銀行、リスク運用に走る

週末の日本経済新聞の記事です。「銀行、リスク運用に走る 外債買越額8年ぶり高水準  投信・REIT、5年で3倍に 超低金利 貸し出し不振続く」。またずいぶん長いタイトルです。銀行が預金で集めたお金を、価格変動リスクの高い金融資産で運用する姿勢を強めている、という話ですね。

外債投資

財務省の統計によると、銀行の外債投資(短期債と中長期債の合計)は17年度の8兆9千億円の売り越しから一転、18年度は3年ぶりの買い越しになったとのこと。買越額は10年度(9兆6千億円)以来の大きさだそうです。三菱UFJフィナンシャル・グループの3月末の外債保有残高が21兆5千億円と1年前から23%増、三井住友フィナンシャルグループも9兆円と25%増となっていることも、併せて伝えています。

米国であと2~3回利上げが行われるとみられていましたが、トランプ大統領の横やりや、米中貿易戦争の影響による景気後退見通しもあり、当面利上げはない(場合によっては利下げがあるかも)という見方が台頭し、外債投資の環境が良くなったということですね。さらなる貸し出しが見込めない日本の銀行には渡りに船といったところです。

投資信託保有

一方、株式や外債などで運用する投資信託の保有残高も2月末時点で18兆5千億円と18年3月末に比べて11%増えているそうです。大手銀行、地方銀行とも増加させているようで、合計の残高は5年前の2.9倍だそうです。また、不動産投資信託(REIT)を中心とする不動産ファンドへの出資残高は、18年9月末時点で約2兆4千億円と前年同月比17%増えており、過去5年間では2.8倍に膨らんでいるとのこと。

銀行のリスク感覚

これがよく分からないんですよね。外債も投信も、REITもすべて金融商品です。当然ですが相応のリスクを伴います。そうした商品に強気でここまで残高を増やしてきているということ。一方で、銀行が顧客に勧めて買ってもらう、投資信託の販売や外債の販売はそれほど伸びていないようです。

ここが不思議なんですよね。外債購入の好機、株式や投資信託購入の好機だと思うんだったら、なぜ強気で顧客に勧め、販売を増やさないのか。いやらしい話ですが、顧客にたくさん外債や投信を買ってもらい、その後予想に反してマーケットが変調をきたしても、銀行は損しないわけです。これが金融商品取引の世界の大原則です。

現場の銀行員は顧客への勧誘にとても弱気で、手数料収入を増やせないのに、自分のお金では超強気で相場に乗ってしまうんですね。強気というか、そうせざるを得ないんでしょうけど。昔からですが、銀行員のリスク感覚はよく分からないです。赤信号、みんなで渡れば怖くない?いや、それが一番怖いんだって!