したため、5/15に委員の1名である独立役員を交代させ、社外の有識者だけで構成する独立調査委員会へと引き継ぎました。

開示で見えた費用

上記の通り、当初の段階で人の交代はありましたが、調査委員会は5/2にスタートしたとして考えましょう。委員は4名です。その後調査を終え、独立調査委員会から調査結果を受領したのが6/26でした。調査期間はほぼ2ヶ月ですね。

今回の開示で同社は、不正行為を働いた元従業員2名に対して、約2億7,489万円の損害賠償請求を行うとしています。そしてその内訳として、「独立調査委員会及び特別調査委員会による不正調査に要した費用約2億600万円」と説明しています。

4名で約2か月ですから、1名あたり約5,000万円。1か月あたり2,500万円ということになります。凄い金額です。もちろん、調査には社内人員も協力していて、その費用も加算されているでしょうが、、、。不正が発生した際に特別調査委員会でどれだけの損失が発生するか・・・ご参考まで。