オーハシテクニカ 海外子会社における資金流出事案

オーハシテクニカは6/15、「当社海外子会社における資金流出事案に関する調査結果及び再発防止策の策定並びに役員報酬の一部自主返上に関するお知らせ」を公表しました。4/25に、「当社海外子会社における資金流出事案について」、を公表してたんですね。見落としていました。

オーハシテクニカ

オーハシテクニカは、エンジン部品など数万点に及ぶ自動車関連部品を主体に、携帯電話機用ヒンジ(ちょうつがい部品)、ゲーム機用ヒンジ等の情報・通信関連部品の設計開発、製造、販売、物流業務を行う独立系サプライヤー。東証プライム上場企業です。

事案の概要

海外子会社であるメキシコ法人の代表者が、親会社代表者の代理人を騙る悪意ある第三者から M&A 案件に係る資金を内密かつ緊急に送金するよう虚偽の指示を受け、3 月 30 日から 4 月 3 日の間、3 回に渡り合計 2,094 千米ドル(約280 百万円)の送金を実行し、資金を流出させたというもの。

子会社代表者が単独で送金手続を実行したもので、他の当該子会社及び同社グループ役職員が本事案へ関与した事実や、当事者が関与した不正行為である可能性も認められなかったとしています。ビジネスメール詐欺だったの?

調査と開示のあり方

調査にあたったのは、社外取締役を責任者とし、外部の弁護士を含む「調査・対策チーム」だそう。社外取締役にしても、外部の弁護士にしても、同社に都合の良い理屈や結論をいくらでも用意するだろうし、こんな対応で良かったんでしょうかね。

百歩譲って良かったとしても、調査結果の開示内容があまりに抽象的過ぎ。なんでこんなアホみたいな詐欺に引っかかったのか、が理解ができません。役員報酬も返上して、とにかくさっさと幕を引きたかったんでしょうけど・・・。こんなんじゃダメでしょ。

電通グループ 再発防止に向けた取り組み

電通グループは6/9、「調査検証委員会からの調査報告書の受領、および再発防止に向けた取り組み」を公表しました。東京オリンピック・パラリンピック関連事案に関して、従業員が独占禁止法違反の疑いで公正取引委員会から刑事告発され、東京地方検察庁により起訴。法人としても起訴された件に関してですね。

調査検証委員会による「調査報告書」の報告内容および提言

調査検証委員会が指摘した問題点は次の3点。
 ① 過剰なまでに“クライアント・ファースト”を偏重する組織風土
 ② コンプライアンスリスクに対する感度の鈍さ
 ③ 手続の公正性・透明性への配慮を著しく欠いていたこと

②と③に関してはまぁ、ごもっともというか、当然指摘されるべき点だと思われますが、①については、どうにも違和感があります。指摘の内容として、「仕事に対する積極的な姿勢は、dentsu の競争力の源泉となってきた一方で、ともすると、結果が全てを正当化するような思考に陥りがちであり、仕事に携わる者の視野を狭め、あるいは近視眼的になってしまうリスクを内包している。」

指摘の内容については理解できるけど、こういこととクライアント・ファーストが紐づくんだろうか。顧客と自身の利益を比較してクライアント・ファーストであって、コンプライアンスやルール厳守と比較するものではないとkuniは思います。

「クライアント・ファースト」という美しい言葉を持ち出して、彼らが犯した不正の言い訳にしているような感じ。もちろんこれは電通ではなく、調査検証委員会が使った表現ですけどね。委員会はちゃんと機能したんでしょうか。

ビジョナリーホールディングス (メガネスーパー) 責任調査委員会?

ビジョナリーホールディングスは6/5、「責任調査委員会の設置に関するお知らせ」を公表しました。5/31付で、「第三者委員会の調査報告書の受領に関するお知らせ」を公表しており、一連の調査は完了したかのような状況でしたが、責任調査委員会の設置。新たな展開です。

おさらい

前代表取締役社長による同社企業価値を毀損する行為(同社長と懇意な関係にある業務委託先企業2社に対して不当な利益供与がされているなど)に関して調査を行い、同社長にとどまらず、その他取締役等についても、そうした疑念が深まっていました。

第三者委員会の報告

5/31、調査結果は一応報告されましたが、かなり調査の限界があったようで、次のような一節がありました。「調査対象となっているメンバーの一切の協力を得られなかったため、更なる調査及び検討を行うためには、裁判所、検察庁若しくは警察等の捜査機関、または金融庁若しくは公正取引委員会その他の行政機関による強制権限に基づく調査及び資料収集を待たざるを得ない」。なかなか見られない指摘です。

責任調査委員会

「責任調査対象者の職務執行に関して任務懈怠責任があったか否か等につき、当社として適切かつ公正に判断することを目的として、責任調査対象者と利害関係を有しない中立・公正な外部の法律家で構成される責任調査委員会を設置する」、とのこと。

責任調査対象者の範囲は、前社長が代表取締役に就任して以降の取締役(監査等委員を含む。)、監査役及び委任型の執行役員、雇用型の執行役員、及び責任調査対象者とすることが合理的と判断された当社及び当社グループの従業員だそうです。

ザックリいえば、責任調査対象者は全役職員なわけですね。いやぁ、壮大な魔女狩りが始まりました。

永大化工 これまで開示してこなかった従業員の過労死巡る訴訟で和解

永大化工は6/2、「和解による訴訟の解決に関するお知らせ」を公表しました。2021年4月5日付けで、同社元従業員の遺族3名から同社ほか2名の安全配慮義務違反等を理由として損害賠償請求の支払いを求め提起された訴訟で、和解が成立したということです。

永大化工

永大化工は、異型押出成形加工を中心とするプラスチック製品のメーカーで、自動車用品関連と産業資材関連の2分野の製品を製造販売する企業。カーマットのリーディングカンパニーだそうな。東証スタンダード上場企業です。ちなみに先日火災事故で取り上げた永大産業とはまったく別の会社です。

訴訟の概要

今回の開示では、「2018 年4月5日に当社の元従業員が死亡した件について、当該元従業員のご遺族3名から、当社ほか2名の安全配慮義務違反等を理由として、2021 年4月5日付けで損害賠償請求100,057 千円(弁護士費用含む)及び遅延損害金の支払いを求めて訴訟の提起がなされていた」。とだけ、説明されています。

当時の報道では、亡くなったのは44歳の男性で、奈良事業本部(奈良県香芝市)で品質保証室長として勤務されていた方。ベトナム工場で発生した製品不具合のクレーム対応などに追われ、くも膜下出血で倒れて死亡したという事件だったようです。

約1億円の損害賠償請求で、9,000万円で和解ということです。ご遺族もまぁ納得、でしょうか。開示では亡くなられたいきさつについては伏せられており、同社ホームページの過去の「IRニュース」でも、死亡事件も訴訟提起に関する情報も公表されていません。

もうひとつ、「ニュース」というコーナーもあるんですが、こちらはなぜかリンク切れで閲覧できませんでした。徹底的に当時の情報を遮断しようとしてるんだろうか。なんか、ヤな感じです。

デンカ株式会社 認証不正等が発覚 さらに持分法適用関連会社でも

デンカは5/29、「当社および持分法適用関連会社の樹脂製品における第三者認証等の不適切行為ならびに社外有識者による外部調査委員会の設置について」を公表しました。関連会社の方は、同社が筆頭株主として発行済株式の50%を保有する東洋スチレンという会社です。

デンカ株式会社

デンカは、電子材料をはじめとした高付加価値のファインケミカル製品を中心に展開する、三井系の中堅化学メーカー。セメントや医薬品、インフルエンザワクチンなどにも展開している東証プライム上場企業です。2015年に現社名に変更するまでは、電気化学工業株式会社という社名でした。

不正の概要

同社 ABS 樹脂の一部グレードにおいて、外注委託先の工場で本来必要となる UL (米国の第三者安全科学機関)工場認定を取得しておらず、UL 認証上不適合状態にあることが、同社監査により 2023年3月下旬に判明しました。現時点で、対象製品を使用した最終製品に関して事故等の報告は受けていないとのこと。

おそらくこのことが契機となり、グループ会社への横展開が行われ、東洋スチレンにおける不正が把握されたんだと思われます。

東洋スチレンでは、UL が定めている樹脂の難燃性能を示す規格に対して、登録時の組成を一部変更した製品を、UL への申請を行わずに製造販売していました。さらに、UL によるフォローアップ試験の際に、指定されたロットではない難燃剤を増量した材料で燃焼試験片を作成し提出していたことも発覚しています。東レで起きてた不正とまったく一緒やね。

こうした不正の発覚を受け、これらの事実関係の調査を徹底的に行い、原因究明と再発防止策の検討を客観的かつ実効的に行うため、社外有識者による外部調査委員会を設置することとなりました。