電気興業 公正取引委員会が下請法違反で勧告

公正取引委員会は12/5、「電気興業株式会社に対する勧告について」を公表しました。下請け企業に金型などを無償で保管させていたのは下請法違反にあたるとして、通信アンテナメーカーの電気興業に再発防止や保管費用の支払いなどを勧告しました。

電気興業

電気興業は携帯電話基地局向けをはじめとする各種アンテナ、鉄塔などの製作を主力に、自動車部品向け高周波誘導加熱装置の製造・販売を手掛ける企業。東証プライム上場企業です。

下請法違反

同社は遅くとも2021年9月以降、長期間発注の見込みがないにもかかわらず、下請け企業20社に対し、金型など計339個を無償で保管させていたとのこと。このことで下請事業者の利益を不当に害していたという判断ですね。下請け企業が負担した保管費用をこの後支払うことになります。

下請け企業に金型を保管させる商慣行を巡っては、公取委が監視を強めていて、今年7月にはトヨタ自動車子会社のトヨタカスタマイジング&ディベロップメント、9月にはSANEI、11月には住友重機械工業子会社の住友重機械ハイマテックスに同じく下請法違反で勧告しています。

公取委は下請法違反事案について、事業者側が自発的に申し出て、一定の要件を満たした場合には勧告の対象から外し、企業名を公表しない運用としているんだそう。つまり上記の例は氷山の一角にすぎないということですね。

特装車の荷台製造4社 独禁法違反疑い(カルテル)で立ち入り検査

ダンプカーやゴミ収集車などの荷台部分の装備を製造しているメーカー4社が、不正に価格を引き上げるカルテルを結んでいた疑いがあるとして、公正取引委員会が11/12、独占禁止法違反の疑いで立ち入り検査を行ったようです。

カルテル

立ち入り検査を受けたのは、いずれもダンプカーなどの特別な装備の車両(特装車)の荷台部分を作るメーカーで、兵庫県宝塚市の「新明和工業」とその子会社の「東邦車輛」。そして大阪市の「極東開発工業」とその子会社の「日本トレクス」の計4社とのこと。実質的には新明和工業と極東開発の2社によるものですね。

4社は「特装車」の装備をディーラーや自治体などに販売する際、製品の価格を不正に引き上げるカルテルを結び、独占禁止法に違反した疑いがあるということです。原材料の鋼材などの価格の上昇の動きを受けて、遅くとも2020年9月ごろから価格を引き上げていたといいます。

カルテルによる価格の引き上げ分は、コスト増加分として価格転嫁され、消費者の負担にもつながっていた可能性がありますよね。なぜカルテルが禁止されているかよく分かる事例です。あなたの自宅を施工する際、建築資材等を運び、搬入したトラックの利用料金の中にこの値上げ分が含まれていたかも、ってことですね。

日清食品、カップ麺で再販売価格の拘束 公取委が警告へ

日本経済新聞は8/8、「公取委、規律ある価格転嫁促す 日清食品に警告へ カップ麺で価格拘束か」と報じました。「カップヌードル」など主力5品目の希望小売価格について、全国の小売業者に対して値上げ額を指定して販売価格を上げるよう求めていたということです。

事案の概要

独禁法は、小売業者に自由に販売価格を決めさせない行為を「再販売価格の拘束」として禁じていますが、卸業者を通じて小売業者に販売価格を上げるよう求めていたこの行為が違反に該当するとしているようです。対象となった商品は「カップヌードル」をはじめ、「シーフードヌードル」、「カレーヌードル」、「どん兵衛きつねうどん」、「日清焼そばU.F.O.」の5商品。

日清食品ホールディングスは25年3月期に、即席麺などの販売が伸びるとして過去最高の利益を見込んでいるそう。こういう不正によって業績を伸ばしてるのってねぇ。バチ当たるよ。

なぜかカップ麺

公取委が認めた「再販売価格の拘束」。2年前には「株式会社一蘭」が同様に違反を指摘されていました。同社は豚骨ラーメンのチェーン「一蘭」を展開する企業で、違反の対象とされたのはやはりカップ麺。前年から発売開始したカップ麺「一蘭 とんこつ」という商品。

カップ麺の業界ってなんか共通する悪しき商慣習みたいなのがあるんでしょうか。日清がCMでやってる「夏が熱すぎてカプヌが売れない」みたいな季節要因があって、夏場に小売業者が投げ売りするから、みたいなこともあるのかな。

またまたトヨタグループで不正 下請法違反

日本経済新聞は7/1、「トヨタ子会社に下請法違反で勧告へ 50社に金型無償保管」と伝えました。またまたトヨタグループ企業での不正です。金型を下請け企業に無償で長期間保管させたなどとして、公正取引委員会が近く、下請法違反で再発防止を勧告する方針を固めたとのこと。

トヨタカスタマイジング&ディベロップメント

不正が行われていたのはトヨタカスタマイジング&ディベロップメント。同社は一般車両向けの車体パーツのほか、救急車やレーシングカーなどの製造と開発を手がける企業。トヨタが9割超の株を保有する子会社です。

下請法違反(利益提供要請の禁止など)

自動車部品の大量生産に必要な金型を、下請け業者に無償で長期間保管させたというのが違反の内容。遅くとも約2年前から、新たな発注の見込みがないにもかかわらず、バンパーやタイヤのホイールなどの製造に使う自社所有の金型や検査用器具など650セット超を、全国の下請け業者約50社に預けたまま、倉庫などに保管させていたといいます。トヨタ側は違反を認め、被害相当額を業者側に全額支払う見通しだそう。

さらに日経では書かれていませんでしたが、別の報道によると同社は、「5000万円分を超える車体パーツを不当に返品していたとみられる」という情報もあるようです(同じく下請法の不当な返品の禁止に該当)。しかしまぁ、いろいろ出てきますね、トヨタグループ。

冒頭書いた下請け企業50社というのは、おそらく公取委が確認できた件数だと思われます。グループ内で実態調査を行えば、もっとすごい数になる可能性もありそうです。

シスメックス株式会社 公正取引委員会が独占禁止法違反の疑いで立ち入り検査

シスメックス株式会社は6/4、「公正取引委員会による当社への立ち入り検査について」を公表しました。日本市場における血液凝固測定装置および試薬(FDP を測定する試薬および D ダイマーを測定する試薬)の取引に関し、独占禁止法違反(抱き合わせ販売等)の疑いがあるとのこと。

シスメックス株式会社

シスメックスはヘマトロジー(血球計数検査)、免疫検査、血液凝固検査など検体検査に必要な機器・試薬・ソフトウエアの研究開発から製造、販売・サービス&サポートまでを一貫して行う総合メーカー。血液凝固測定装置は国内市場規模は約27億円で、シスメックスが半分ほどのシェア。もちろん東証プライム上場企業です。

試薬を抱き合わせ販売

同社の開示では詳細は語られていませんが、報道によると、同社は遅くとも2019年ごろから血液凝固測定装置を販売する際、病院などの取引先に自社の試薬の購入を強要し、公正な競争を阻害した疑いが持たれているとのこと。血液凝固測定装置は手術を控えた患者の血液が固まりやすいかどうかを調べる用途などに使われるんだそう。

第一報では、同社の営業担当者が取引先に対して「他社の試薬を使うのなら装置の販売をしない」などと説明していたということでしたが、その後、取引先に「他社の試薬は使えない」などと虚偽の説明をして販売していたという報道も。いずれにせよ、独禁法の禁じる「抱き合わせ販売等」にあたるわけですが。