スターゼン 循環取引(その2) スターゼンという会社

循環取引など、従業員の不正行為が発覚したスターゼン。不正の概要からみてかなり多くの企業を巻き込んでいるとみられ、他の企業(取引先)でも同様に不正行為が出てくるんじゃないの、ってのは気になるところ。同社について少し調べてみました。

スターゼンの沿革

食肉卸最大手のスターゼン。全国畜産株式会社という社名でスタートし、その後ゼンチクに。1999年に現社名へと変更されています。1971年 日本マクドナルド向けハンバーガーパティの納品を開始し、勢いをつけて1977年に東証一部に昇格しています。

取引先

で、やっぱり気になるのは日本マクドナルド。ここも過去に意外に従業員の不正行為が出ている会社です。取引先の詳細は開示されてないようですが、組織図をみると唯一取引先社名を冠する部門があったりします。経営本部や管理本部と並んでマクドナルド事業本部が存在してるんですね。

今回の循環取引にもマクドナルドが関係してるんだろうか。などと勘ぐってしまうんですが、販売先構成比をみるとトップは小売(スーパーやコンビニですかね)で全体の約半分。外食産業向けは16%ほどです。食肉卸の最大手ですから、販売先は多岐にわたりそうです。マックはないかな。

特別調査委員会の調査が進むと、循環取引に関与したとみられる取引先に調査依頼とかが始まるので、「当社従業員が関与していました」みたいな開示が出てきそうです。以前当ブログでも取り上げたネットワンシステムの架空循環取引では8社とか9社とか出てきました。ちょっと目が離せませんね。

スターゼン株式会社 従業員の不正行為が発覚 循環取引など

スターゼン株式会社は11/8、「特別調査委員会設置並びに 2024 年3月期第2四半期決算発表の延期及び当該四半期報告書の提出期限延長申請の検討に関するお知らせ」を公表しました。従業員による不正行為(循環取引)が発覚したことを受けての開示です。

スターゼン株式会社

スターゼンは、牛や豚の生産肥育から、食肉の処理加工、製造、販売まで一貫して手掛ける食肉専門商社。販売先はスーパーマーケット、食肉専門店、外食業界、食品加工メーカーなどです。日本マクドナルド向けにハンバーガーパティを供給している企業なんですね。

不正の概要

2023年10月下旬、同社の監査部が内部監査において、過年度より不適切な取引が行われていた疑いがあることを発見したそうです。同社の1営業拠点において、同社従業員が過年度より循環取引(取引先数社と同社従業員による架空売上げの循環)等の不適切な取引を行い、同社における架空在庫及び取引先に対する架空売上げが生じている可能性があることが判明しました。

事実関係及び同社の業績に及ぼす影響は未だ明確でない点があるとしていますが、これまでの社内調査により判明した不適切な取引による損益影響額は、現時点で累計約3億円だそうです。

不正を暴いた監査部さんはお手柄。3線がちゃんと機能していました。が、しかし、こういう部署はお手柄あげて喜びたいところだけど、こういう時って思いっきり凹むんですよね。

NTT西日本子会社 900万件の情報流出 第三者へも

日本経済新聞は10/17、「NTT西系元社員、個人情報900万件流出 名簿業者に渡る」と報じました。NTT西日本の子会社が委託した、別のNTT子会社であるNTTビジネスソリューションズの派遣社員が約10年間にわたり、顧客情報を持ち出していました。

NTT西グループでは発見できず

900万件にはNTT西日本の約120万件、NTTドコモの約7.2万件も含まれており、福岡県や愛知県豊橋市、小牧市などの個人情報も。上場企業ではWOWOWが約4万人分の情報流出を公表しています。他にも山田養蜂場の400万件やら、森永乳業の34万件なども聞こえてきています。まだまだ出てくるでしょう。

22年4月、流出を疑った顧客の依頼で社内調査を実施したが漏洩は確認できなかったそうです。この機会に気付けなかったのは痛い。今年7月に警察から問い合わせを受けやっと発覚したといいます。

NTTに開示なし

しかし、900万人は凄いねぇ。日本人の14人に一人の情報が漏れていたということ。過去最多は2014年のベネッセコーポレーションの3504万件で、今回のケースは過去4番目なんだそう。これだけ大きな事件なわけですが、親会社のNTTはなんら開示をしていません。NTT西日本がホームページで12万件の流出を公表しているだけ。

これって、自社グループの顧客に対する公表であって、900万件を持ち出した社員を雇用していた会社の開示ではありません。いかがなもんかと思いますよ。

菊水化学工業 調査委員会の設置

菊水化学工業は10/10、「調査委員会の設置に関するお知らせ」を公表しました。2023年3月下旬に下請業者の申し出により、2019 年3月期において一部不適切な会計処理が行われていたことが判明したということです。23年3月になって19年3月期のことですかぁ。

菊水化学工業

菊水化学工業は建築塗料のメーカー。建築仕上材、建築下地調整材、タイル接着材、建築土木資材の製造、販売およびその関連商品の販売、建築物の改修改装工事(ビルリフレッシュ)を手掛けています。名古屋市に本社を構える東証スタンダード上場企業です。

不適切な会計処理

開示によると、下請業者の申し出により2019年3月期において一部不適切な会計処理が行われていたことが判明したとしており、同社担当者が赤字工事の発覚を免れるために、請負代金の支払いを遅らせていたといいます。社内調査を行い、当該担当者及び下請業者へ事実確認をしたところ、約 3,000万円が未払いだったとのこと。

はぁ?、何それ。2019年3月期の工事ですから、すでに3年半のあいだ未払いってことですよ。まぁ、これから外部の有識者で構成する調査委員会を設置して実態を把握するんでしょうが。3年半も下請けが我慢した理由や、今頃になって表面化させた理由。そこらはまず知りたいところですね。

兼松 → 双日 営業機密持ち出しで元従業員を逮捕

大手商社「兼松」から営業秘密を不正取得したとして、警視庁は9/28、大手商社「双日」元社員を不正競争防止法違反(営業秘密侵害)の疑いで逮捕しました。持ち出された情報には兼松が管理していた自動車の部品に関するデータや取引先の営業情報が含まれていたといいます。

兼松 双日

兼松は電子、食料、鉄鋼などに強み持つ専門商社。一方の双日は旧ニチメン、旧日商岩井が経営統合した総合商社で、自動車、航空産業、石炭、肥料などの各事業に強みを持つ企業です。売上高で比較すると、商社部門で双日は第11位、兼松は第19位という位置付け。

逮捕容疑

容疑者は兼松で自動車部品の取引を扱う部署に勤務。2022年6月に兼松を退社し、翌月に双日に転職しています。兼松在職中にもファイルを持ち出していたほか、転職後も元同僚の派遣社員のIDやパスワードを使用したとみられているようで、土日にデータベースへのアクセスを繰り返していたということです。

多くの社員が休む週末に、単一のアカウントから多数のアクセスがあるとして兼松が異常を検知し、社内調査に乗り出し被害が判明したとしています。

容疑者は転職前の6月にも自分のアカウントを使って兼松の内部データ約3万7千ファイルをダウンロードした形跡があったといいます。この時点で退職(転職)に待ったをかけることができれば、ここまで大きな事件にはなっていません。

通常、上場企業であれば、退職の〇か月前までには退職する旨を自己申告しなければならない。みたいなルールがあるものです。退職予定者の業務端末の動作記録(ログ)を調査できるIT技術と、退職までの期間を合理的に組み合わせる社内ルールがあれば、回避できたのではと思うんですが。