SBI証券 金融庁が一部業務停止命令と業務改善命令

金融庁は1/12、「株式会社SBI証券に対する行政処分について」を公表しました。日経は同日の朝刊でフライング記事を掲載していましたね。いつものリーク記事です。行政処分の内容は、一定期間の一部業務停止命令と業務改善命令の二つです。

業務停止命令

執行役員兼機関投資家営業部長及びIFAビジネス部管掌執行役員らが、エクイティ・キャピタル・マーケット部管掌常務取締役や執行役員と相談し、香港現地法人の社員(機関投資家営業部員が兼務)及びIFAビジネス部員等に対し、顧客に新規公開時に公募価格と同価格の指値で当該株式の買付けを行うことを勧誘させていたというもの。

こうしたいわゆる初値買付の勧誘や実行について金融庁は、金融商品取引法で禁止する「作為的相場形成」にあたると認定したということです。役員が株価操作を主導するなど悪質性が高いと判断し、一定期間の新規上場銘柄の勧誘・受託業務を停止させます。ん~、これってちょと甘すぎないか?

いつか来た道

大手証券会社も以前は盛んにこの初値形成に積極的に関与する行為を行ってきました。いや、今でもやってるところあるかもしれませんね。要は「マーケットで自然に形成される株価を人為的に操作等しちゃだめよ」って法律。ブロックオファー対象銘柄の終値を買い支えていた日興証券と根っこはまったく一緒です。

前にも書いたけど、この事件を受けたIFAに対する世の中の評価ってどうなってるんでしょうね。

株式会社グッドスピード 金融庁の公益通報窓口が使われたこと

先日取り上げたグッドスピード。売上の先行計上の不正を行っているという内部通報が発覚の端緒となっていました。多くの企業では社内の通報窓口や外部に自社が契約する弁護士事務所等の窓口への通報が一般的なんですが、なぜかこのケースは金融庁の公益通報窓口が使われました。

金融庁の公益通報窓口

金融庁の通報窓口ってホームページのトップにはリンクがなくて、結構分かりにくいんですよね。こんな通報窓口よく知ってたなぁ、って感じです。一方で証券取引等監視委員会の通報窓口はトップページですぐ分かります。同社の従業員が通報したのは監視委員会だったかもしれません。

監視委員会は金融庁の下部組織ですし、通報内容が精査された後に金融庁に連絡。そこから同じ下部組織である公認会計士・監査審査会を通じて、同社の監査法人へ情報提供したという流れだったかもしれません。

かなり専門家でないと

社内やお抱え弁護士事務所の窓口を選ばなかったのは、よほど会社の経営陣のことを信用してなかったからでしょう。通報先が金融庁だったか、監視委員会だったかはともかく、一般の社員が通報先に選ぶところではなさそうです。会計やら監査に関して十分な知識を持っていることがうかがわれます。

当然経営陣もそのことに気付くでしょう。通報者が社内で魔女狩りに遭わなければいいのですが。

株式会社グッドスピード 調査結果公表 会社ぐるみの不正会計

東海地方を中心に中古車販売や買取、レンタカー事業を行う株式会社グッドスピードは1/4、「第三者調査委員会の調査報告書受領に関するお知らせ」を公表しました。売上の先行計上の不正に関して、10/6付けで設置された第三者調査委員会による調査結果も併せて公表されています。

発覚の経緯

調査報告書の冒頭で、次のように不正発覚の経緯が語られています。「8/31、金融庁から、グッドスピード社の会計監査人である監査法人 A&A パートナーズに対して連絡があり、金融庁の公益通報窓口に『グッドスピード社が売上の先行計上の不正を行っている。』という通報があった」とのこと。

「9/14、A&A は グッドスピード社の監査等委員会に対して、金融庁から共有された通報内容を伝達するとともに、これに関して公表済みの決算について不適切な会計処理(売上の先行計上等)をしている疑義が生じていることを指摘した」、ということのようです。金融庁の公益通報窓口への内部通報から始まったんですね。これはちょっと珍しいパターンでした。

会社ぐるみの不正

専務取締役や取締役が収益達成に向けたプレッシャーをかけ続け、それが叶わないとなると売り上げの先行計上を指示していたとのこと。トップの代表取締役社長もこの不正については報告を受けており、容認していました。

さらに他の取締役や1線、2線の幹部どころか、3線である内部監査室長までもがこのことを認識、放置していたというありさま。まさに会社ぐるみ、酷いものです。同社は2019年4月に上場しましたが、それ以前からこの不正が行われていたというのも大問題です。

ENEOSホールディングス 社長を解任 2代連続セクハラで

ENEOSホールディングスは12/19、「社長等の処分および異動について (代表取締役の異動等)」を公表しました。役員3名が参加した懇親の場において、社長が酔った状態で同席していた女性に抱きつくという不適切行為があったためだそうです。やれやれ。

ENEOSホールディングス

ENEOSホールディングスはエネルギー、石油・天然ガス開発、金属の3つの事業を中核とする国内首位の石油元売りグループ。原油・天然ガスや銅鉱山の権益を所有する東証プライム上場企業です。

不適切行為

社長が酔った状態で同席していた女性に抱きつくというセクハラで解任。同席していた同社コンプライアンス部門のトップである副社長はこのセクハラが起きてしまったことの結果責任を問われ、辞任勧告を受け辞任。同じく同席していた常務執行役員も、性別役割分担意識を窺わせるような不適切発言をしたとして役員報酬の減額となっています。

この事案、11月末に寄せられた内部通報をもとに社内調査を行い黒判定となったようです。同社では2022年にも最高経営責任者(CEO)が那覇市の飲食店で、接客をしていた女性に対して「不適切な言動」があったとして辞任しているんですね。

どうも女性関係への規律が緩い会社のようですが、起きてしまったセクハラに対しては毅然な対処をしています。ん~、どう評価していいもんだか。

ルーデン・ホールディングス とうとう上場廃止

東京証券取引所は11/29、「上場廃止等の決定:ルーデン・ホールディングス(株)」を公表しました。これにより同社株は11/29から12/29まで整理銘柄に指定され、12/30をもって上場廃止となります。以前当ブログでも上場廃止見込み最右翼と見ていましたが、やはりそういう結果になりました。

ルーデン・ホールディングス

ルーデン・ホールディングスは、住宅の壁・天井に抗菌性の高いコーティングを施すサービスと、ビルやマンションの管理・メンテナンスを中心に不動産開発などの事業を展開していた企業。もともとの事業が悪化し、あれやこれやと事業を多角化しています。東証グロース市場上場企業です。

子会社で調達したはずのBITCOINが行方不明になったという事案から始まり、その後もあれやこれやと出てきて、この10月には2回目の第三者委員会の委員全員が退任するという事態になりました。その間同社が公表する開示はいずれも「はぁ?」って感じの内容ばかり。

取引所の判断

さすがに取引所も堪忍袋の緒が切れたようで、特設注意市場銘柄への指定から1年を経過していないものの上場廃止を決定しました。こういうガバナンスボロボロの会社を存続させてもろくなことはありません

最近よく聞く、「海外からの投資を日本へ」という政策。日本の上場企業のガバナンスが大きく向上していることをウリにしたいところなわけです。今後ますますガバナンスが確立できてない企業の上場廃止は加速するんでしょうね。