郵政グループ3社長 引責辞任へ 後任候補 増田寛也氏

かんぽ生命保険の不適切販売問題を受け、日本郵政、かんぽ生命、日本郵便の3社長が辞任するようですね。予想どおりというか、経営者として初動を誤り、この手の不正・不祥事が発生した際、最も避けるべき展開になったというしかありません。

増田寛也氏

郵政の長門社長の後任には、元総務相で、郵政民営化委員長も経験し、郵政事業に詳しい増田寛也氏を充てる方向で調整に入ったと伝えました。総務省つながりがあるような人をまたなんで?と思いましたが、そうでもないみたいですね。

総務大臣を経験したのは、2007年9月から2008年9月の1年間だけみたいです。もともとは建設省に入省された方で、退官後に岩手県知事に当選。知事を3期務めています。県知事時代の最高支持率は78%におよび、同じ時期の都道府県知事では最も支持率の高かった知事だったようです。

千田哲也氏

かんぽ生命の植平社長の後任には、旧郵政省出身の千田哲也副社長で調整する方向と、日経は伝えていましたが、、、これがちょっと引っ掛かりますね。前総務次官が行政処分情報を漏えいした事件で、旧郵政省つながりの上級副社長が批判されました。

菅官房長官も「日本郵政の取締役に総務相OBが就任するのは行政の中立性、公平性の確保の観点から適切でない」と発言されてました。高市氏もそう発言してましたし、他にもそういう意見は少なくなかったと思います。

千田氏は総務省ではなく前身の郵政省ですが、約20年間郵政省の官僚です。現在、代表執行役副社長でもあり、いわゆる持ち上がりになります。郵政発足時からいる人材は登用できるということらしいですが、よく分からない理屈です。最後に聞こえてきた日本郵便の衣川和秀氏も含めて、この方々は適任とは思えませんね。

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総務事務次官 郵政副社長に情報漏洩 を考える

かんぽ生命保険と日本郵便の保険不正販売問題を巡り、行政処分案の検討状況等を日本郵政グループに漏らしたとして、鈴木茂樹総務事務次官を停職三カ月の懲戒処分にしたと発表しました。鈴木氏の二十日付の辞職を受け入れ、事実上更迭という形に。

当然の結果

何を今さらって感じですよね。旧郵政省採用の先輩後輩の関係で、後輩から先輩に行政の情報が伝わった。こういう人事してれば、現職からOBへ情報が漏洩するなんてことが起きるのも当然でしょう。高市総務相は「やむを得ない事情があったと拝察する」なんて言ってましたけどね。

リスク感度の問題

皆さんの会社にも〇〇省OBとかいう方がいらっしゃると思います。いわゆるお役所からの天下りですね。こういう人たちは監督官庁から民間企業に下ってきて、当局の情報を仕入れ、民間企業に伝えるのがお仕事みたいなものです。つまり今回懲戒処分を受け辞職に至った次官と同じことをしているわけです。

問題はどんな情報を伝えていたかということだけです。保険の不正販売の実態や、そのレピュテーショナル・リスクについて、より早い段階で情報が共有されていれば。つまり、総務省の問題意識を早い段階で郵政上級副社長の耳に入れ、これを受けた郵政が危機感を持って自ら改善に取り組んでいれば、ということですね(総務省がどれほど早い段階で問題意識を持っていたかはビミョーですが)。

もしかすると、この二人の鈴木氏の初動により、かんぽ生命の販売態勢を建て直すことができたかもしれません。多くの民間企業では、当局OBからの助言等で、経営の軌道修正みたいなこと、普通に行われてますよね。こんなふうに考えていくと、かんぽ生命、郵政がここまで古い体質を改善できなかったのは、二人の鈴木氏のリスク感度の低さも一因だったと言えるかもしれません。

かんぽ生命 特別調査委員会 調査報告書

12/18 かんぽ生命の保険契約問題に関して、特別調査委員会がまとめた調査報告書が公表されました。150ページにおよぶこの報告書、昔の証券会社の営業を知っているkuniとしては、読んでて気持ち悪くなってくるような、、、そんな内容でした。

パワハラ 恫喝指導

法令違反や規則違反が、以前の報告の倍以上になって1万2千件以上、みたいな報道が先行していました。報告書では不適切販売の実態が明らかにされたわけですが、kuni的には現場で横行していたパワハラや恫喝指導などの営業推進の実態の方がこたえました。

今から約30年前、当時も悪評の高かった証券営業の現場とそっくりです。あんな組織運営がこの時代でも続いていたんですね。数字の上がらない保険募集人へのパワハラや恫喝指導をしてきた人達(金融渉外部長)は、たぶんkuniと同じ世代の人たちだと思われます。

自分が受けてきた酷い仕打ち。自身が管理職になった今、今度は自身が加害者として再現してしまう。悲しい連鎖ですよね。kuniには想像できませんし、管理職時代にこんなこと出来ませんでした。実は今でもたまに夢に見るんですよね、恫喝や一方的な攻撃で支店の営業員が壊れていくシーン。

社長の会見も

郵政3社長の会見も悲惨なことになったみたいですが、日本郵政の長門社長の発言にはかなり気になる部分がありました。グループのガバナンスに課題があるのでは?という質問に対し、

「日本郵政という持ち株会社からみれば、乱暴に言うと事件は現場で起こった。かんぽ生命、日本郵便の社長も経営問題と認識できなかった。情報が上がってこないのが今回の問題だ。」

この回答、皆さんにはどんなふうに聞こえますか?悪いのは現場、、、彼にとっては情報を上げてこないのが原因に見えるんでしょう。実はこれは結果であって、原因はそんな企業風土を改善することなく放置した彼らにあったんだと思います。