住友重機械工業 6億円超の着服

一昨年から始まり、昨年も1月、6月と検査不正等が発覚し続けてきた住友重機械工業ですが、今度は労働組合の積立年金口座からの着服が出てきました。会計を一人で担当してきた女性が2013年から2018年2月に発覚するまで、5年間で6億円を超える横領です。

過去の不正・不祥事(備忘メモ)

2018年6月 グループ会社で大型特殊自動車の不適切な分解整備作業
2018年10月 グループ会社で圧延ロールの検査不正発覚
2019年1月 本社、グループ会社で動く歩道や大型減速機等の検査不正発覚
2019年3月 調査により数千件の不適切検査が新たに発覚

横領容疑で逮捕

今のところ裏がとれているのは5000万円のようで、逮捕容疑もそういうことになっています。ポルシェ・カイエンや馬術競技用の馬6頭などの購入に充てたんだとか。総額は6億4千万円に上るそうです。

この事件、組合幹部の交代に伴う会計調査を行おうとした2018年1月に発覚したということですから、逮捕まで2年間もかかってるんですね。調べてみると、当該検査が実施されることを知って、失踪していたみたいです。

会社行為ではないけれど

今回は従業員による横領です。それも会社のお金ではなく、従業員(組合員)のお金に手を付けたわけですよね。これ、会社は補てんするんだろうか。ここは気になりますね。

しかし、たった一人に管理を任せていたとか、5年以上も発見できなかった、、、という杜撰な管理状況。労組に出向中とはいえ、あくまで同社の社員です。企業としても不正・不祥事を連発したカルチャー。

こんなことがあると、一人一人の社員の倫理観に問題あるのでは?みたいな見方になっちゃいますよね。他の真面目に働いてる社員達が気の毒です。

日本郵政 増田社長 就任記者会見

1/9 6日に就任した郵政グループ3社長の記者会見が行われました。日本郵政の増田氏、日本郵便の衣川氏、かんぽ生命保険の千田氏のお三方です。日本経済新聞では「郵政3社長の会見要旨」として掲載、これを読みました。

増田社長の会見は良い感じ

3社長の会見要旨としていますが、実際にはほとんどが増田社長の発言ですね。会見そのものも彼がほとんど喋ってたんでしょうか。増田社長の発言、これがなかなか良い感じです。

ただ、「政府保有株の売却の時間軸を明示することはできない」などときっぱり言われちゃって、株式をさっさと売ってしまいたい政府関係者にはがっかりな内容だったかもしれませんが。

発言の要旨のまとめ

「再発防止策を講じて一歩一歩、信頼を回復していく。会社にとって悪いニュースこそすぐ共有し、どう克服するかを考える。総務省からの情報漏洩問題はしかるべき調査をすべく準備を進めている」

しばらくは前向きな成長ストーリーを投資家に示せないのか、という記者の質問に対して

「いま業務停止命令を受けている当社グループが投資家に夢を語ることはかえって信頼を失う。最大の危機的状況の時は、投資家も市場もまずは足元を見ろという声が多数だと思う。」

ステークホルダーが気にしている情報漏洩問題や、まだ表面化していない営業姿勢の問題についてもしっかりと取り組む姿勢を表明してます。既に漏洩先の上級副社長さんは辞任されてますし、経営陣の刷新でうやむやにしてしまいがちなところ、偉いです。

今のガバナンス、コンプライアンス態勢が危機的な状況であり、これを建て直すまでは事業の成長を語るなんぞありえない。そのことをしっかり認識されているからこその発言ですね。外部から招聘した増田社長、なかなか期待できそうです。

ただ、「言うは易く行うは難し」、、、なんです。巨大な組織の態勢建て直しというのは。頑張っていただきたいものです。

キックバック 平和不動産

少し前になりますが、平和不動産の行った不動産取引ににおいて、同社が支払った仲介手数料が同社従業員等にキックバックされていた件の調査報告書が公表されていました。平和不動産は東京証券取引所の大家さんです。1949年の取引所再開当時からの上場企業です。

キックバックの概要

不正を働いたのは同社の不動産ソリューション部長とその部下の計3名。彼らは社内規則に違反して無許可で個人会社を経営していました。平和不動産が当事者となる不動産取引に関して、同社が仲介手数料を支払った仲介業者から、アドバイザリー報酬等を個人会社で受領するというのが典型的な手口です。

2014年~2019年の約5年間で、部長は23取引。その他二人(いずれも次長)は5取引、7取引の報酬を受領。このキックバックは基本的に、「手数料過大支払い」と「収益機会盗用」の二つのパターンで立証してます(詳細は省略します)。

上場企業のレベルじゃない

非常に歴史のある上場企業で、不動産会社と書くと、かなり大きな企業をイメージすると思いますが、この会社、従業員はたったの110人です。取引所の大家さんだから上場させてるだけで、昔から「なんで上場してんの?」と誰もが思う上場企業だったんです。

おまけに今回舞台となった不動産ソリューション部。部長1名、次長6名、副参事1名、課長2名、その他6名の合計18名の人員構成。金融機関なんかでいうと超小規模店のレベルです。これくらい小さな組織だと不正など出来たもんじゃありません。

隅から隅までおよそ目が届く範囲のはず。もちろん、行為者3人のうち2人が部長と次長だったから、というのはありますけどね。そうそう、もう一人この悪事を知ってて知らないふりしてた従業員(報告書では幇助者)もいます。部長の指示には逆らわない方が得策と考えたようで。

実態のある取引に対するキックバック

しかし、不動産取引におけるキックバックって難しいですね。不動産を売る会社も、買う会社も仲介手数料3%支払いに納得して支払いました。なかなか出て来ない良い物件を持ち込んでくれたということで、仲介業者は売り手側のトップセールスに感謝の意味で1%の報酬(キックバック)を。例えばこのケース、どの企業も損をしていないようにも見えます。犯人の部長もそう主張しているようですが。

郵政グループ3社長 引責辞任へ 後任候補 増田寛也氏

かんぽ生命保険の不適切販売問題を受け、日本郵政、かんぽ生命、日本郵便の3社長が辞任するようですね。予想どおりというか、経営者として初動を誤り、この手の不正・不祥事が発生した際、最も避けるべき展開になったというしかありません。

増田寛也氏

郵政の長門社長の後任には、元総務相で、郵政民営化委員長も経験し、郵政事業に詳しい増田寛也氏を充てる方向で調整に入ったと伝えました。総務省つながりがあるような人をまたなんで?と思いましたが、そうでもないみたいですね。

総務大臣を経験したのは、2007年9月から2008年9月の1年間だけみたいです。もともとは建設省に入省された方で、退官後に岩手県知事に当選。知事を3期務めています。県知事時代の最高支持率は78%におよび、同じ時期の都道府県知事では最も支持率の高かった知事だったようです。

千田哲也氏

かんぽ生命の植平社長の後任には、旧郵政省出身の千田哲也副社長で調整する方向と、日経は伝えていましたが、、、これがちょっと引っ掛かりますね。前総務次官が行政処分情報を漏えいした事件で、旧郵政省つながりの上級副社長が批判されました。

菅官房長官も「日本郵政の取締役に総務相OBが就任するのは行政の中立性、公平性の確保の観点から適切でない」と発言されてました。高市氏もそう発言してましたし、他にもそういう意見は少なくなかったと思います。

千田氏は総務省ではなく前身の郵政省ですが、約20年間郵政省の官僚です。現在、代表執行役副社長でもあり、いわゆる持ち上がりになります。郵政発足時からいる人材は登用できるということらしいですが、よく分からない理屈です。最後に聞こえてきた日本郵便の衣川和秀氏も含めて、この方々は適任とは思えませんね。

今年も一年間、ご愛読いただきありがとうございました。来年もよろしくお願いいたします。では皆さま、よいお年をお迎えください。

都留信用組合に対する行政処分(その2)

支店長の不正を公表後、読売新聞が他の支店における不正の情報をつかみます。6/5、読売の取材攻勢に対して明確に否定する専務理事。ところが、この取材を契機に役員ミーティングが開催され、翌々日の6/7に3支店、3案件についても公表されることになりました。

案件の把握時期

この不祥事3件、社として概要を把握したタイミングは2018年8月、2019年3月、同年3月、といった具合で、元支店長事案を公表する時点では、既に詳細までを把握していながら、当局への報告もせず、公表もしていなかったということです。

当局報告を行わなかった理由

この組合では、コンプライアンス担当理事である前専務が、当局への届け出を行うかどうかの裁量を持っていたようで、3件の不祥事とも前専務へ情報集約が行われ、損害の補てんが行われていることなどを考慮し、報告は不要との判断に至っている、と報告書は推定しています。また、専務以外の者が報告不要という結論に関して、何らかの意見をした形跡もないとしています。

報告書では、「不祥事を表面化させないという強い隠ぺい体質があるとまでは認められない」としています。が、これはあくまで決定プロセスにおける状況を描写しただけのこと。結果的にはレピュテーショナル・リスクを回避するための隠蔽行動そのものです。

報告書ではこうした体質を「不祥事は内密かつ穏便に処理するという不祥事対応に関する『事勿れ主義』の発想」などと表現していました。

不祥事3件についてはガバナンスの問題

この3件の不祥事については、これを発生させてしまったことに対してよりも、当局へ報告せず、公表もしなかったことへの批判が大きいようです。コンプライアンス担当役員の判断に対して何のけん制も効かない理事会や監事のガバナンスの問題ということですね(株式会社では取締役会と監査役に相当します)。

財務局の行政処分の命令では、2番目でこのことが指摘されています。「理事会及び監事による経営監視・牽制が適切に機能する経営管理態勢の確立」。